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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
フィランダリア・巨大ゾンビ編
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第七十七話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 エスコと白鎧の騎士クレメッティとその部下たちは、グランと合流し、一計を図る事に。

 「ほう、成程」

 『イスモ、君にも協力してもらう。サンプサ殿もよろしいでしょうか』

 「了解」

 「勿論でございます」

 二人の了承を得てエスコが頷くと、

 『魔法師の負担もあるから、短期決戦で決める』

 「どの部位周辺が多いのだ」

 『強いていうなら腹部の部分、あちらです』

 と、全ての指で示すエスコ。傭兵王とうたわれたグランは単独で動くという。

 暗殺者とランバルコーヤ兵は各々で何人かグループに分け行動することになり、巨大ゾンビの外周の調査に出発した。なお、コラレダ兵に関しては、ややこしいので闇色のフードを外してから発った。

 一方、矢の嵐を受ける側は、次の出所を観察している。

 「止まった、のか。それとも、止めているのか」

 『捜索に気づいたのかもしれませんね』

 「だとしたら、暗殺者達が付近にいるか、あの魔法師の魔法が隠蔽されている事になるな」

 「魔力の流れは変わっておらぬ。油断しないほうが良い」

 『ええ』

 少女は地上に視線を戻すも、常人の視界では闇に包まれた森しか見えないが、たまに映る精神体の者の光は、はっきりと目に入った。

 瞼を閉じ、自身に出来る事は無いかと頭を回すも、今は相手の監視と身の安全を第一にする事のみ。小さいが、ライティア公爵家唯一の後継者である令嬢は、家柄と魔法師の為にも生き残らなければならない。

 貢献にも色々な形があると学んだアマンダは、歯痒さを感じながらも、待ち、を選んだ。上からの命令もあるが、感情のまま突っ走る将軍に、誰も付いて来ないのもある。

 多感期でもある少女の胸には、少々荷が重いのかもしれない。とはいえ、生まれ持った宿命からは逃れられはしないのだ。

 ならばいっその事戦いば良い。何も自ら剣を取り線上に赴くだけが戦いではないと知った今、ライティア将軍は以前より落ち着いて物事を考え対処出来る様になっている。

 あまりに、静かな時間が、過ぎて行く。

 天に向かう攻撃が止まってからというもの、同じ上空にとある場所では、大の大人が追いかけっこをしていた。もちろん、子供がやるそれではなく、狩るか狩られるかの瀬戸際である。

 「全く。こんな命がけな遊戯なんて冗談じゃないんですが、ね」

 と、思わずつぶやくクロウフヴニ。数メートル後ろには無表情、かつ同じ速度で飛ぶアルタリアの姿が。すぐに追い越せるはずの相手が、わざわざ合わせているのは。

 馬鹿にしていたつもりはないが、やはり四大魔法師には全員消えて貰ったほうがいいか。ライティア家に宿るあの力は気になるが、今は仕方ない。

 「やってみると良い」

 目の前に突然現れた水の魔法師。ぎょっとした逃走者は、反射的に身を引いて距離を取る。

 「ラガンダは、守りが得意。一族に対する、愛情が深いし、頭も切れる」

 「何を、仰りたいので」

 ゆっくりと目を閉じるアルタリア。

 「私たちは繋がっている。各々が得意としている分野で力を出せば良い、というスタンスで存在している」

 水で剣を生成した彼は、クロウフヴニに切り掛かる。最低限の動作でかわした彼は、相手から感じる得体の知れないモノから逃れるべく、さらに遠くへ飛んで行こうとする。

 しかし、結界に阻まれて失敗する。よく見ると、風属性のそれであった。

 「あの時、魔法を食らったのは、まさか」

 「その通り。懐に、入る為」

 恐る恐る振り返るクロウフヴニの目に、剣を持った死神が、近づいて行く。

 「貴方の正体は、察しがついています。体を持ち主に返して、お帰り頂きたい」

 「ふふ。イ、ヤ、で、す。せっかく楽しんでいるのですから」

 「迷惑です。兄君にもお伝えしたら、相当ご立腹、していましたが」

 あからさまに血の気が引いているクロウフヴニ。

 「人間が生きたまま、ヴァルハラに行けるなど、有り得ますか」

 「なっ。反応が消えたのは結界に入っていたからではなく、天上にいたからと」

 「貴方なら、知っているでしょう。気に入られた人間がいて、行き来を許可されている者が、いると」

 舌打ちをし、睨みつける青年。その気に入られた者とは、彼とは今敵対関係にある。目の前にいる水の魔法師は、饒舌ではない分、落ち着いた雰囲気も後押しして言葉に重みがあった。もしかしたら、秘めている怒りもあるかもしれない。

