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第五十三話「動き出す影」

俺は山田以外なら実は状況が少し変わるんじゃないかとふんでいた。

しかしそれはあまりにも甘い考えだと言う事を目の前で痛感することになる。


「ドゥォォォォリャァァァァッ!!」


激しく壁を回り込み神速の足踏みで大地に跡を残す勢いのありすぎる攻め込みをし。

フィールドに響きを取るくらいうなり相手が恐怖してしまうわ様な声を上げる武蔵。


「遊び?スポーツ?違う・・これは一種の戦争だともぉぉぉッ!!」


目を輝かせ生き生きと走りこむ野生児ソノモノの動きを見せる山田。

もはや相手からしてみればただの恐怖絵図である。


「(もはや誰にも止められんよ・・これ)」


「ヴォォオおい?!来たぞ?!両脇から来たぞコレッ!!守れよ?!お前らちゃんと俺の事守れよッ?!いいかッ?!お前ら負けたら本当に許さねぇからなッ?!」


「わ、分かりました」


「勝てるわけないだろッ!」


さも当然の様な答えが僕の見える壁から聞こえて来る。

そりゃあそうだ、あんな化け物と戦う方が間違っているというもの。

両サイドから攻め込まれたらもう一たまりもない。

これは合掌して待っているほかあるまい。


「フハハハッ!ハハハハッ!アッハハハハッ!!くたばりやがれぇぇぇッ!!」


「グァァァッ!!」


なんとなくだが叫び声で今彼らがどういう状況なのか察せる。

きっと武蔵は飛び上がって左サイドにいた敵に向かって鷲掴みしたボールを。

そのまま相手にぶん殴る鈍器の様に扱ったにちがいない。

もはや凶器である。


「くらえッ!必殺の一撃・・【デス・インパクト】ッ!!」


「な、なにあれぇぇぇッ?!ぶぼぁぁぁッ!!」


今度は山田の必殺技である【デス・インパクト】が発動したな。

アレはこのサバイボルのみ使用できる技の1つ。

上に投げたボールを落下して来たところに回し蹴りを入れるブーストコンボ。

このサバイボルは一度投げたボールはツーバウントするかキャッチするまでは相手の物。

つまり一度投げたボールを蹴って飛ばしてもセーフという事である。

そしてこの破壊力はすさまじく、大会では【ワンショット医療食生活送り】をやってのけた。


「ヴ・・ヴァァぁッ?!ふざけんなぁぁ!雑魚共ッ!!ヴ、ヴわァァァ?!」


「クックッ・・追い詰めた・・」


「逃がさない・・じゅる・・獲物は最後まで・・」


「あ・・ああ・・畜生ォォオッ!!こんのぉぉぉッ!!」


聞こえる、堕舞黒君が必死抵抗している声が聞こえる。

なんて悲痛な声だろう、なんて涙声だろう。

普段はあんなにも威勢が良く誰にでも強く出る野郎だったのに。

今日は取り巻きするらやられてさぞ焦っている事だろう。

可愛そうに・・でも。


「グァァァッ!!クソがァァァッ!!」


「・・汚い花火だ」


宙に打ち上げられ怒鳴り声を上げる姿に俺は心の中で思った。

同情するぜ。


NEXT


おまけ


一方、もう一つの試合ではなんと時を同じくして決着がついていた。

そう、それこそテスト前の因縁と言わんばかり。

これもまた運命か、柳原君達の事を早く試合を終わらせてみていた人物。


1人はクルリと髪の毛を巻いて余裕をかます比叡。


「なんすか?アレが今度テストで負けちゃいけないダーヤマさんの実態?うわっ・・おっかねぇ・・」


1人は静かに観察記録を取りバインダーを持ってコートに入り声をかける霧島。


「ふん、あんなの俺達の相手じゃない・・それに今回は体育祭に向けてのデータ観察のみ、気にしたところでテストにはなんら役には断たん」


1人はその代表とも言うべき一人の美しい青空の様なキラキラ輝く髪。

サラサラとしたセミロングヘアー並みの長さで凛々しい瞳。

完全武装もせず、専用の露出が少なすぎる美しい体育着を着た。

あの山田会長の座を狙う者【海王咲】の姿もあった。


「まったく・・テスト前なのにはしゃいじゃって・・これだから自由人天才はお気楽でいいわね・・最も・・その天才の理由は他にあるのだけど・・」


「だとしたら・・やはり今度のテストで・・」


「ええ、それを崩す絶好の機会・・天才の裏にあるそれさえ崩せば彼女の支持も消える事でしょう・・そうすれば金剛・・貴方は必ず勝てるわ」


その声に反応するように向こうコート側を見つめる一人の少女。

白髪ロングヘアーに犬耳の様な跳ね、そしてじっとりした目つき。

褐色が目立つ体育着。

彼女こそ四天王かつ。

体育最強と言われた【南海(なんかい) 金剛(こんごう)】である。


「見ておきなさい金剛、アレが今度のターゲットよ」


「ターゲット・・リーダーの・・敵・・」


静かに見つめるその先に静寂の殺意のオーラ。

それは少しばかりだが、一人柳原はどこから感じる寒気を感じていた。

その始まろうとしていた大きな野望の気配に・・ひっそりと。




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