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第五十九話「忘れたかもしれないけど」

「やめときッ!愛川ッ!藤宮ッ!」


「山田先輩ッ?!」


「山田先輩ッ!!せやけどッ!」


なんだこの茶番、なんだこの異様な光景。

まるで「おじき」とでも言われてそうな山田の光景だ。

てかノリがまた良いな山田よ。


「堪忍、でもね・・気持ちは分かるよ・・でもね愛川ちゃん、きっくんが言ったかもしれないけど・・我慢は大事、復讐は復讐しか生まない、争いは争いしか生まない・・どんな事があっても【やり返す】とかしちゃだめ、そうやってたらいつまでも変わらないの・・周りが変わらないとか思った時こそ・・自分がまず変わってあげよ?」


「そ・・そうですよね・・ごめんなさい」


山田は凄いな。

とっさの判断と言葉とはいえ、優しい言葉遣いで愛川のあの憎悪を沈めて。

両肩をポンポンと叩く事によってさらに暖かさに包まれ安心する。

百点満点の回答だ。


「うんうん・・藤宮ちゃんもね、私を思ってくれる気持ちは嬉しいよ?けれどもやりすぎ厳禁だし・・やっても厳禁・・許したくない!許してたまるかッ!って思っても・・絶対許す心がけは必要なの、今回の件だってそんなに叱るべき事じゃないでしょ?」


「せ、せやけど・・せやけど・・」


「許さない人間より、許せる人間になろ?多少の事に対して一々叱ってたら自分が疲れちゃうよ、そうやって人は錆びてしまうのだから・・いつまでも小さな事に怒っちゃだめ、いいね?私はどんなに傷ついても誰かを恨むとかは絶対しちゃダメ、それは傷ついた私に被があるんだから」


「う・・うう・・分かりました」


「よしよし!偉いね~!藤宮ちゃーん!」


「わわわッ!!セ、先輩~ッ!!!」


優しい、どこまでも優しいのが山田だ。

争いを生む事を良しとしない山田はいつもこうやって止めれる。

誰かが誰かのためにやる必要なんてどこにも存在しない。

誰かを恨み生きて行く必要なんてない。

誰かが必ずしも誰かを叱り続けて生きる必要はない。

時には許し生きていける者になれ。

そういう山田なりの優しい人になれという教えなのだろう。


「まあ・・どうしてもコイツだけは絶対許さねぇッ!ってなるのは・・本当にどうしようもないくらいクズにだけ使いなさい、もうマジ許さないわ・・的な人よ」


「(それは良いんだ・・なんだかよく分からないな・・)」


『分かりました!』


「(分かっちゃったよ・・いいのかなぁ・・)」


なんだか山田の良く分からない教育のおかげで救われたディートリッヒ先生。

山田もまた一つ後輩から慕われる形になった。

なんだかんだで良い話になったんじゃないかな。

俺も心の中でホッと一息するような安心が生まれたよ。

流石は山田、生徒会長は伊達じゃないよ。


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