第八十九話「悲しみは止まない」
ある日の学校。
あのテストの日を栄に大雨が続く日常。
雨の音が激しく屋根や地面を叩きよく耳に響き渡るであろう。
そんな大雨の中、昼休みの真っ最中の図書館。
田畑と西園寺さんが物静かにチェスをしていた。
「柳原先輩・・今日でもう三日の休み・・風邪大分響いたみたいですね」
「(馬鹿なのは知っていたが今年のテスト結果45位でさらに馬鹿になったか・・まあ他にも理由はあるだろうけど)」
「このまま風邪を引いたまま学校来れないって事はないでしょうけど・・どうなるんでしょう」
「(大抵こういう展開はよくあるもんだが・・良いとこ闇堕ちはたまた・・自殺だ)」
「縁起でもない・・まだ俺達の物語はきっと1クール目ですよ・・なのに・・そんな2クール目のストーリー展開・・あってはならないはずだ」
「(もしくはシリーズ作品の2か3あたり信頼してた親友が何も守れずとか誰も笑顔にできないとか言い出して急に闇の力に目覚めるアレだな・・どちらにしろあっては欲しくないけど・・)」
「・・深刻ですね・・こんな時に柳原先輩の心の癒しとなる人物でもいれば・・」
「(必要ねぇだろうが・・必要だろうな・・ま、どのみちそれっぽいのは行ってるだろうよ)」
「・・上手くいってるといいんですけどね」
◆
「・・お兄ちゃん、風邪大丈夫?」
「うん・・なんとかな」
なんとめんぼくない、あの状況でどうして風邪を引かないって思わなかったんだろう。
いくら悲しみと苦しみに浸っていたからと言って雨に打たれ続ける事はないだろ。
馬鹿なのか俺は馬鹿なのか?
「・・はぁ」
「げ、元気出そうよ!た、確かにその・・テストの結果は残念だったけど・・」
「問題はそこじゃないよ・・」
「えっ?」
「山田に何もしてやれなかった事だ・・テストはこの際どうしてああなったかは後で考えればいい・・問題は山田を闇の中に食わした事に問題がある」
「闇の中?」
そうだ、俺はあの時絶望の最中にいてどうしたらいいのか分からなかった。
人間の一番の弱さである【パニック】だ。
頭の中が混乱しすぎてもう処理すらできなくなっちまった。
そんな中、山田の一言一言で崩れ落ちる精神に言葉が出なくなり。
果てには・・諦めた。
間違いなく俺は今人類史上最悪最低のクズ男・・風邪は引くし。
女は置き去りにするは、何もしてやれない・・無力な男。
迷惑をかけて生きる事しか・・できない。
「お兄ちゃん?」
「えっ??あっ・・すまない・・考え事してた」
「あはは・・仕方がないよ・・色々あったもんね・・しょうがないよ・・」
「苺にも迷惑かけて・・ごめんな」
「き、気にしないでよ!私はお兄ちゃんの力になりたいの!言ったでしょ!私達支え合って生きて行こうって!私達家族だし兄妹だよ!なによりどんな罪だって背負うって言ったもん!」
「・・苺」
こんな健気な妹に支えながら俺は何をしている。
病人となり今動かなくてはいけない時に何故動けない。
ジレンマだ、なんという屈辱。
このまま俺は・・ずっとこんな生活を強いられてしまうんじゃないか?
色々考えすぎて・・また心が不安になってしまう・・。
ピンポーン
「あれ・・誰か来たのかな?」
インタホーンが今・・鳴った?
変だな・・今この時間は学校だしお昼だから誰も来ないと思うが・・。
一体・・誰なんだろう。
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