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瞳の先にあるもの  作者: 望月 葵
フィランダリア・巨大ゾンビ編
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第七十六話

※書き下ろしなので、誤字脱字や展開など、今後内容が変更される恐れがあります。ご了承下さい。

 地道にやっていった削りは、ゆっくりと、しかし確実にゾンビの外皮を落として行く。

 だが、まだ魔法が解ける段階ではない。生者で例えるなら、致命傷になる段階にしなければならないからだ。

 少なくとも、暴れ回る巨大な死体を大人しくさせる必要があった。その為には、足の機能を奪い動けなくさせるのが効果的であろう。

 敵の足元にいるグランの目に、部下よりも動きの速い連中が飛び込んで来るやいなや、見る見るうちに数は増え、とある場所に大きな罠が設置されて行く。

 糸の様なもので木々の間を縫っているそれは、上から見ると半径数キロメートルにも及ぶ円が描かれていた。

 そこに、巨大ゾンビは足を取られ、引き抜こうともがいている最中である。

 「コラレダの暗殺者共か。やるではないか」

 「殺傷力はありませんがね。これで好きなだけ攻撃できますよ」

 音も無く闇の間から姿を見せるイスモ。後ろには、闇色の装束に身を包んだ人間が何人もいる。

 「ワーム、だったか。さすがにこれ相手では役に立つまい」

 「まあ。ですが、動けば動くほどからみつく性質があるんで、時間は稼げます」

 危うく、超人にも効きませんよ、と言いそうになった彼。知ってか知らずか、グランは大笑いする。

 「褒めて遣わす。外から見張っておれ」

 「了解です」

 「うむ。貴様らは左足付近で動け、わしは右に行く」

 「はっ」

 コラレダ勢の姿が見えなくなると、イスモは、はあぁ、と大きなため息をつく。付き添った暗殺者たちも、小さく同調した。

 仕掛け付近に移動した元コラレダ王は、ワームに食い込んでいる足を見回る。愛剣ツヴァイハンダーで攻撃出来る箇所を発見すると、狂気の笑みを浮かべて得物を振り回す。

 ワームの間から繰り出される単調な剣技は、外皮をより深く掘って行く。

 飛び散る体液はフィリアの風魔法によって弾かれ、付着した木や土をより黒く変色させた。

 動かない標的など、歴戦の戦士にとっては赤子も同然。ただ皮が分厚いだけで、剛腕のグランにとっては単に回数が増えただけの様子。

 ついに足の腱に大剣が達し、巨大ゾンビは膝をつく。傭兵王は剣を担いだまま前方に移動し、光と氷の矢が撃ち込まれている場所の検討を付ける。

 存在に気付いたエスコとサイヤが一旦手を緩めると、すかさず途中参戦者は得意の一撃を放った。

 一気に深く刻み込まれた傷は、さすがのゾンビも衝撃が強かったのだろうか。天に向かって怨声えんせいを上げると、まだ無事な左腕で張本人を叩き潰そうとした。

 しかし、その左腕は動くことはなかった。いつの間にか村ひとつ覆いそうな氷によって地面に張り付けられていたのである。

 反撃が来ないと理解したグランは、同じ個所に再度強撃をお見舞いすると、完全に腕が分断された。切り口から、変色している見慣れた布の模様の一部が視界に入る。

 一気に熱が冷めた前王は、数秒間の凝視の後、左足へと向かった。

 敵の体勢を崩したアンブロー一行は、少々の安堵感に包まれるも、緊迫状態が続く。

 ヘイノはリューデリアに、核の捜索具合を聞くと、

 「空からは見当たらぬ。サンプサ殿から連絡がない所から、まだ探しておられるだろう」

 「そうか。いくら何でもこれを野放しにする訳にもいかん」

 「同感だ。核に魔力を与えればふたた、ん」

 「どうした」

 リューデリアは足元に結界を張った。何かが当たって発生した熱風と水蒸気に、ヘイノは思わず左手の甲で鼻と口を覆う。

 黒焦げになった細長い何かが落ちて行くのを見た将軍は、襟を掴み付いている通信魔道具に向かって、

 『イスモ、森の中にバリスタがないか調べてくれ。あったら操縦者を出来るだけ生け捕りして欲しい』

 『了解』

 『魔法師がいる可能性もある。気を抜くな』

 話している間にした小さな墜落音だが、どうも引っ掛かる。大型のクロスボウでも届く高さではないのだ。

 サークたちにコラレダ兵の見張りを頼んでしまったからな。かと言って、森を焼き払う事も出来ん。どうする。

 「うわっ」

 遠くから聞こえる悲鳴にも近い声。先程の放たれた弓の様なものが来たらしく、さらに高い位置にある雲を貫通していた。

 「どんどん来るぞ、下からだっ」

 まるで弓の斉射だった。突然の攻撃に、一行は成す術もなく受けてしまう。

 かろうじて魔法師が近くにいた者は結界に守られたが、遠くにいた者の姿勢が崩れると同時に高度も下がって行った。フィリアは慌てて魔法を組み直し、負傷者を自分の近くに寄せる。中にはヤロとギルバートの姿もあった。

