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第二百十八話「最後の微笑み」

Dウイルス。

その実態は【体に全てを破壊する力を投与する薬】である。

単純かつその分かりやすい説明から実に危険な薬品である事が分かる。

それと同時にこのウイルスはそう簡単に使えたモノではない。

見た目こそ皮膚が黒くなり、目が黒目に赤く光り。

化物の様な笑いで全てを破壊するまで止めない。

さらには一分以上という制約のあるGSウイルスと違い。

彼女のは本気で危険な薬品である。

使えば体に死をもたらし、最悪の場合は暴走し続ける。


どちらにしろ若い彼女にとってこの最悪の決断になる事は確定だった。

それをゴッドは今この場で使わせようとしていたのだ。

シグマが止めるのも無理はない。


「そいつは・・俺達・・アルファが来る前・・ずいぶん気弱で・・情けなくって・・でもほっとけない・・そんな奴だったんだよ・・お前ら他人とっちゃ今あった初対面のどうでもいい奴かもしれねぇけどな・・私にとっては・・大切な後輩であり・・大切な仲間だ・・」


「知るか、コイツは俺の作った被検体でありお前もその玩具にしかすぎない」


「ふざやがってぇぇぇ・・」


もはや怒りの声も小さい。

枯れ始めた声にもはや叫ぶ余力無し。

彼女の命すらも危ないのである。


「ああ・・ああ・・シグマ・・さん」


自分の事を大切に思ってくれる心の優しい言葉に打たれ。

不安になり、涙をボロボロ零すイプシロン。

そこに蛇はまたニヤリ微笑む。


「おお、そうだな・・お前がそいつで暴れてくれるんだって言うんだったらよ」


「へ・・っ?」


「やめろッ!そいつの・・言葉を聞くなッ!」


必死に叫ぶシグマの声は彼女の耳元には届かない。

もはや、今の彼女にとってはどんな救済でもいい。

シグマの役に立てるのであれば。

自分はどんな方法でも言われたとおりにする。

ただ、それだけの状態だった。


「イプシロン・・暴れてくれるんだったらよ・・救ってやるよ・・あのゴミクズ」


「なっ?!」


「本当ですか?!」


「止めろッ!イプシロンッ!やめろッ!!」


甘い言葉に歓喜してしまうイプシロン。

もはや彼女の行動に誰も止める事はできない。


「ああ、やってやるよ・・」


「・・なら私・・やります・・Dウイルス・・投与して・・暴れ・・倒します」


「やめろォォォォォッ!!!イプシロォォォォォンッ!!」


叫ぶ声虚しく。

その声は何一つ届く事無かった。

彼女がハッと最後にイプシロンを見た光景は。

優しく微笑み、シグマを見て。

まるで口の動きから【さようなら】と告げるように。


彼女はその一言だけを述べて。


ウイルス装置に手を伸ばして。

蓋を開けて番号を入力する。


そして、Goのボタンを押し。

風が吹き荒れ、彼女の体がウイルスに浸食される。

絶望の最果ての光景。

苦楽を共にした二人の友の命を奪ったと思ってしまいたいぐらい。

それほど自分は罪深き人間だと、心に語るシグマ。


そこに立っていたのは・・見るもおぞましい化物になったイプシロンの姿だった。


「イッテキマス・・」


「おう、行って来いよ」


静かに歩き出した彼女が向かうは柳原達を阻止するためにロビーへと向かう。

全てが出そろい始める絶望の終盤戦。


物語は一気に加速する。


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