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第八十六話「死に物狂いで手に入れた実力」

基本的に総合実力テストは前回やったのと内容は変わらない事が多い。

なので内容について再確認や復習をする者は後を絶えない。

だが、それとは別に注意しておかなくてはならない事がある。

時間だ、数学や国語は特に思考をフルに活用せざる負えない。

だが、考えてる間に刻一刻と時間は進む。

このテストで重要なのはいかに無駄な思考を減らすか。

いかに難問を素早く解けるかが決定とされる。

それもそのはず、用意された時間が【確認時間10分テスト時間30分】。

しかもこのテストは用意された問題が限りなくレベルが高い。

一年から三年すべてを巻き込んだテストの難易度は一説では。

このテストを50位内に入った奴は間違いなく。

二流大学なら合格率80パーセント、一流なら50パーセントの確立で受かる。

と、誰が言ったか分からないがそれほどまでに豪語される。

さらにこのテストは事実上の【生徒会会長】になれる特権付き。

悪魔で実力として見せつけておきたい連中の他。

今年はこの学園の生徒会長に登り詰めてやるという人間もいる。

たかだか生徒会会長と思うかもしれないが。

時と場合・・特に俺らにとってはなるべく防衛しておきたい立ち位置である。

山田が今生徒会会長で誰からも信頼ある立ち位置というだけで強み。

いいかえればそれさえ無くなっただけで世間からの評価も変わる。


まさにこのテストは俺らにとって運命の分かれ目である。


「(ま、慣れればこんなテスト難しくもなんともないな・・今回も良いところ60位前後に入っている事だろう)」


最初の国語、流石にディートリッヒ先生の教えもあって俺ら3年生は特に難所ですらない。

むしろ生温いとでも言えるほどである。


『読みと書きは100回書いて1000回読め、口に出しながら書いた事は自分が良く覚えている、文章問題や名作からの出題も抜き打ちで暗記できてるのは・・そのおかげとも言える』


「(名作を始まりから終わりまで書き写して時折不意打ちの問題をしかけて来るあの鬼教師に育てられただけの事はある・・すらすらと頭から出て来るよ)」


無理難題を押し付けられたと思ってやらない奴は置き去りにされる。


これはディートリッヒ先生の軍隊に所属していた頃の教えらしい。

一見絶対不可能と思われる訓練や命令をくだされた時。


「やる意味がない」


で事を済ませる者こそ本当に成長できない人。

たとえ無理だとしてもそこで結果を出さなくてはならない。

先生曰く、無駄と思う前になんでもやってみる事。

全てをやってから無駄かどうか判断すればいい。

全力を尽くして血を吐く思いをしてやったのに何も成果が出なかった時こそ。


本当の無駄な事だと言える。


少々強引で人によっては何を言っているか理解できない者もいるだろう。

だが、俺達はその強引な教えに引っ張られてここまでやってこれるようになった。

だから、この教えは無駄なんかではない。

ディートリッヒ先生の教えは絶対に間違えていない。

この教えによって、俺は書く事の大切さが分かったのだから。


「(よし・・国語はひとまず大丈夫だろう)」


安心するのはまだ早い。

俺の前に立ちはだかるのは国語だけではない。

次は数学、まだまだ地獄は始まったばかりである。


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