第九十八話「俺の心がこう叫べと言っている」
『うわぁぁ!きゃぁぁ!!』
ざわめきから騒ぎへ脅威の大混乱。
生徒は慌てふためき、暴走はさらに活発。
ま、マズイ・・この空気は非常にマズイ。
どうしよう、こういう時どうするのが正しいんだ。
生徒会として何かできる事はないのか?
いや、それ以前に・・俺はどうするべきなんだ?!
ただ、見ていればいいのか?!
この状況を・・どうすれば!!
「やめてください!堕舞黒生徒会長ッ!」
混乱の最中俺は一人の女性の声を聞いた。
ステージの中央を見るとそこにはあの海王咲の姿かあった。
なんだ、アイツいつもより顔が穏やかじゃないな。
というより、焦りであのカリスマが崩れている?
堕舞黒の怒りを抑えるかのように口調もいつもより変だ・・。
「あ゛・・んだよ海王咲、邪魔すんなよ今コイツらの教育中なんだよッ!」
「申し訳ありません、無粋な発言なのは存じます・・ですが・・どうか・・どうかここは一度教育をお止めください・。このままでは流石に」
「うるせぇよッ!このままだとなんだよ!このままあの悪党共を放っておくきかよああ?」
「(早い段階で外の勢力が働いてしまうかもしれませんよ・・堕舞黒様)」
「グッ・・くぐっ・・」
なんだ・・一瞬だが海王咲が堕舞黒の耳元で何かを囁いた様な。
気のせいか?
「攻撃中止ッ!みんなやめろッ!」
「ハッ!」
「大丈夫か!お前らッ!」
「あ、兄貴・・すんまへん・・勝手な真似を・・」
「ほんま・・すんまへん・・」
「後で生徒会には謝っておく!それより今はお前らを運ぶぞ!」
「兄貴ぃ!」
良かった・・ヤンキーモドキチームは無事救出できた様だ。
それより、堕舞黒の方は・・。
なんだろう、見た感じ嫌な感がする。
「お前ぇぇ・・」
「も、申し訳ありません・・このご無礼は必ず挽回させていただきます」
「よし、じゃあその挽回は体で払ってもらおうか・・」
「・・はっ?!」
「うらぁぁぁッ!!」
「いやぁぁッ!やめてぇッ!がはッ!」
お、俺の嫌な予感は的中したッ!
堕舞黒が力いっぱいにその手で海王咲のシャツを破り、ビリビリと引っ張るッ!
みすぼらしい姿へと変わった海王咲を次は右足で蹴り倒すッ!
酷い・・惨すぎる・・男がやっていいどころか人がやっていいレベルを超えているッ!
倒れこんだ海王咲はとても苦しそうな表情をしている。
それでもまだ近づき何かをしようとする堕舞黒。
なんでだよ、まだ何かやるのか、もう終わったろ。
なんで、まだ続けるんだよッ!
「おらっ!このッ!てめぇのせいだこのヤロウッ!」
「痛いッ!痛いッ!ごめんなさいっ・・許して・・わ・・わたし・・がっ!!」
「どうだ苦しいか!そら反撃して見ろよできないだろッ!?ハハッ!ざまぁ!おら見とけ!お前らもこうなりたくなければな・・何もすんじゃないよッ!バーカッ!」
「いや・・いや・・」
俺の目に映るのは怒りの風景。
ただ目の前に見えるのは痛みと苦しみ泣き悲しみの言葉を放つ少女。
傷ついて蹴られる手から血が出ようとまだ暴力を止めない。
手だけではない、どんどん体は傷ついてボロボロになっていく。
それを楽しみ愉悦に浸る堕舞黒の高笑い。
周りはもはや目を当てられない、何もできず。
あれに抗う事すら許されない。
今は力で押さえつけられる家畜の様だ。
無力がこれほどまでに悲しい時があるだろうか。
何もできない事がどうしてこんなにも悔しい。
力になれない事がどうして悔しい。
それは、どうして思うのだろう。
「・・・ざけるな」
そうやって不思議な考えに呑まれて自然に体が動いていく、俺の体はまっすぐまっすぐと。
段々止まらなくなる、いつの間にか気づけば俺は席から立っていた。
ただ、許せなくって。
ただ、今を認めたくないから。
ただ、この状況が嫌だから、見ているだけが嫌だからだ。
「ふざけるなァァァァァァッ!!」
俺はただ許せない正義感を力にまっすぐ進み。
俺の右手わまっすぐ、堕舞黒のこめかみへと放つッ!!
「ぼぁぁぁッ!?」
なんでその時なにも恐れず走れたのか分からない。
どうしてその時迷いもなく行けたのか分からない。
けれども、俺の心がこう言えと。
ただ、それだけを信じて体を動かした。
「俺はお前の様な地上最低最悪最恐のクズ野郎を絶対に許しはしないッ!!!」
この時、とても小さなモノだったが。
希望の光が差し込んだのだった。
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