第五十一話「山田の弱点」
「きっくん、きっくん!」
「ん?どうした山田」
山田が何か言いたげに呼んでくるぞ。
なんだろう、特にいい予感がしないけど。
一体何を言われるのだろうか。
「せいやぁぁぁッ!!」
「うおぼぉぉぉらぁぁぁ!!!あぶねぇぇぇッ!!」
それはまさに神風の様に凄まじい速さの一撃。
山田の方へ振り向いた瞬間照れながら笑顔で放たれる右手ストレートの一撃。
もし、当たっていたら俺の肋骨の五、六本は折れた事だろう。
危なかった、俺でなければおそらく見切れていないことだろう。
「どういうつもりだ・・山田ァ・・」
「いやぁ・・呼び捨てされるの照れ・・」
「んなわけあるかァッ!!お前のクソッタレ脳みそは一体どういう思考してやがるッ!!」
この山田にはどうやら一度本当に加減とやってはいけない事を教えなくてはいけない。
つねろう、今日は思う存分つねってあげよう。
「にゃひぃぃぃ!!そほはらめッ!ひっはっはららめ!らめなほぉぉぉッ!(そこはダメ!引っ張ったらダメ!ダメなのォォ!)」
「貴様には一度一方的な痛みを知る必要があると見たのでこの頬つねりの快楽に溺れると良い、ほれどうしたどうした!お前の弱いところはここかッ!」
「あ、あんまりひっはらへるほわ、わはひほわれひゃうのぉぉぉッ!!(あ、あんまり引っ張られるとこわ、壊れちゃうのォォォッ!!)」
「(バカップルがまたイチャつき始めた・・)」
「(愛の鞭って奴だね!)」
「(いや、違うだろ)」
頬をつねりすぎたのか、なんだか山田に余裕の表情が見られるな。
くそう、山田の野郎は俺を段々おちょくってやがる。
どうしたら・・。
「(そうだ!頬以外にもあったわ!弱いところ!)」
「あへ・・なんで急に頬つねり止めるの?今とっても気持ちよかったところなのに・・」
「(えっ?ドМなの)」
「(むしろそれが山田ちゃんだから・・)」
「いやー・・ずいぶん気持ちよさそうだから・・これだとお仕置きにならないなーっと」
「そ、そんなー!焦らさないでよー!」
「(なんだか怪しい会話になっているんだが)」
「(これだけ聞くとなんだかいかがわしいわね)」
やばい、ちょっと焦らさせる事にしょんぼりとする山田可愛い。
けれどもこれは山田の弱点をつく為の手段にすぎない。
あともうちょっとだ、頑張れ俺。
「どうしてもやってほしければ・・自分でおねだりしてみなよ」
「うっ・・ええ・・えっと・・きっくん・・わた・・私に・・私の・・頬を・・もっと・・真っ赤になるくらい・・つ、つねってほしい・・です・・お願いしますッ!」
「(これ大丈夫か?)」
「(大丈夫でしょ、内容は頬つねりだから)」
「よしよし・・良くできました・・じゃあ目をつぶって」
「う、うん・・」
よし、完璧だ。
これで全ての準備を整えたら次にやる事はただ一つ。
両手を頬へ触ると・・見せかけて・・耳さわりだこのヤロウッ!
「ぴゃぁぁぁぁッ!!」
そう、コイツは死ぬほど耳が弱いから触れば一発で顔を赤らめる。
くすぐりの部類に入るが、もっとも弱い部分がこの耳だ。
「アッハハ!かかったー!」
「き、きっくんの馬鹿ァァァッ!!」
「ヴォォオァァァッ?!」
まあ当然避けられない最速の一撃が来ることは知っていたから。
コレばっかりはしょうがない、しょうがないんだ。
山田は耳が弱い、だが触れば命は無い。
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その頃藤宮は。
「・・サッパリ分からん」
数学の難しさに頭を悩まして言葉遣いが悪くなっていた。




