第四十五話「タイトル詐欺だなんて言わないで」
「いやいや・・今日も麗しゅう・・山田生徒会長・・」
「うわ・・まただよ、同じクラスだからしょうがないけどさ」
俺と山田が話している間に割り込むこのクソッタレの空気を醸し出す声はたった一人。
俺の感が正しければおそらく矢部だろう。
まあ、振り向けば当然矢部なのだが。
「誰アレ?」
「ヴぇぃッ?!」
「知らんのか?又兵衛だ」
「人を戦国の武将みたいな言い方止してくれないかぃぃ?」
コイツくだらん事で一々キレるよな。
なんでこんなちっさいことに一々反応するのだろうか面白い。
「きっくん名前を間違えるなんて又兵衛さんに失礼だよ?」
「そうだぞ、柳原君・・又兵衛さんに失礼・・アレ、今又兵衛さんに失礼?アレ僕は?」
「すいません、私菜の花の名前だったら憶えているんですが、薄汚い泥水の名前は一々覚えない主義なんです、本当にすいません」
「今さらっととんでもない事言ったねェ?!僕でも傷つくよそれは?」
そりゃあ、一年生の頃からストーカーの様に付きまとって。
果てには気に入った女に誰でも話しかけるからそうなるんだろうが。
むしろ本音だけをぶちまける山田に感謝しろと言わんばかりだ。
「で、結局誰なんですか?」
「だから矢部ってつってんじゃん!何回言えば分かるんだよッ!」
「長谷部さんですか?もし分けありませんが私の中の長谷部さんはすでに五人登録済みですので今一度苗字を変更するために転生してください」
「矢部ッ!俺の名前は矢部って言ってんのッ!!」
「なるほど」
「分かってくれたかい!?」
「矢部!俺の名前は矢部って言ってんのさんですね、今度から覚えておきますね矢部、俺の名前は矢部って言ってんのさん」
「いや、あのそれは名前じゃなくて・・」
「要件は終わりですか?ならさっさと私の前から消え失せてください矢部、俺の名前は矢部って言ってんのさん」
「クソがぁッ!覚えてやがれッ!!」
凄い、惨い、全国の男子が心を砕かれるハートフルボッコ会話だった。
あんな名前の覚えられ方どうやったらされるのか知りたい。
「お前、容赦ないな・・」
「ごめん・・引いちゃったかな?私・・本当はいい子じゃないの・・とっても悪い子なの・・ごめんね・・幻滅したよね・・」
何ちょっと今更な悲壮感のある感じ出しているの?
俺の前でそれやっても特にギャグにしかならないよね?
まあ、ネタフリはさておき、ネタに触れてやるとするか。
じゃないとコイツスネるし。
「おう、むしろ俺は好きだぜそういうの、あとお前がそういう性格ってのも知っている嫌いな奴にはとことん嫌いな行為を振りまき、好きな奴にはとことん好意を振りまく、俺は悪くないと思うがね」
「ダンナぁ!一生ついて行きますッ!」
「やめろ、くっつくんじゃねぇ」
本当にこいつの可愛いテンションは眩しすぎるな。
一緒にいて居心地がいいのが不思議なくらいだ。
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