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そして放課後、今回はパールを待つのではなく、スカーレットと一緒にホリゾン王子の元へ向かう。
「お兄様、少々お時間よろしいでしょうか?」
「少しだけなら良いですよ。何か用でもあるのでしょうか?」
「用があるのはセレスの方なんです」
「セレスさん、お久しぶりです。御用はなんでしょうか?」
ホリゾン王子の反応を見る限り、まだ私を探していた段階ではないということか。よかった、話がすんなり終わりそう。
「実は、禁忌魔法について聞きたいのです。詳しい方法は仰らなくてもよろしいので、どのような段階を踏んで手に入れるのかだけを知りたいのです」
ホリゾン王子様は顔だけ動揺を見せた。兄妹揃って同じ反応をするんだな。
「申し訳ありませんが、流石にその事については力になれません。…………! なるほど、そういう理由ですか」
一体どういう理由なのだろうか?
「たしかにあの財布からは禁忌魔法の跡が見つかりました」
ああ、そういうことか。
「お兄様! 禁忌魔法ってセレスが財布を奪われた時ですか?」
「そうですよ。セレスさんがもしあのまま財布を使っていた場合、大変な事になっていたかもしれません。ですので、教会に預けるという判断は正しかったといえます」
「今は問題ありませんの?」
「はい。大丈夫です」
「良かったわね、セレス。本当に、良かったわ」
な、なんか、私悪くないのに罪悪感が……。
「セレス様にスカーレット王女様? なぜこちらに?」
ああ、そういえばパールはホリゾン王子と話した後に私の元に来たんだっけ。
「少し用があってね」
そういえば、パールって禁忌魔法を多少感知できるんだよね? スリ事件の時も、禁忌魔法に対して良くない感じがするって言ってたし。
これ、もしかしたらパール連れていけば分かるんじゃない?
「あのさパール、少しお願いが──」
いや、する必要がない。私は、知っている。
ずっとパールが忠告してくれていたし、なんならバカにも言われていた。
「ああ、いや、やっぱりなんでもないや。スカーレット、ホリゾン王子様、ありがとうございます。少し用があるので私はこれで外させていただきます」
禁忌魔法の使い手、そして、私が助ける人は一人しかいない。
私が傷つけてしまった、謝らなければいけない人。
「探しましたよ」
人が絶対に来ないであろう、寮の地下室に彼女、シャルト様はいた。ついでにクズも横に倒れている。
「……離れてください」
「この状況を説明してください」
「離れてください! 今の私にはもう抑えつける力がないんです!」
シャルト様は何かが出てこないように必死に自身の体を丸め、背を向けている。
「私のせいですか?」
「違います! ただ、もう被害者を出したくないだけです。お願いです、今の私である内に逃げてください」
意味が分からないし、言われた通り逃げるのが正しいのだと思う。でも、逃げても結果は変わらない。それだけは分かる。
「逃げません。私は、シャルト様と向き合わなければならないのですから」
私がシャルト様に向かって一歩踏み出そうとしたその瞬間、私の歩みは止められた。




