第六十七話「もう一人の天才」
「いいか・・勝負は三本勝負、どちらが多くの点数を取ったかによって勝敗を決する実に単純だが、問題はお前が未経験というところに多くの問題がある」
「そうか?」
いや、事実問題大当たりだろう。
それどころか。
いくら何でもその余裕な表情を見れても俺は問題しかないと思っているのだが。
ていうかなんで緊張一つもコイツはしていない涼しい表情をしているんだ。
改めてコイツのヤバさが分かる。
「そこでだ・・僕も経験の無い奴に圧勝してはみんなも納得いくまい・・というわけで・・一度のみ試し打ちを許可するから、一発とりあえず打てよ、そしたらもうすぐに試合開始だ」
「要するに俺の試し打ちがスタートの合図なんだな」
「そういう事だ、さあ・・お前の天才といわれる最大の実力を俺に見せてくれよ」
「いいぜ、やってやるよ」
遠目から見ても大和があのアーチェリーの弓と矢にどれだけ力を入れているのかが分かる。
初見とはいえおそらく見様見真似でしっかりと構えられるのは流石というべきか。
はたして、そこから放たれた矢は的に命中するのであろうか。
今、最初の運命の瞬間ッ!!
スパンッ!!
「・・外した」
「(やっぱダメじゃんンンンンンッ!!!)」
「(や、大和・・本当に何でこの勝負を選んだの・・・)」
信じた俺が馬鹿だった様な気もするがやっぱりダメだ。
的の近くまでは放たれてはいるものの思いっきりずれている。
この大きなズレは俺ら先輩の目線からもかなりデカい衝撃を受けた。
なにせ自信満々にふっかけた勝負に希望が何一つ見えないという事だ。
これでは流石に奴に笑われてしまうのも無理はあるまいよ。
「クッ・・ハハ・・お前もついに地に落ちて腐りに腐ったか?惚れた女の前でかっこつけたくなるのは分かるけどな・・」
「ん?」
「けどな・・そうやって身の程をわきまえず命知らずな真似をするからお前はそうやって好きな奴にさせちゃあいけない顔をさせるんだぜ、力になれないあまりになぁッ!!」
スパンッ!!
劇の様な口使いをしながら弓を構えて矢を放っただと!?
迷いもなく一瞬で構えて一瞬で放つそれはプロの様な動き。
信二もまたうっすらとはいえ天才の異名を持つことは知っていたが。
間地かで見たらそのオーラはすさまじいほど伝わる。
なによりこの距離だ、90mもあるであろう的をなんの迷いもなく普通は打てないだろう。
目が震えてしまうほど恐怖の強さだ、風になびく彼の姿はまさに強者の風格。
口が達者な分味が出すぎているッ!!
「ふむ、8点・・僕にしちゃ珍しい点数を出してしまったな・・」
「ふーん・・お前やっぱり強いな」
「分かったかい?もし負けを認めて降参するというなら今のうちに許してやっても構わないけど?」
圧倒的絶望は俺と夢子にもしっかり伝わる。
この雰囲気からもう心の奥底ではもう負けを認めても誰も責めない。
大和はよく言ったし頑張ってくれた、そう思っていたであろう。
「いや・・」
「あ?」
だが、彼自身は全く違う心境に立っていた。
そう、彼は周りの絶望的雰囲気にのまれず、ただ一人。
「もう・・勝負はついているから・・」
「・・・なんだと」
そう、ただ一人心の中で。
「お前の敗因は俺にチャンスを与えた事」
勝利の未来を見ていた男の姿があった。
「俺の勝ちだ・・信二」
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