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第二百十九話「再開の鬼」

「ここが・・タランチュラ本部ビル・・」


「なんて大きな・・」


新宿にそびえ立つ大きな謎の六角形のビル。

白く、その中からは悪魔の感じが感じ取れる裏企業の匂い。

間違いない、この中に何か隠されている。

俺は今回その隠されている悪魔と戦わなければならない。


「・・でも、一体なにと・・」


「クソガキ、てめぇも来てたのか」


「えっ?!」


この声にはとても聞き覚えがある。

どこかで聞いたことのある声は振り向かなくともすぐに分かった。

その声はディートリッヒ先生の声だ!

どうしてここにいるのかは全く分からない。

けれども、俺には分かる。

ただ、こにいるわけじゃないと。


「先生ッ!」


「先生?」


「あ・・そうか姉さんは初めてだったね・・俺の学園の先生のディートリッヒ先生だよ」


「・・なるほど・・教師面という人相ではないが・・弟が世話になっている」


失礼な言葉をのべつつも静かにお辞儀をして。

お礼の言葉を述べる姉さん。


「いえいえ、もう世話はしていない、今日も職務を解雇されてからニートおっさんだよ」


軽くそれを返す余裕のディートリッヒ先生。

なんか解雇されたって言うのにテンションいつも通りだな。


「(相変わらずだな・・ディートリッヒ先生)」


「それはそうと・・そんな先生がどうしてここに?」


「知るはずもなかっただろうが・・まあいいさ」


急に静かに真剣な顔になるディートリッヒ先生。

確かに何故こんな場所に来たのか自分にだって分からない。

一体、どうして。


「助けに来たんだよ早乙女の野郎」


「早乙女・・武蔵?」


「いや、もう一人・・保健室の方」


「そっち!?」


衝撃の事実だった。

まさかディートリッヒ先生は連れ去られた早乙女先生の方を助けに来ていたとは。

でも、そんな情報一つも入って来なかったけど・・。


「い、いつ連れ去っていかれたんですか?」


「今日のデート中」


「しかも今日かよ!」


「なんと運の無い人だ」


「良く言われる、まあなんだ・・アイツが慰めにメールとか送って来てくれてさ・・それで気まぐれで付き合ってやろうと思えばこの様・・まったく不運だね、いつのまにか大爆発は起きるし・・少し離れたら早乙女の野郎はいないし・・嫌になっちゃうね」


「先生」


「おまけに・・堕舞黒と息子って野郎の予言通りになっちまったし・・」


「予言?」


「もし、俺達が早乙女の野郎を拉致されたくなかったらお前を殺せって命令・・まあ当然断ったけどな、早乙女の野郎だって大事な女だ、けどそれ以前に生徒一人守れない教師なんぞ・・俺の教師理念からは離れてんだよ」


「・・先生」


俺は・・先生の真剣に語るその目に光が見えた。

とても苦しく、辛く、ずっとまともに話せなかった先生に。

ようやく、その裏を聞ける事ができた。

なんであの時、堕舞黒と息子に躊躇なく暴力を振るったのか。

自分がもし狙われる事になるくらいなら軽いと自己犠牲を払い。

おまけに学園からも姿を消した。

そうする事で俺を殺す命令から堕舞黒の作成にも関わらせない様にしたんだ。


ディートリッヒ先生・・そこまで。


「じゃ・・じゃあ、なんで昔・・暴力であの場を解決したんですか?!」


「ああ・・アレもほぼ同じだった、俺が優しく土下座もしてやって頭も踏まれてやったのに、アイツらからでた答えはこうだ。


 ◆


『そうね、貴方が死体となったあの子を持って来てくれたら謝ってあげない事もないわw』


 ◆


「笑いながらそいつらは人の命を馬鹿にしたんだ、俺は・・俺はそいつらの事が許せなかった・・一人の生徒の為にあそこまでかばったお前の雄姿をずっと影から見ていた者としても・・立派に育って今を生きるお前も・・裏切る事はできなかった・・軍事の時沢山の命を奪ってようやく分かったんだ・・教師の仕事をして・・命を明日につなげられる仕事ってのは・・こんなにも幸せなんだと・・命を繋げるってのは・・奪うよりも難しいんだって・・」


ディートリッヒ先生は全てを思い返す様に泣き崩れる。

鬼の形相が多かったあのディートリッヒ先生が。

泣き顔を抑えているのはこれが初めてだ。

話すごとに涙は止まらない。

それほどまでに苦しい思いを背負って来たのだろう。

誰だって一人は嫌だ。

だから俺はポケットの中の使ってない予備のハンカチを渡し。

こぼれる涙を拭かせた。


今、初めてディートリッヒ先生という人が帰還した。

そう思えたんだ。


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