第五十二話 「ハンドルを握ると人は変わるってよくあるよね」
なんやかんやあって二回目の試合。
今度こそは山田を動かさない方針で俺らのチームは事を進める。
今度山田が動けば、この競技・・いや球技もろともお蔵入りが決定する。
それはもはや理事長にテスト以前に顔向けできない。
と言うわけで絶対にここは俺と武蔵でどうにか点を取りに行く。
「いいか山田絶対動くなよ?絶対だぞ・・これフリじゃないからな・・」
「りょーかーいー!!」
「何ウォーミングアップしてんだよ!次負傷者出したらお前今度こそアウトだからな!色々!」
「大丈夫!大丈夫!私は動かなければいいんでしょ?」
「・・そうだけどさ」
「なら大丈夫!任せてよ!」
不安だ・・山田の笑顔は裏に何を隠しているかサッパリ分からない。
こうなれば早期決着が望ましいな。
武蔵に全てを託して俺は山田をマークしておくしかない。
なんだろう、俺は誰と戦っているんだろう。
敵が向こう側なのにどうしてこう味方が敵なんだろう。
分からない、サッパリ分からないぞこの状況。
「(この会長さんほっとくと俺の出番がまた取られるからな・・攻めつつ様子みとかなければ)」
「(安心しろ武蔵・・幸いにも山田から動きがあるとは感じられないむしろ好機・・相手もあの三年最弱の【堕舞黒 半田】だ・・勝利は確実だろう)」
「(クソデブか・・了解だ・・俺もアイツの弱さは耳にしている)」
堕舞黒 半田とは。
三年でもっとも弱くまた害悪な存在とされている者。
取り巻きの連中は半田が餌付けで仲良く見えるだけの遊ばれているだけである。
また、これでもかと言うくらい体系がこれまたふっとい。
お荷物とでも言いたくなるようなそのデカさは半端ではない。
おそらく家が裕福だからよっぽどの生活をしているのだろう。
「ま、この際アイツの事はどうでもいいさ・・問題はやはり山田・・」
いつまでも不安になってしまうくらいやはり山田を気にかけてしまう。
そりゃそうだろうよ、山田が俺にとってこの上ない不安要素だ。
出来れば何も起こさずその場でじっとしていてほしいくらいなのだが。
それが叶うとは信じがたい。
「(だからこそ・・頼むぞ・・武蔵ッ!)」
「(なんだかすげぇ信頼の眼差しでこっち見て来るんだけど・・まあいい・・借りを返すにはちょうどいいんだ・・俺が決めてやるぜッ!)」
『各チーム準備が整ったようなので・・試合開始!』
試合開始の合図と共にホイッスルが鳴り響く。
さあ、運命の第二試合目・・いざ、幕を開けるッ!
「さあぁぁぁぁぁッ!!!地獄の血祭パーリィナイトの始まりダァァァァッ!!今日という日に感謝しろ・・このゴミムシ共ガァァァッ!!」
「(武蔵ッ!?)」
「(むっちゃん!?)」
このフィールドに立っていた山田と俺が唖然としてしまうほどそれは突然起こる。
そうだ、俺はもう一つある意味で脅威の存在を忘れていた。
武蔵はこういった物事に対して挑む時は【性格が一変する】らしい。
理由は不明、そう言えばなんだか華蘭がさっきから不安の眼差しで見ていたと思えば。
今はもうなんだか「だから嫌だったんだよねー」みたいに頭を抱えている。
そうか、それで試合に出る事に抵抗があったのか。
確かにこの恐怖面は相手に見せたくはない。
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その頃、藤宮は
「xってなんだよxってさ・・数字じゃないじゃん・・なんだよコレ・・」
まだ悩まされていた。




