第五十話「俺に良い考えがありますよ」
「次の試合・・俺が先陣を切るッ!」
「急にどうした武蔵坊弁慶」
「会長さんそれ俺が別の人と間違われるから止めようか、歴史の人物になっちゃうからね」
「冗談、冗談だよ武蔵君」
「なら良いんすけど」
開幕早々なんの会話かよくわからないが。
とりあえずこの二人がカオスって事だけは了解した。
「で、なんで次の試合先陣を切りたいんだ?」
「ズバリィ・・俺この競技には自信がありますッ!」
「へぇ・・確かに強そうだもんな」
体格はともかくもしかしたら速攻で走り抜けれる風の様な走りをして。
相手にめがけて鋭い一撃を放つかもしれない。
壁などのコーナリングをかけたコースは特に敏捷を必要とする。
なるほど、スピード勝負で誰も負傷者を出さない作戦か。
その腕が山田の様な偽りの細い腕ではないだろう。
「ムサシン・・試合に出ようとしている?」
「ゲッ・・その声は・・」
ギャグマンガの擬音でも出て来そうな具合にギクリと驚く武蔵の後ろから声。
車椅子が静かにこちらに向かう音がするという事はクラス内どころか学園ではただ一人。
「やあやあ・・武蔵が世話になっているね~華蘭だよ~」
「やっぱりてめぇか」
「あ、城ケ崎さん、どうも」
「ちょいちょい~城ケ崎さんなんて堅苦しいのは止してくれ、私の事は気安く華蘭でいいよ柳原君」
流石は誰に対してもフレンドリーと呼ばれた女神城ケ崎さん。
この微笑ましい笑顔といい、軽そうに見えて優しく謙虚な声。
誰でも仲良くなりたくなるよな、それに簡単に呼び捨てにできないむずがゆさ。
これが男のチキンハートをまた揺さぶる。
シャイな子ほど呼び捨ては難しいだろう。
「ういっす、じゃあ今度から華蘭でおけい?」
だが、俺はピュアもシャイもとっくの昔に捨てたので。
ここは遠慮なく、呼び捨てさせてもらいます。
「う、うん・・たはは・・いざ呼ばれると恥ずかしいね、やっぱり・・相手が男だと余計・・」
なにこの子天使かな?
この照れ照れとした言いなれて無い感はさては背伸び女子。
いいぞ、実にそういうのも悪くない、頬を染めて実にそれらしい。
「あ、それは置いといて私としてはやっぱり武蔵君を試合に出させるわけには・・」
「おい華蘭・・」
「ランランパァンチッ!!」
「ブベラァァッ!!」
な、殴った!?
後ろから声をかけて来た武蔵を容赦なく高速で振り向いて右手ストレート。
腹に思いっきりいったから今のは効いたろう。
「な、何故殴った・・」
「だ、だって恥ずかしい・・」
「嘘つけッ!てめぇ今更そんな事言っても無駄だからッ!お前と何年この名前で呼んでると思ってんだよッ!」
「君には何度も説明しても止めないから仕方がなく受け入れてるんでしょうがァァァッ!!」
「ぼべあッ!!」
今度は頬へフック・・中々ないい動きだ。
車椅子に乗っているハンデを感じさせない凄まじくいい動きだ。
この二人、実は付き合っているかそれ相応に超仲良いって事だな。
羨ましいねぇ・・いつかそんな仲になってみたいな。
「(きっくんがあの二人を見つめて羨ましそうに・・まさかッ!!)」
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その頃の愛川は。
「作文のテーマができました!テーマは恋人です!」
「却下、てめぇの場合は方向性が違う」
「しゅん・・」
担当のディートリッヒ先生に作文のテーマをダメだしされていた。
もちろん内容は山田と柳原の恋話となっている。