 ましてや、この二十年間、個人の享楽に巻き込まれ命を落とした人間は星の数、である。平穏に暮らしていた、何も罪もない人々が、コラレダの民中心に犠牲になったのだ。

 「この世界は、貴方の玩具じゃない。消えてしまった命は、永遠に、返ってこない……!」

 再度切りつけるアルタリアの筋は、相手の左肩に傷を負わせる。反射的に上体を反らすも間に合わなかった様だ。

 身に付けている下級回復魔法を唱えながら、クロウフヴニは薄笑いをし、左腕を広げる。

 「ふふ、同じ魔法師を手に掛けるのですか。この体の主は僕じゃないと知っておきながらっ」

 「魔法師、だからこそ、身の振り方を分かっている。大恩あるライティア家の、断絶を図った罪は、命で贖う決まり」

 アルタリアは容赦無い言葉を浴びせ、力を集め始めた。

 魔法師の文化は非常に厳格な所がある。

 自然と共に在るのが人間本来の姿、という基本思想を持ち、流れに逆らうべきではないとされている。社会性と個人の資質のバランスを取りながら過ごしているが、大魔法師だいまほうしと呼ばれる存在に関しては話が別だ。彼ら彼女らは魔法師の根幹を身に宿しており、それは、魔法の魂、と表現される。詳しい内容は解明されていない、が。

 伝承では、神が地上に降り立った時、人間が悪しき同族から身を守る為に授けた、とある。

 経緯はどうあれ、魔法師の中心人物といっても過言ではない大魔法師が消滅すれば、魔法師は魔法が使えなくなってしまう。記録として実際に残っており、死因が病死だった為、神が哀れみ、再度魔法の魂を授け賜うた、と記載されているのだ。

