第八十一話「俺がゲームを好きになる理由」
田畑がやっとの思いで解放された中学生に放った言葉。
それはあまりにも衝撃的な逆鱗の一言であった。
これには中学生カップルも驚きだろう。
無論、俺もこれには驚いている。
だが、田畑のあの表情からは何かそこには深い理由がある。
俺はそう感じ取っているからこそ、今の田畑には何も言ってはない。
いや、言うべきではないのだろう。
その姿を見守る中、田畑の語りは始まったのである。
「俺は・・ゲームは【遊びの舞台】としてずっと子供の頃から好きだ、それがたとえどんな形の物語になろうとも【結果的遊びで良かった】と思える・・だからこそ俺は好きだ」
その言葉にはまるで数十年生きたかのような深き重みのある言葉が出てきた。
そう、田畑にとってゲームと遊びである事には変わりはない。
みんなだってそうだ、ゲームは遊びだろう。
だが、その【好き】の中にある田畑の言葉から。
俺はかつて四月の初めの頃に出会った彼の言葉を思い出した。
何故かとても温かみのある光ある言葉に記憶がふと蘇ったのだ。
そう、その時はこんな言葉だった。
俺はあの時偶然出会った田畑と深く語りあい、あの時の言葉がとても印象に残っている。
◆
好きだからこそムキになれる。
遊びだからどんな結末でも【そこに一つの簡易的完結がある】
ジャンルがたとえ【ボード】【カード】【テレビ】どれになろうとも形はゲーム遊びである。
世間から邪険に扱われる事が多い、ゲームは人をダメにする。
時にはきっとゲームを語る人間、ゲームごときで怒りを見せる人間や喜びをみせる人間。
そんな彼らに対し【気持ち悪い】【人としてどう】【馬鹿馬鹿しい】なんてこともあるだろう。
だが、こんな言葉がある。
【遊びだからこそ生まれるモノ】という言葉がある。
どこで誰が言ったかなんて忘れたがかつてその言葉に歓喜された。
その時から俺は、小さな子供の時からずっと遊びの道を究めた。
テレビだけじゃない、時にはボードからカードまでも全て極めた。
極めるだけじゃない、下手でもいい、そいつらを愛せる心も学んだ。
結果としてたどり着いたのはヲタクだったが、今より自分が出せた。
そう、俺は遊びによって【自分が生まれたんだ】。
かつて何も取り柄がない場所もない俺に場所をくれたのはゲームだ。
こんな俺にもたった一つ誇れる一番がある。
それがゲームである。
世間にくだらないと罵られようと。
たとえみんなに小馬鹿にされようとも。
いつの日も【好きだから】という一言で生きる希望が生まれた。
どんなに辛い時にも俺を笑顔にしてくれたのはゲームだ。
友達の輪を広げ、時には多くの者に笑顔をくれた。
それも【遊びが産んだ産物】である。
だから、ゲームがどんなくだらなくてもいいんですよと。
負けて怒って【くだらない】と言われてもいい。
コワくて泣いて【ビビり】と言われてもいい。
楽しすぎて【子供】なんて言われてもいい。
くだらないからこその遊びであり。
くだらないから【笑ってられる】それがゲーム。
一生、遊びだからこそ俺は好きなんです。
◆
・・・っと
この全てが田畑がゲームに対する思いだ。
俺はこの時、田畑に感動した。
男としてかもしれないが、そんなに好きになったものに対し。
真剣に向き合い、どこまでも愛を尽くせる。
そんな姿に俺は心から尊敬の念を抱いた。
「・・だからこそ、俺はゲームを・・喧嘩の道具にするってのが許せないんだよ」
「・・はい」
「そもそもな・・彼女を賭け事に巻き込むなんてのは男としても人としても問題外なんだよツ!!」
「・・・はい」
「これに懲りたら・・見栄を張らず・・生きろ」
「・・・・はぃ」
よっぽど許せなかったのか、俺が言いたい事さらっと言ったよ。
そこは流石田畑というか、なんというか。
あまりにもボロクソに言われて、何も言えなくなる中学生男子。
ついに、背を向けてトボトボと歩き、とても悲しそうに帰っていく。
なんだか報われんな・・。
いや、今回の件に関しては誰が悪いとか言えないけど。
結論としてはとにかく、喧嘩両成敗と言ったところだろう。
「少年・・何も強がる事がカッコよさではない・・もし本当にカッコよく生きたいのであれば・・自分を見直せ・・」
「・・・」
ずいぶん急な一言だったが、あの一瞬でも止まった少年にその言葉は届いたのだろうか。
なんだか気になるが、その後彼がどうするかは・・彼次第だし。
俺らの知る範囲ではないだろう。
「・・終わったな」
「また一つ・・大きな事件と出会って・・くぁ・・流石に二度目は疲れるね」
「(夕焼け小焼け・・よく目に染みるよ・・)」
「お前らといたのは数時間なのにさ・・なんだか一日いた気分だわ・・」
気づけばあっという間、だが鬼龍院先輩のその言葉には同感。
この人達といるとやはり暇はない、毎日がイベントの宝庫だ。
だからこそ、いて悪い気はない、むしろこれからもずっといたいぐらいだ。
今度はどんな物語と出会えるのだろう。
そんな感じに仲間と過ごす毎日が気づけば、俺の日常。
慣れってのは恐ろしいもんだ。
「・・ま、なにはともあれ一見落着・・疲れましたよ・・」
「お疲れ田畑・・家帰ってゆっくり休むといいさ」
「(うむうむ・・今いうのもアレだが・・ちょいかっこよかったぞ(お世辞))」
「コイツ・・何処まで行っても・・」
「ハッハッ!・・いやー・・それでこそ西園寺さんですッ!最高っす!」
「(はは・・まったく・・)」
夕焼けに黄昏て俺達の物語の1ページは終わる。
明日の風に吹かれて、明日の物語の1ページもまた動き出す。
だからこそ、今日という日があった事は永遠に俺達は忘れないだろう。
このページ記憶にある限り心の中で永遠に残る。
そう、感じたんだ。
あの、綺麗な夕焼けを見て・・なんだかそんな事が思えたんだ。
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