 「リューデリア、一帯に結界をっ」

 「はいっ」

 サイヤは叫んだ風の魔女の方角に飛んで行き、リューデリアは避け切ったアンブロー、ランバルコーヤ面々に対し近くによる様伝え、火の結界を展開。肉体のないエスコとアマンダ、白鎧はくがいの騎士たちは、攻撃の出所の捜索に当たる。

 再度襲来した弓の嵐だが、今度は無事にやり過ごす。

 『バカな。配列がメチャクチャだ』

 『エスコ様、あちらは隊列が見られませんでしたわ』

 『こちらもだ。まるで滝の逆バージョンみたいだったね』

 と、アマンダとクレメッティ。

 弓兵の隊列は基本直線で組まれ、それを何層か配置する。それ故、放たれた矢は、見下ろしても同じ様に飛ぶはずである。

 にも関わらず、レインバーグ将軍の目には、矢が遠心上に広がる光景だったのだ。しかも、矢らしきモノ同士の距離があまりにも無い。

 合流し、

 『リューデリア。下に何か魔法関連のモノ、感じないかい』

 「いや」

 『そうか。ヘイノ、あれは弓じゃない。中心から外に広がっていくようだった。広範囲にね』

 「クロスボウに見せかけた魔法、か? しかし、反応はない」

 様子を見ていたクレメッティが、アマンダの肩を指で叩き、耳打ちをする。

 『では、お願いします』

 頷いた父君は、部下たちに待機しているよう指示し、怪我人たちの下へ移動した。

 『彼は負傷者のようすを見てくる、と』

 『僕も行ってくる。何かわかるかもしれない』

 「頼んだ」

 背中を見送った令嬢は、三度放たれた矢でもなく魔法でもない武器に、得体の知れない感覚を覚える。寒気というか、嫌悪感というか、何とも表現し難いものであった。

 だが、以前も感じた様な、不思議さもある。

 尽きる事を知らない相手の攻撃は、それから数回に渡って繰り返された。観察していると、飛ばされる場所が毎回異なっていることにヘイノとアマンダは気付く。

 共通点として、発生源が巨大ゾンビの近くであった。

 もし謎の武器が、ゾンビに関係あるとしたら。魔力反応がなくても納得できるんじゃないかしら。

 そもそも魔力とは多かれ少なかれ人間に宿っているという。もちろん、生きた人間に限った話だ。

 そして、鎧の様に纏う事が可能なのであれば。

 負傷者の無事を祈りつつ、モノの正体に思考を巡らす。

 エスコとクレメッティが戻って来ると、重体はいないとの事。彼らの身体能力に驚くが、より驚愕したのは、傷口から僅かな魔力がある事実であった。しかも、近づかないと感じられない程の微量で、サイヤが治療に当たって初めて気づいたそうだ。

 彼女には医者としての仕事を優先してもらいたかったので、二人は急いで知らせに来たのである。

 『リューデリア。魔法で攻撃する場合、何かで隠してはなつようなことはありませんか』

 「聞いた事ないが、技術的には可能だ。魔道具を使えばより容易かろう」

 「その技術は誰でも使えるのかい」

 「一概には言い難い。技量や相性もあるし、用途にもよるだろう」

 『つまり、あの矢はそうした技術で創られてる、と』

 『あくまで可能性ですが。それに、あの攻撃が近くにくると、何かこう、以前感じたことがある何かを感じて』

 説明できなくて恐縮ですが、とライティア将軍。ヘイノとエスコは顔を見合わせるが、今の彼女は魔法を習得している身でもある。普通の騎士や魔法師とは異なった感覚を持つのも不思議ではない。

 「物理的な矢では無いのなら、魔法が関わっているのは間違いなかろう。が、魔力を消せ、る。まさか」

 「どうした」

 「死体は魔力を帯びておらぬ。ゾンビの外皮で魔法を包んでいるのでは」

 魔女曰く、アマンダの違和感が、アンブロー大陸でクロウフヴニが起こした事件と同じだとしたら得心が行くらしい。箱の中身がおもちゃだろうが宝石だろうが、外から見れば箱そのものだからだ。

