第四十四話「驚くことでもない事実」
せっかく安心と安全性に兼ね備えた防具を見て不安が無くなったと思えば。
一体なんだ、先生の言う問題ってなんだ。
「実は・・かなり深刻な問題でね・・梅原君以外の生徒も良く聞きまえ」
「な、なんですか・・あと柳原です」
「実は・・」
「はい・・」
この重くなる空気、もしやこれを付けた生徒は何かデメリットがある?
な、なんという事だ、まさかそんな諸刃の剣の様な防具だったなんて!
「この防具・・つけると少し動きづらい」
『ズコォォォッ!!!』
これには周囲の生徒は総ズッコケである。
そっちかい、まさかのそっちですか。
いや、なんとなく防具という事で嫌な予感はしていたけれどもさ。
まさか、本当に動きが鈍い云々で問題が挙げられるなんて思っていなかったよ。
「というわけで、この防具は着けてもいいし、着けなくてもよい、『俺はマゾだから絶対にそんな防具は着けない』とか『男ならノー装備上等』などという者も大歓迎だッ!」
「なんの為にそれ作ったんだよッ!!」
「(今日のきっくんのツッコミの切れ味最高だわ・・)」
ダメだ、毎回思うけどこの人も何考えているのか分からない。
ここの教師は一体どういう関係とどういう思考で成り立ってんだよ。
もう、それにツッコんだに負けな気がしてきた。
「それでは各自準備が終わり次第、私に報告ッ!もちろん!三チーム製作が終わってからだぞ!」
「結局グダグダのまま話し終わりかい・・畜生今日も今日とて意味不明だ・・」
「まあまあ・・あの先生は私達の入学時からあんな風に意味不明だったじゃない」
「そりゃあそうだけども・・防具の意味よ・・まあ、俺は着けるけども」
「私はいいかなぁ・・動きに支障が出るのは嫌だし・・」
「いや、お前は着けるべきだろ・・」
「えっ?なんで?」
出たよ、自覚無しか。
山田は屈指の体育馬鹿、と言うより頭良くてこの細い腕で怪力の様な力があるからな。
三年Cの不良女を仕留めたってのも納得だ。
信じられないかもしれないが、こんな可愛いロン毛と顔してコイツは化け物並だ。
俺はコイツと敵になる事だけは絶対に避けている。
なんにせよ生徒会の会長ともあろうお方がこんなところで変にやらかすわけにはいかない。
ここは上手い事口車で防具を付けて貰わなければ。
「俺はお前に怪我してほしくない、相手のボールで俺の大切な親友の山田にかすり傷一つでも負わせられるのはごめんなんだよ」
「お、俺の大切な山田なんて・・何を言ってんのよ~きっくん!」
「おい、親友が抜けたぞ」
何をまた両手で頬を抑えて照れ照れしてやがる。
コイツと来たらいつもこのテンションだから困る。
「まあ・・きっくんがそこまで言うなら・・着けなくもないかな~・・べ、別に貴方の事が好きだから・・着けてあげるとか・・そういうんじゃないんだからね!私は貴方の事全然好きなんだからね!勘違いしてよね!」
何を一人でツンデレマニュアルごっこをしていやがる。
俺はそれを気にせずそそくさと防具を付けていたがな。
さっさとのこの手にある山田の分の防具を渡して付けさせないとな。
「へいへい・・テンプレのテンプレのマニュアル通りのツンデレはさておき・・防具を付けてくださいよ、隣の山田ちゃん」
「うぅ・・きっくんに放置プレイさせられたぁ・・およよ~」
「周りを誤解させるような一言を述べないッ!!」
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