第二十八話 「不安」
「ふぅ・・お風入るとやっぱりサッパリするぜ!」
時間も午後9時と夜の時間へと変わっている。
今日はとても忙しい日々だったゆえに風呂上りはとても気持ちいモノだ。
やはりお風呂に漬かると疲れが癒される。
1日苦労した後は特にこれだよな。
さて、後は冷蔵庫から冷たく冷やしてある麦茶でも飲もうかな。
これを透明なガラスコップに注いで俺はいつも飲んでいる。
たっぷり入れるのではなく、半分くらいがベストだ。
「・・・プハァッ!!生き返るわ!やっぱこれが最高だわ!」
「お兄ちゃんお風呂から上がったの?」
「ん?苺か?」
「相変わらずそのジャージが寝巻なんだね、お兄ちゃん」
ふと後ろから声がしたので振り返ればそこには妹がいた。
妹は先に風呂に入っていたからよりみずみずしい肌をしている。
寝巻は女の子にしては黒色のショーパンに半袖と暖かな5月にはもってこいだろう。
スタイルいいからまた露出すると大人びた感じが出てしまうな。
俺なんていまだに黒ジャージ長袖長ズボン・・いつまでも子供っぽいな。
男とは心底辛い生き物だ。
「一様このジャージ気に入っているからね、着やすいんだよ」
「まあ、自分が一番過ごしやすい姿が良いっていうもんね!分かるよ、その気持ち」
「お、分かってくれるか流石は苺だ」
「あたりまえだよ~・・もう何年お兄ちゃんと一緒の生活したと思っているのさ」
「俺が中学2年の頃からかな?失敗も多かったけど今は安定した生活が送れてるよな」
「うん!楽しいことも辛い事も・・哀しいことも嬉しいことも全部・・お兄ちゃんと乗り越え歩んでこれた・・これからもきっと乗り越えられるよ!」
「おう、これからも二人・・やみんなで頑張ろう」
こんな可愛いくて健気な妹と過ごしたのももう4年間になるのか。
早いな・・4年の月日はあっという間だった。
その間に沢山の思い出ができているのに・・俺の想いではまだまだ増えそうだ。
人生ってのは生きてみると良い事あるもんだ。
単に俺が恵まれた環境にいただけかもしれないがな。
「・・そういえば愛川は?」
「寝ちゃったよ、凄い眠そうにしてたからお布団敷いて寝かせてあげた!」
一体これどっちが後輩でどっちが先輩の関係か分かんねぇな。
いや、愛川が先輩で苺が後輩の関係は変わりは無いんだけどさ。
「ねぇお兄ちゃん・・」
「ん?なんだ苺」
どうしたのだろうか?
苺が急に改まる様に静かに話しかけて来たぞ。
これ、もしかして重い話が始まるパターンか?
「来年の3月・・だよね」
「ん?・・あ、そういえばそうか・・」
なるほどな・・コイツもやっぱり覚えていたか。
今、わざとらしく忘れていた様に答えたが実際は違う。
俺も覚えているよ、来年の3月の事ぐらい。
覚えているからこそ、俺はあの発言を口に出来たんだろうな。
そう、来年の3月は俺たちはもうここにはいない。
行かなくてはいけない、父親の下に。
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