 性懲りもなく放たれた飛び道具は、リューデリアの結界に阻まれ続けるが、結界を維持するにも本人の体力と精神力が必要だ。

 「次から次へと良く思い付くものだ。ゾンビがいる限り無限に飛んで来る」

 思わず言葉を漏らしたヘイノ。とは言うものの、地上に降りる訳にもいかない。敵方にも暗殺者がいるし、周辺は森に囲まれている為、蟻地獄に入る様なものだ。

 『将軍殿、聞こえる』

 『イスモか。どうした』

 『ランバルコーヤの連中にも協力してもらったんだけど、兵器はおろか、魔法師もいないって。サンプサさんが確認したよ』

 『魔法が施された跡も無かったか』

 数分程間が空き、

 『サンプサでございます。複数人で話せるように致しました。そうした跡も見られません』

 『ありがとうございます。何か気になる点はありませんでしたか』

 『俺たちはなかったけど』

 『私達の方にもございません。グラン、聞こえていらっしゃいますか』

 『ああ。何の用だ』

 『異変や気になる事がないかを伺いたく』

 『特に無い。しかし、暗殺者共はどこへ行ったのだ』

 『暗殺者、ですか』

 『邪魔するのならあの世に送ろうと思っておったのだがな。腰を抜かしたのか知らんが、姿が見えん』

 それにしても気味の悪い顔をしておる、とグラン。いつの間にか頭部の近くに移動していた様だ。

 生者、ゾンビ、魔法。そして、いなくなった暗殺者たち。そして、死者の魂を操るクロウフヴニ。

 アマンダの背にかかないはずの冷や汗が流れる。あれはギルバートと初めて会った頃だったはず、だとも。

 「アマンダ、まだそうと決まった訳じゃない」

 『あ。え、ええ』

 『何かわかった』

 「確証はしていない。が、以前、ノアゼニアを攻略した際に起こった事件がある」

 エスコはヘイノの言葉である出来事を思い出す。妹が参戦した、コラレダ傭兵軍に占拠されたアンブロー王国の首都を取り返したものの、攻め込んだ傭兵たちの半分がゾンビ化された、あの惨事だ。

 リューデリアの結界が再度展開される。

 「もし暗殺者の魂を使ったのなら、肉体が残るはず。魔法を使った痕跡が無いのなら、どこかに潜んでいると思うが」

 『敵方の魔法師は、アルタリア様で手一杯でしょう。周辺には居ないのでは、と』

 「念の為、地上にいる方々は気を付けて頂きたい。リューデリア、持ちそうかい」

 「うむ。この強さなら十回位だ」

 「助かる。エスコと白鎧の騎士諸君はグラン殿と合流してゾンビの対応を。それ以外は敵の攻撃を引き付ける」

 半目になったレインバーグ将軍に対し、フウリラ将軍は苦笑いで返す。ため息をついた前者だが、命令には素直に従う。

 移動し始めて、集団が小さくなると、

 『まあまあ。私はもう死んでるから気にしない気にしない』

 『そう簡単に切り替えられませんよ』

 『練習と思えば良いじゃないか。これからレインバーグを背負うんだし』

 と、のほほんした表情のクレメッティ。子のコスティやアマンダ同様、何故か周囲に花が浮かんでいるかの様な錯覚に陥る面々であった。

 グランと合流すると、クレメッティを見た彼は一瞬驚いたが、すぐに現実に戻る。

 「頭と胴を切断すれば良い訳でもないのだろう」

 『そうだね。ゾンビの心臓部分を破壊しない限り、魔法でまたくっつく』

 「難儀な。しかし、肝心のそれは見つけられておらぬが」

 『魔法師が無理なら我々で探せば良い』

 「意味が分からぬ。我々では魔力を感じ取れぬのだぞ」

 『だからこそ違う視点で物事を見る必要があるだろう。ねえ、エスコ』

 『ええ。若輩者で恐縮ですが、一つ策がございます』

 「セイラック殿の息子か。若い頃によう似ておる」

 申してみよ、と、不敵な笑みを崩さないグラン。逆にやりやすくなったエスコは、ヘイノが分割した理由を踏まえて意図を伝える。

閲覧して頂き、誠にありがとうございます♪

楽しんで頂けたでしょうか。


続きは後日までお待ちいただくか、note にて先行公開されています。

無料で見れますので、ぜひ遊びに来てくださいね^^

https://note.com/aoimotiduki/n/na5988967fc02

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