たくさんのドレス
さて、現在もみくちゃにされているアリーシャです。
「ふふ、リーちゃん、綺麗になりましょうね」
お風呂に入って香油を練り込まれて、今はルリお姉様と一緒にドレスを選んでいます。その時流行の色、シルエット、装飾などを見極めるのはとても難しく、今回はお姉様にお任せさせて頂くことになりました! みなさんから頂いたドレスが一着ならお姉様を頼る必要はなかったのですが…『みんなで選んだ』というのは、各一着ずつってことだったらしいので計六着も頂いてしまいました。びっくりですね!
ちなみに、お母様からは上品なスミレ色、お父様からはアイボリー、ヒューお兄様からは黄緑、デュークお兄様からは空色、ルリお姉様からは私の髪と同じ青のグラデーション、使用人の皆様からはサーモンピンクのドレスですね。
えーっと、着れるの一つですよ?
「正直リーちゃんなら何でも似合うわ。全部リーちゃんを思ってプレゼントしたドレスだもの、甲乙付けがたいわねぇ」
「確かにどれも素敵で私好みです…あの、でもお姉様、流行に合わせて選んだ方がいいのでは…?」
「基本はそうよ。でも流行ばかり追いかければいいわけではないの。今の流行はワインレッドでデコルテの開いたドレスなの、リーちゃんには少し早すぎるわ」
なるほど、それは私に似合わないでしょうね。流行に合わせて似合わないドレスを着るより、私に一番似合うドレスを選んだ方が良さそうです。お姉様なら何を着ても映えるのに私ときたら…持つ色が派手なのは困りものです。
でも、そうは言っても決めるのは難しいです。だって、皆様私のことを思って選んでくれたのに、その中から一つなんて…うーん、こうなったら消去法で行くしかないですよね。
まずお父様からのアイボリーのドレス。フリルがたっぷりと使われているのに、ふんわりと軽い素材はまるで羽のようでとても愛らしいです。
次にヒューお兄様のドレス。ころんと丸まった裾が素敵で、お揃いのパフスリーブがまるで妖精のドレスみたいです。淡い黄緑ですが光の加減によって濃さが変わる不思議なドレスです。
デュークお兄様のドレスは一番目を引きました。デュークお兄様は普段あんなにふわふわさんなのに、実はとてもセンスがいいんですよ! 恐らく私が髪や瞳の色を気にしていることに気づいてくださったのでしょう、調和するような優しい空の色をした落ち着いた中に愛らしさが隠れているようなドレスです。
「かわいい…」
「あら、デュークお兄様のドレスが気に入ったのね? 私のドレスじゃないのは残念だけどさすがお兄様、センスだけはいいのよね」
全てのドレスを確認できたわけではないのですが、お兄様のドレスの引かれたのは確かです。言葉の通り残念そうなお姉様を見ると心が痛みますが、今日は私のデビュタントですもの、許してくださいね。
「お休みの日にでも着てちょうだいね? さて…じゃあ、靴とアクセサリーはこれね。それからお化粧は薄めで……」
ルリお姉様が女性の使用人さんと相談をしています。ぱぱっと決めることができるルリお姉様はすごいですよね。
なぜだか皆様ノリノリです。あれがいいこれがいい、やっぱりこっち…という風にとても賑やかです。たくさんの装飾類が並べ立てられ、これ間に合うのかな、なんて思ったのは秘密ですよ?




