第八十三話「伝えないより伝える」
「びっくりしたよー・・まさかお姉ちゃんが帰ってくるなんて思わなくて・・」
「すまないな苺、本当はもっと早めに連絡を入れるつもりだったんだが・・交戦が思った以上に長引いてしまってな」
「こうせん?」
「姉さんそれ以上苺に余計な事を教えない」
食卓に今日も一人賑やかな人物がいる。
綺麗な顔してさっきまでブラコン全開してたのが嘘みたいに静かだ。
人前でそういう素を見せないってのが自重している証拠でもあるんだけどさ。
なんでこう、ピンポイントにブラコンなんだろう。
妹に対してはこんなにも普通なのに・・。
「ところで苺、最近はどうだ?学校生活で困った事とかあるか?」
「とくには無いかな、毎日楽しいよ?」
「うんうん・・お前がそう言ってくれると本当に心から安心するよ、なあ菊」
「それには同感だ、妹に何かあったら流石の俺も耐え切れない怒りを見せるかもしれない」
「はは・・二人とも過保護してくれるのは分かるけど・・私もいつまでも甘えるわけにもいかないから・・早く大人になって・・みんなの事を支えられる人に慣れる様に頑張るよ!」
「苺・・こんなに立派になって・・」
姉さんが感動するのも無理はない。
俺もこの前優しすぎで泣きそうになった。
※号泣してました。
「あ、そういえば・・今日の昼頃の話なんだけどね」
「お昼なにかあったのか?」
「うん、少しお外を散歩してたら猫をイジメてた人がいてね・・自分の事を【僕は偉いんだ】とか言いながら猫さんをイジメて・・」
「なるほど、私にそいつを消せって言いたいんだな!任せろ」
「違うよッ?!」
「姉さん・・妹に物騒な言葉を使うのはやめてくれ・・」
「す、すまない・・つい興奮して・・」
「い、いいんだよ・・つづけるね」
全く、油断も隙も無くすぐに武力行使を行おうとする。
裏社会のキングはこれだから・・。
妹も若干ぎこちなく話しているけど大丈夫だろうか。
「私、そこでやめてって言いながら猫さんをかばったんだけど・・その人は【俺様は堕舞黒家後継者だぞ】とか言ってかたくなに続けようとしてね」
ごめんその人高等部の馬鹿なんだ・・。
良かった、今日サバイボルで残酷な目に合っていなかったら。
俺は今度彼を見かけた時正常でいられないからな。
「私、その時は猫さんかばって蹴られても仕方がないと思ったの・・でもその時ね、一人の男の人が助けに入ってくれたの」
「へえ・・そんな奴がいたのか」
「うん、その人は相手を傷つけず、わざと集団の攻撃をかばってくれて・・終わってみて見れば傷だらけで少しでも手当をしようとしたんだけど・・その人は【一人の人間として誰かを助けるのは当然だ】って言ってなんのお礼もできず去って行ってしまったの」
今時そんな少年漫画の主人公の様な奴がいるとは驚きだな。
なにはともあれ大事な妹を守ってくれた事に感謝だ。
「そんな事があったとはな・・まあ、災難だったとはいえ・・無事で良かったよ」
「うん、でも一つだけまだ心が晴れなくて・・」
「苺が晴れないとは珍しいな・・」
「私、どうしても・・もう一度助けてくれた彼に会いたくて・・お礼だけでも言いたいの」
「言えばいいじゃないか、どんな人もお礼を言われて嫌な人はいないよ」
「う、うん・・そうなんだけど・・」
苺が拒む理由は多分「相手に迷惑じゃないだろうか」という奴だろう。
一見お礼が迷惑には絶対にならないとは思うが。
相手にとってお礼はいらないみたいな様な雰囲気なんだろう。
それをその時言ったのにわざわざお礼をしにまた来たのか。
そう言われるのが怖いとかそういう奴だろう。
まあ、兄としてここはひとつ背中を押してやろう。
「恐れる事はないさ、お前が言いたいのなら言う、それだけだろ?」
「お兄ちゃん・・」
「大事なのは想いを伝える事、迷って伝えそびれるぐらいなら、その形がどうあろうと伝えておくべきだろう?」
「・・そうだね!お兄ちゃんの言う通りだよ!」
良かった、納得してくれたみたいだ。
うかない顔をしていた苺だったが、すっかり笑顔に戻った。
「(フフッ・・流石は我が弟・・家族の問題にも真剣に考える・・立派になったな・・)」
「(姉さんがこっちを見ている・・まさかまたブラコン発動ッ!?)」
「(思いを伝える・・よし、頑張ろう!)」
家族の絆がまた一つ結ばれる。
こうしてそれぞれすれ違う思いがあれど、今日もまた積みあがるのだった。
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