第二百二十二話「元軍人ここに降臨」
「な、なんだアレッ?!」
とっさに見ただけでは先ほどの奴とは比べ物にならない。
完全に暴走個体か何かだろ?!
「驚い暇はねぇッ!来るぞッ!!」
「RUSYAAAAAAッ!!」
ズガシャァァンッ!
とっさに散らばり避ける俺達三人・・。
でも、俺も自分の事で精一杯だったから流石にみんな事までは見ていない。
どうなっているだろうか。
「姉さん!ディートリッヒ先生!」
「私は無事だッ!菊は?!」
「大丈夫!怪我一つ無し!」
とりあえず姉さんの安否は確認できた。
だが、問題はディートリッヒ先生だ。
まさかだとは思うがあのイプシロンの餌食になっていたりしないだろうか・・。
「全く・・獰猛な動物な事だ・・ッ!!」
ブォォンッ!!
凄い、あの状況で両手で抑えて攻撃を防いだ後投げ飛ばした。
何気に猛者なディートリッヒ先生・・元軍人は伊達じゃない。
「ここは俺が引き受けよう、お前らはさっさと早乙女の野郎見つけて来いや」
「ディートリッヒ先生一人でコイツを?!」
「無茶だ!そいつは私が戦った時よりもはるかに強い!」
見た目もそうだが、あからさまに人より殺気のレベルが段違いだ。
奴はこの世の違う何かになっている。
この状況でアレと戦うのは無謀の極みだ。
「黙って行け、こう見えて俺は戦闘狂相手に三万と相手している・・こんな奴訓練を受けた犬っコロより楽勝だね」
案外まだ余裕があるディートリッヒ先生に見えるが。
俺には分かる。
ディートリッヒ先生の両手が震えている。
先ほどの衝撃がまだ残っているんだ。
次、あの激戦に巻き込まれたらきっと一たまりもない。
俺は今、止めるべきか?
それとも一緒になって戦うべきか?
いや、けれども。
ディートリッヒ先生は一度決めたら相手になんと言われようと曲げない。
意思の固い先生・・ならば俺は止める事するんじゃない。
俺が今、先生の為になる事ができるとすれば。
それは・・早乙女先生見つけて帰るッ!
ただ、それだけだッ!
戦う事が全てじゃない。
そうだ、今自分がすべき事はそうじゃない。
状況を見誤って全滅するよりも。
誰かを信じて、全員で生還する。
人生はゲームだ、リセットもリセマラもできない。
果てしない過酷なゲームだ。
そのゲームに一つの勝負を賭けるッ!
これはコンティニューなんてモノはない。
失敗すればそれまで、そん時はそん時だッ!!
「先生ッ!絶対に一つだけ守ってください!」
「なんだッ?!」
俺はこうなった以上全てを先生に託す。
だからこそ、先生の顔を真剣に見て。
この一言を託すッ!
「先生、必ず生きて帰って来てくださいッ!!」
「・・楽勝すぎるな、了解だ・・小さい隊長さん・・俺に任せろ」
「先生ッ!!」
引き締まる背中に。
バッと伸ばされた手に全てを悟った俺は。
その合図と共に近くの階段で下層へと降りる。
続けざまに姉さんも俺の姿を見て上層へと上がる。
それぞれの意思が繋がれた大決戦。
終幕の時は・・近いッ!!
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