第七十九話「俺にとってのヒーロー」
「次、早くしろよ・・」
「つ、次はお前だ!お前ならアイツどうにかできんだろッ!」
「そ、そんな事言われてもぉぉ!!」
「いいから行けよ!いかないといけねぇんだよ!おらあくしろよッ!」
「そ、そんなぁぁ!!」
「(女性キャラが可哀想だがこれも勝利の為だ・・許せ)」
もはや絶望の空気に惑わされないのは本気という証拠。
手加減無用の無慈悲な鉄槌である。
こうもあっさり勝利をもぎ取る姿は中々にすかっとしてしまうな。
『ラウンド2ファイッ!コレデドウッ!ライジングカウンタァッ!セイハァ!イェイ!ヤッハ!キュピィ!オーモーイーメニウツル―ノハーライジングバニッシュッ!!(あーはん・・あーはん・・)KOゴカクデスネー』
「・・またパーフェクトゲームだと」
「う・・ウゴゴ・・ゴゴゴ!?」
「(なんでリザの水晶初手で飛ばすかなぁ・・初心者にしたってひどすぎる)」
やべぇよなんかもうため息し始めたぞアイツ。
余裕通り越してあきれ始めたぞ・・これが怒りの先にあるモノ。
あまりにも勝負にならなくてついに勝利が確信してしまった?!
まあ・・次の一戦も余裕だろう。
「お前の実力は認めてやるよ・・確かにお前は強い・・」
「ああ・・あざっす」
「だがな・・俺には切り札があるんだよッ!俺の切り札はコイツだぁ!」
「(あ、アレは隠しキャラ・・しもかぶっ壊れステータスの)」
「西園寺さん妙に詳しいですね・・てかぶっ壊れ?!」
「大会だと禁止にされてる部類のな、誰が無茶苦茶な操作をしても勝てるというあまりにも強すぎる事から何故プレイアブルになったのかすらと疑問に持たれた事も・・」
「本当になんでプレイアブルなんだよッ!!」
これは流石に終わったか!?
いや・・でも田畑の表情が凄いユルイ!?
ゆるい・・つか・・悟り開いている!?
「これで貴様も終わりだぁ!死にさらせェッ!!」
『ファイナルバトオ・・リュウセイヒャクレツッ!ハイヤァ!』
ゲーム初心者の俺でも分かる・・このキャラの動きは純情ではない!
いうなれば【スピードと火力と操作性】をこれでもかというくらい最高に使いやすそうだ。
事実、あのレバーとボタンの適当加減はゲームプレイヤーなのかと疑いたくなるレベル。
あるまじき事か田畑のキャラである肉体派重量キャラではあまりにも追いつけてない!
それどこから先ほどまでボコボコにしていた田畑がついにボコボコにしかえされている。
なんと胸糞の悪い展開だ・・あまりにも汚すぎる!
普通こういうのは対等に戦うからこそ意味があるというのにこいつらと来たら・・・。
「先輩、怒りの感情が出るのは分かりますよ・・俺も事実腹が立ちます」
「(えっ!?コイツ今俺の感情よんだ?!)」
「どうしたぁ?もう体力がなくなるから遺言のつもりかぁ?それとも・・負け惜しみかなあ?」
「たかだかキャラが強いとか壊れ性能というだけでそのキャラを使ったり・・特に愛着もなく強いからという理由でそのキャラを使われることが俺は本当に嫌いだ」
「はいはい負け惜しみ負け惜しみ・・」
『ノォォ!!』
た、田畑が語りながら当然のように負けたぁ!?
おいおい田畑違うだろ?!
そんな事言う前にまずお前なんて事を・・。
「(まあまあ・・顔に感情が浮き出てるぞ?落ち着け落ち着け)」
「お前が焦る気持ちも分かるが・・アイツの顔を見な」
「えっ・・」
その時だ・・相手のキャラ性能で田畑がごり押しで負けた。
かのように見えたその数秒後奇跡は起きるッ!
「俺が何故コイツを使うか・・・それはコイツが業界では【使いづらいキャラナンバー1】と言われ、キャラがカッコイイ以外なんの褒めどころもないと言われた中俺はこのキャラを最初に見た時から好きで使っている・・いうなればヒーローだ」
その田畑の語り部と共に田畑は一度手をポキッポキッと一握り音を鳴らす。
その音は周りにいる者を動揺させるほど身の毛がよだつ行為。
そう、彼からまさしく本気のオーラが出ていたのだった。
ここまでが前座でありここからが田畑の本気である。
油断していた所に一気に敵を畳みかける逆転劇の様に。
ヒーローは力を振り絞り、再び不死鳥の如く蘇るッ!!!
「俺はとことん王道が大好きでね、【一度やられるからこそヒーロー】だと思っているよ」
その瞬間、田畑の手は神速を超えるッ!
ガチャガチャガチャガガガッタッーンッッッッ!!
『キュピィンッ!!リザレクションスタートッ!イェイッッ!!ワンモアチャンスッ!!』
「なっ?!何が起きた!?」
「知らんのか?リザレクションコマンドだ‥お前が無駄に強攻撃ばかり連発してくれたおかげでこっちはゲージが三本溜まったんだよ、特にそ隠しキャラってのが利点となった・・そいつは攻撃の一回は確かに高火力だが・・その一撃だけで相手に大量のゲージを貯めさせる唯一の欠点が存在するッ!お前はまんまと俺の策にかかったんだよ」
「な・・なんですとぉぉッ!?」
そう、奇跡の正体はこの格ゲー特有の奥の手とも言えるコマンド。
【リザレクションコマンド】である。
三本のゲージがある時のみ使用可能としてやられてから。
数秒の時間のみその入力が許される。
しかし、許されるのは本当にわずかな時間だけ。
一つでもミスればやり直す時間なてモノはない。
アイツはこのミスれない状況かで平然とやってのけたのだ。
「お・・おのれぇぇぇ!!!」
「さあ・・バトルスタートだ」
怒り狂う相手に怯えずただ勝負をしかける勇者の姿。
「だが何度も生き返ろうが返り討ちにしてくれらぁぁ!!」
その姿は本当に漫画の主人公の様だった。
俺は、改めて知った田畑の自信を持って言える強さ。
「そうそう言い忘れてたな」
田畑の雄姿あるべき姿ッ!
傍から見ればただレバーとボタンを変態の様に高速で押してガチャガチャしてるだけの人かもしれない・・だが・・俺や周りからは違って見えた。
そう、それは人を救う救世主の様な姿だった!!
『リュウセイヒャクレツ・・ライジンッカウンタッ!!セィハァ!!』
「どんなに強くてもブロックとカウンターでそれ防げるから」
「・・・」
「最後の言葉もなしか・・じゃあ・・さらばだッ!!」
『ピキィ!アルティメット・ボンバァァッ!!!!(ありえんッ!!!)KO・・win マイケル』
その最期の瞬間。
単なるゲーム画面に向かってコマンドをうっていた者にしか見えなかった彼だが。
劇的な手裁きは突風が起きるほどの大迫力で凄まじいモノだった。
そして、最後に訪れるのは・・勝利に歓喜するみんなの姿であるッ!
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