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先生が戦う上での注意を始めたので、剣を腰につけて先生の方を向く。
「いいですか、ここにいる皆さんは、少なくとも実戦の場に出ても戦える人達です。いくら剣に制御魔法をかけていたとしても、十分に気をつけてください。特に、手や足、魔法は出さないように。それでは、ペアの人と一戦交えてください。相手に降参と言わせるか、剣を取り上げた人の勝ちとなります」
先生の話も終わったので、私と馬鹿は剣を構えた。
「散々俺を馬鹿にした落とし前、今つけてやるよ」
「あっはは、馬鹿なりの冗談、中々に上手いと思うよ」
合図もなく、私と馬鹿は前に出た。力勝負にされては勝ち目がないので、馬鹿の剣を流し、そのまま円を描くように馬鹿の脇腹に剣を入れる。
「本当に剣は通らないんだな。これならいくらでも耐えられる。お前は俺の剣を取り上げない限り、絶対に勝てない」
と、言っていた馬鹿も、ずっとサンドバッグにされてたからそろそろ限界のようだ。
「お、お前、手ばっか狙いやがって。卑怯だぞ!」
「おやおや負け犬の遠吠えですか。どうしてもやめてほしいなら、降参とでも叫んだらどうですか?」
この馬鹿王子がそんな事しないって分かってるけど。
「て、てめえ──」
「お、おい、あそこちょっとやばくないか?」
「先生の話全く聞こえてないみたいだし」
周りのペアがざわめき出した原因の方を見てみると、パールとスカーレットが少々やばい雰囲気を醸し出しながら剣を交えてる。
先生も割って入りたそうだが、下手したら両方の剣が当たる。というか、気迫が凄すぎて止められなさそうっていうのが本心だろう。あの先生、意外と小心者だから。
「何やってんだあいつら? ──あ、おい」
仕方ない、あの二人をペアにするよう促した責任を取りますか。
「剣貸して」
私は馬鹿から剣を取り、二人の方に近づいていく。
この二人、登場する世界間違えてないよね? っと思ってしまうほど鬼気迫る表情をしている。
「おーい、そこのお二人さん」
と、そこそこ大声で問いかけてみたが、まるで聞こえてない。
「先生、少し魔法つかってもいいですか?」
「え、し、しかし……」
「あの二人をこのままには出来ないですし。大丈夫です、魔法も得意なので。姉や兄を知っているのでしたら、過言ではないと思いますよ」
「……分かりました。許可します」
「ありがとうございます」
昔から剣やら魔法やらに付き合わせてただけあって、お兄ちゃんもお姉ちゃんも私と張れるくらいにはできる。やっぱり、兄姉の評価はこういう時重要だ。
私は軽く深呼吸をして、手のひらを上にする。
『風よ、我が命に従え』
私の手のひらに風の魔力を集める。私のイメージが含まれたそれを、二人の間に放り込んだ。
風が左右に分かれて吹き、二人の間に一瞬の隙間ができた。その瞬間を狙い、私は剣を二本抜き、二人の剣を押さえた。
「そこまで!」
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