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第九十話「看病しに来ました!」

昼の合間に来る人物・・誰だろう。

まるで見当がつかないまま、ただただ首をかしげるばかり。

そうして悩んでいる間に俺の扉に一人の女の子が入って来た。


「こんにちは!先輩!」


「愛川ァ!?」


そこに入って来た女の子と征服姿は見覚えのありすぎるモノで。

一目見た瞬間とその優しい声の響きで全てが分かった。

まさかの愛川である。

予想外の人物に戸惑う事しかできない俺。

これは一体どうしたらいいモノなのか。


「先輩?どうしたんですか?」


「え・・ああ・・すまん・・突然の訪問で困惑してるんだ・・」


「そうですよねー!無理もないですよ、本来なら学校にいる時間ですもん!」


「アレ・・じゃあなんで愛川がいるんだ?」


「先ほどやっぱり柳原先輩が心配になって学校早退してきました」


俺だけの為に学校早退したのこの子ッ!?

俺を思う気持ちがあるのは嬉しいけど、まさか早退までして来たか。

なんだか、本当に迷惑をかけっぱなしだ。


「そ・・そうか・・悪いな愛川」


「全然かまわないですよ!だって早く山田先輩といる元気な先輩を見たいんですから!」


「アーソッチネ」


知ってたけどこの状況でまだ山田と俺の事を・・ブレないなお前も。

いや、むしろそうじゃなかったら困るは困るんだけどな。

まあ、理由はどうあれ心配して様子を見に来てくれるのはありがたい。

こんな俺でもやっぱり一人はいるもんなんだな。

ちょっと心細かったから、安心したよ。


「あ、そういえば山田先輩・・柳原先輩が来ない日が続いてとても元気が無さそうでした」


「うっ・・そ、そうか・・なんか言ってたか?」


山田・・一様学校には行ってたのか。

それはそれで安心だが、きっと普通ではないよな。

愛川の言葉的にもおそらく暗い表情とかしているんだろう。


「えーっと・・そういえば『もし会ったら・・私は元気だから気にしないで』って伝えてって言ってました・・すごく辛そうな表情で」


「なるほど・・今凄い雰囲気的にも状態的にもヤバいのは察した・・」


完全にアイツ底知れぬ絶望と悲しみに落ちている。

なんとなくだがその時の様子が見なくても感じ取れてしまう。

長年の付き合いあって、分かりやすい野郎だよ。


「山田先輩・・今でも気にしているんでしょうね」


「気にしているだろうよ・・アイツはそういう奴だ・・小学生の頃も一回そういう事あったんだよ」


「まあ・・小学生の頃に・・ですか?」


「ああ、あの時よりはまだマシな方だが・・二回目ってのが・・」


「だとしたら・・山田先輩の苦痛も苦悩も・・相当なモノでしょうね・・」


「・・そうだろうな」


小学生の頃はもっともこんなレベルでは済まされない事件だったが。

今回も正直本人からすればありえない事件だった。

よりにもよって破ってはならない約束だったんだからな。

俺としてはこれだけでは諦めないつもりでいたし。

山田を攻める必要もない。

だからといって・・本人が気にしないはずがない。

難しいモノだな・・。


NEXT


その頃、藤宮は。


「えっ・・愛川さん早退したんですか?!」


「うん・・きっくんの看病するって」


「(柳原先輩の看病・・ああ、山田先輩と一緒にいるところが早く見たいんでしょうね)」


なんだかんだ愛川の行動が察せる様になっていた。



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