第二百二十一話「情の英雄」
「ようこそ・・まあもうすぐここ爆発すんだけどさ」
「ああ?!マジかよ?!」
ディートリッヒ先生が驚くのは無理もないが。
俺と姉さんはこの手のありがちな展開にはもう慣れっこだ。
涼しい顔でふざけた事を・・流石はテロ組織の言う事は壮大かつ。
清々しいほどの悪魔のお手本だ。
我が一族の手で無期懲役を喰らっても文句はあるまい。
「あー・・めんどくさいなー・・説明するのもメンドクサイよ・・文字に起こすのも・・喋るのも・・そういう思った事全部伝えるのがめんどくさい」
「俺はお前みたいなのがいるのがめんどくさい」
「アハハ!流石は情の英雄・・いう事が違うね?」
「情の英雄?」
謎めいた発言が多い上に。
コイツ、コロコロ感情が上がったり下がったり。
本当にメンドクサイ奴だ。
にしても情の英雄ってなんだ?
「予言書【アダムとイヴ】の予言にはこう書いてあった・・【八人の反英雄】が作る世界はそれぞれ特徴を持った英雄が存在し、世界のバランスを保たせる役割を持っている・・そいつらは存在の概念を作り・・そいつが特異点となる、簡単に言うと・・お前は世界の中心って事だ」
「私の弟が?」
「だったら残念だな・・俺はそんな器の人間じゃない」
「自覚がない奴は嫌いだよ・・君はすでにそういう立場なんだ・・」
また表情を変えた・・今度は画面越しに上から目線。
「いいかい、君は情の英雄・・このほかにも反英雄と呼ばれる者がいる・・アダムとイヴ曰く・・【絆の英雄】【戒の英雄】【義の英雄】【輝の英雄】【豪の英雄】【暁の英雄】【麗の英雄】の七人・・お前はその八人目に属する【情の英雄】だ」
「八人・・俺以外に当てはまる野郎がいるって事か」
「そゆこと!理解した?」
「全然、俺はやっぱりその器に入らない・・」
「・・あっそ、理解のない馬鹿は嫌いだよ」
俺もお前が嫌いだ。
なんだかよく分からない事ばかり。
そんなファンタジーでもなければ。
SF小説でもないこの世界にそんな現実離れな出来事あるか。
俺は断じて耳にしたくない。
そんな事・・そんな人達がいてたまるか。
何一つとして信じたく・・ない。
「・・どうでもいいが、何故今その話をした?」
「ん?ああ・・そりゃあだってさ・・時間稼ぎ・・必要じゃん?」
「時間稼ぎだ?・・ッ?!」
ドォォォォォォォォッ!!
天井を突き破り落下して来た謎の衝撃ッ!!
黒い煙を目に入れぬように瞬間的判断で腕で防ぐ。
・・煙が晴れて見えるは・・あの時の少女?!
でも体が全体的におかしい?!
赤く光るラインが作られ、謎の黒衣装・・ラバースーツじゃない!?
例えるなら破られた布で作られたドレス。
そして・・白い目が黒く赤く光る悪魔目。
間違いなく人ではない・・何かだ。
もはや白く染まったその髪の毛から。
薬品に捕らわれた者としか思えない!!
「クァァァッ!!」
「こいつは・・やべぇな」
「クッハハ!!作戦開始ってな・・じゃあまた今度詳しい話とかしようか・・もちろん・・生きて変えれたらなぁ!!」
プツンッ。
全てはこの状況を作る為の無駄哲学ってわけか。
なるほど・・一杯食わされたな・・これは。
こうなったら思う事は一つ。
絶対に生きて・・アビスの連中一人残らず。
「絶対に・・この手で滅ぼすッ!!」
心の中に決め、その一言を俺は叫んだ。
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