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第四十話 「怒りの狂犬」

ガッッッ!!


俺が苦悩の果てに頭が痛く右手で顔面を抑えてため息をついていた所。

その時、まるで俺とマリア先生の心を理解したかのように救世主は現れた。

その救世主は俺も良く知る人物、白髪の癖毛が目立つ鋭い目つき。

右手で横にあった机をめり込ませるほどの強烈な一撃の拳。

アイツだ・・マリア先生を守る狂犬とも呼ばれている男【早乙女(さおとめ)武蔵(むさし)】。

三年生の中でも屈指の目つきの悪さとその風格の悪さから嫌われ者というより。

近寄りがたいイメージを持たれているのがある事で有名な彼だが。

その裏にはこのマリア先生を守り通すと言う強い意思の現れから出ているのである。


「似非金髪野郎ォ・・てめぇまたマリアァ先生にちょっかい出してんじゃねぇよ」


「ンヒィッ!!む、武蔵君じゃないかぁ・・僕は何も迷惑はかけていないよぉ?」


「パチってんじゃねぇぞパツキンの糞野郎、てめぇが数分でマリア先生を困らせている事はもう上がってんだよ・・害虫ッ」


「サ、早乙女君・・ナニモ害虫ハアンマリデハ・・・」


「センセェ・・コイツは親のコネで将来就職を考えている腐れゴミ野郎だ、こんな奴いつまでも甘やかされてると一生変わる事はできない、だからこそ周りが教えてやるべきだ、間違った事も正しい事もだ、でなければ一生コイツは間違ったまんまなんだよッ!!」


「(相変わらず変わらんなぁ・・言ってることは分からんでもないけど)」


早乙女自身の正義感が矢部の様な強引な奴を許さないのだろう。

だが、それは時には人を誤解させてしまうほどの恐怖になってしまう。

哀しいことにどれだけ強く訴えても周りからしてみれば。

【なにこの人、なんで怒っているの】ぐらいにしかとらえられない事が多い。

特に支持もされていない奴がやれば独りよがりと言ってもよい。

こうして怒鳴り散らす声に周りも引き気味に。

まずいな、このままではこの醜態を野放してした事が問題視されてしまう。

なんとか止めに入りたいが下手に相手を刺激するわけにはいかないし・・困ったな。


「大和ッ!そこまで!」


「か、華蘭ッ!?」


「(お、保護者来た・・)」


忘れがちだったがそうだ、この暴走機関車を止めるストッパー、言うなれば保護者こと。

城ケ崎(じょうがさき) 華蘭(からん)】さんだ。

茶髪の地毛、ストレートに前髪の謎のアホ毛らしき髪。

しっかりと整えられた制服を着て、真面目な感じが一目で分かる。

ファーストコンタクトがしっかりととらえられる人。

普段から足が怪我で動きにくく車椅子で日常を過ごしている。

さらには右目は開いているが実は盲目らしく見えない。

なんとも怪我が多くひどくハンデが多いが、こうして学校に通うあたりかなり健気だ。

早乙女とは幼馴染でいつもこうして怒り狂う彼を止める役目をしている。


「ダメでしょ?そうやって自分の正義感に捕らわれてみんなを怖がらせる様な真似しちゃダメだって・・前に言ったじゃない!」


「け、けどなぁ!相手はあの矢部・・アレ?矢部は?」


なんと素早い逃亡だろうか。

この一瞬で奴はなんとこの教室から撤退していたのだった。

俺も一瞬城ケ崎さんに気を取られて全然気づかなかった。

野郎、ずいぶん早い逃走だ、素晴らしい逃げ足だことで。

問題が起きる前に片付いて良かったが、また奴を逃してしまった。

結果としては良くもあり、悪くもある結果だ。


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