第九十三話「初夏の日常」
絶望の雨天だったあの頃は何処へ消えたか。
気づけば夏の始まりである初夏【6月】の始まりである。
涼しくも暖かい温度差の激しいこの季節、ちょうどみんなも心機一転の時期だろう。
テストも終わり新ためて学園での日常がスタートする。
「今日から・・夏か・・ちょうど半袖が許されるのは知っているが・・なんとなく長袖で来てしまった・・」
「あはは・・お兄ちゃんらしいよね~・・でもこの後気温上がるってお天気の人言ってたよ?」
「いいんだよ、お天気の人は三割似非予報士なんだから」
「似非予報士・・確率80パーセントって言ってたけど・・」
「外す時の為の20パーセントだよ、大体世の中失敗する確率がある時は信用してはならない、これ俺の知識」
「うーん・・難しいなぁ・・」
俺の新たな日常は夏の半袖に衣替えした妹との登校から始まる。
隣にいるだけで夏を思わせる雰囲気、とても微笑ましい。
朝も「新しい服装だねー!」と、とても嬉しそうに着替えていた。
妹の謙虚で健気な姿には本当に心を打たれる。
「せんぱーい!おはようございます!」
「おは・・ようッ?!」
後ろからいつもの愛川の声がしたから振り向けば。
そこにいたのは夏の制服へと衣替えしたただの愛川の姿なのだが。
なんだろう、心が尊い様なこの胸の高鳴り。
見ているだけでとても、なんていうか。
めちゃくちゃドキドキするのはどうしてか。
「どうしたんですか?先輩」
「あ・・ああ・・なんか朝から胸が苦しくて・・」
「大丈夫・・お兄ちゃん?」
「あらら・・先輩また風邪ですか??」
「いやなんか・・愛川見てると何故だか・・」
「ああ!それはきっと先輩が脚フェチで私の露出してなかった脚に見惚れているんですね!」
「ああそういう事かッ?!なんとなくなっと・・いや待て待て待てなんで知ってるッ!?」
「(脚・・ふぇ・・ふぇちぇ?)」
何故よりにもよって俺のフェチが愛川に漏れているんだ?
おかしいな、いくら何でもこんな愛川には話した事はないが。
ま・・まさかだと思うが・・。
「愛川・・」
「なんですか?」
その微笑む姿がちょっと疑いの余地あるけど。
真相が気になるから俺はあえて止まりはしないッ!
「ベッドの下の本・・見たか?」
「・・先輩の趣味が知りたくて・・つい・・その・・参考に・・」
「(ふがしッ!!)」
「えっ!?何?!どういう状況なの!?お兄ちゃん?!愛川お姉ちゃん!?」
思わず舌を噛んで背を後ろへと顔を隠す。
愛川は愛川で照れ照れと頬を当てて恥ずかしそうにする。
なんというか新しい季節なのに、いつもの風景ってとこが。
俺達の日常って感じで、とても心が安心するよ。
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