 その血筋が、今日ではライティア家に引き継がれているのである。

 一族としても一魔法師としても、魔法が無くなる事は、絶対回避しなければならないのは明白。その為の法や方法が定められるのも、自然の流れといえよう。

 詰めが甘かったと後悔したクロウフヴニだが、このままやられる気もない。本人はこの世界でもっともっと遊びたくて仕方がないからだ。

 「いやはや、一本取られました。普段温厚な人を怒らせると怖いのは、どこでも同じなんですねえ」

 直後、青年の体から煙幕が吹き出した。追跡者の髪や服が風にあおられるが、本人は微動だにしない。

 もうもうとした白い煙がゆっくりと空気に溶けて見えなくなると、急に地上が騒がしくなった。

 「核はバルデン隊長が半分、残りはゾンビ王に刷り込ませてあります。魔法を解きましたから、半分は簡単に見つけられますよ」

 「取引、のつもり」

 「ええ。彼の作戦を防ぎたかったんですがね。自分の命のほうが大事なので。今回は譲って差し上げますよ、一勝一敗です」

 「ふざけた事を」

 「おっと、いいんですか。ラガンダの残滓もあるのに」

 一瞬目を細めるも、容赦無く切り込むアルタリア。対して、クロウフヴニは腰を落とすと、正面から突っ込んだ。

 間合いを崩された水の魔法師は、魔力を圧縮した玉を左手で放ち相手の動きを止める。剣先を斜め下に構え、下段から上段へと振り抜く。

 クロウフヴニの前に炎の結界を出現させるが、紙切れ同然に真っ二つにされた。

 しかし、この一瞬の隙をついた彼は、攻撃をかわすことに成功。剣に秘められた魔力は当てる相手を失い、相手がいた後方部分の結界に激突する。

 大きな爆発音と共に、新しい空気の流れが生じた事に気付いたクロウフヴニは、全力で飛んで行く。アルタリアは追うも、既に結界の外に出ていた彼は、指で地上を指しながら、

 「核は砕いてますからどの死体にあるか分かりません。下にいる人間に任せていたら、かなり時間が掛かってしまいますよ。では」

 不敵な笑みを残して、元凶は姿を消した。

 逃がしてしまった、か。無意識に動揺していたのか。

 剣柄を握る手には、最低限の力しか入っていなかった。

 『無事かい、アルタリア』

 『うん。クロウフヴニは、逃げられた』

 『その様だね。結界は直したから安心しな』

 『すまない。私は、ゾンビの方に行く』

 『頼んだよ。核と暗殺者の魔法については全員に共有したからね』

 『分かった。ありがとう』

 『つらい役をやらせたね。後できちんと話をしよう。当事者も含めてさ』

 『うん、そうだね』

 今は目の前の問題を片付けるのが先決。明日へ繋げるために、双方は最善を尽くす。

 同時刻、地上にて。

 エスコと白鎧の騎士たちとイスモ率いる暗殺部隊、グランを除くランバルコーヤ兵たちは、いくつかのグループに分かれて巨大ゾンビ周辺を探索していた。

 想像通り、時折どこからか飛び道具が飛んで来る為、イスモたちは木陰に隠れて気配を消しながら、ランバルコーヤ兵は木の上を素早く移動している。

 なお、エスコたちに物理攻撃はすり抜け、グランは自慢の剣ではじき返していた。

 数回、天に向かって矢の嵐がの放たれたので、近くにいた者が放たれた現場に向かうも、誰もいないという摩訶不思議な現象に一般兵は首をかしげるだけ。サンプサも密かに探知魔法を使うも、やはり反応はなかった。

 仕方がないので、彼は部下を下がらせると、地面に手を付け魔力を送る。特定の場所だけ揺れると、誰もいないはずの場所に驚きの声が上がった。

 すかさず攻撃に入ったランバルコーヤの傭兵たち。悲鳴と共に姿を現したのは、闇色の装束を身に付けた男たちだった。

 エスコとイスモたちは、目に見えないなら気配で察知するようにし、同じ様に地道に数を減らしていっていたのである。

 そうこうしていると、アルタリアがクロウフヴニを追い詰め、魔法が解除された。突然姿が見える様になった一行は、理由はともかく片っ端から殲滅に掛かる。

 当然、何が起きたのか理解出来ない暗殺者たちだが、隊長クラスが多いからか、すぐに通常の戦いかたに戻り闇へと紛れてしまう。

 また、相手が目視可能になったと同時に、フィリアからの連絡が入った。ゾンビ全体を攻略する必要が出てくると、エスコは隊を二つに分ける。彼とイスモの隊は暗殺者らの、ランバルコーヤ兵は巨大ゾンビを攻略する流れとなった。

 「ヤンネ隊長」

 「名前でいいよ。で、何」

 「ああ、実はさ」

 「お、おい」

 「構うもんか。バルデンには気を付けたほうがいい。功を焦ってる」

 と、一般人では聞き取れない小さな声で話す彼ら。周囲に誰もいないのは、アイコンタクトで確認済みである。

 「ふうん。裏切り者を始末する、みたいな感じ」

 「というより私怨だろうな。あれは」

 ため息をつく当人。隊に所属していた時から、風当たりが冷たいとは感じ取っていたが。

 「ワームもろくに使えない無能にどう思われてもね」

 「あんた、そんなんだから恨み買うんだよ」

 「よくいわれる。バカ正直の相棒のが移っちゃってさ」

 「はは。変わってないな」

 「見た目と口が一致しないよな、ホントに」

 と、懐かしそうに話す二人。元隊長はその間、罠に掛かった獲物との距離を一気に縮めて息の根を止めた。

 目を合わせた元部下たちは、芸術的ともいえる一連の流れに目を見張る。むしろ、より洗練されている様にも伺えた。

 暗殺技術など一般的には褒められたものではないが、戦場に生きる彼ら彼女らにとっては、処世術の一つ。力が無ければ冥府へ叩き落とされる傭兵社会では、敬意を持たれるのは普通の事であった。

 少しずつ移動しては罠を仕掛けるを繰り返していくうち、幾人かの狩り取りに成功する。逆にこちら側にも引っ掛かってしまう者もおり、睨み合いが続いている状態だ。

 静寂の中、月光は雲の間に見え隠れし、光と影のコントラストが、ゆっくりと入れ替わって行く。

 時折響く大きな爆発音や噴射音だけが、生きている感覚を取り戻していた。

 鍛えられてるとはいえ、こういうのは精神的にもしんどいだよなあ。何かいい手ないかな。

 影が光の中で存在出来ないのと同様、暗殺者は積極的に前に出て戦う職ではない。

 その時、サンプサから連絡が入った。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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