第二百十七話「絶望か希望かそれとも・・」
「まあ脱獄なんぞいつでもできる・・それにワイの計算通りなら・・もうちょっとで面白れぇ奴に会えるはずなんだわ」
三人全員が一緒に入る透明な強化ガラスの大部屋牢獄。
椅子に寝そべり余裕の表情のオメガ。
「面白い人?誰?ガンマより面白い?」
「プサイ様はいつもガンマ大好きだもんな、お前からしてみればガンマよりは面白くはねぇだろうけどよ」
「別に好きじゃない」
「俺的には面白れぇ奴なんだよ、俺的には」
無表情に顔一つ変えず。
ただ足をブランブランと暇をもてあそぶプサイ。
「じゃあ私的には?」
「もっとつまらんだろうな、だって多分純愛に生きている者だ」
「なーんだ・・心と血がある人かー・・」
「そういう奴は手を出さないこったな・・恨まれるのは男だけとは限らないぜ」
「かもねー!でも狙われたら・・それはそれで面白そう!」
「ウプシロンちゃんはここで暮らす事をキボンヌ」
「ええー?!なんでなんで?!」
逆にウプシロンは一々表情を変える。
彼女の場合好きな事以外脳内には入っていない。
分かりやすく楽しそうにし、分かりやすく怒る。
最も感情がハッキリしている。
「(ま、こいつらがどうするかまでは俺の知ったこっちゃないがな・・さてさて・・かの有名な英雄様はどちらに味方するか・・神か人類の味方か・・はたまた・・生命悪の味方か)」
頭の中でまた静かに考え込むオメガ。
そのニヤリと笑う顔の奥には一体何枚の仮面が仕込まれているのか。
誰も知る事はない。
◆
一時変わり、再びゴッドとイプシロンのいる部屋。
ここではさらなる悲劇が起きていた所。
それはゴッドがあの計画の指示をボスから受けていた時のことである。
「あ?俺とクローバーだけで後始末だ?正気の沙汰とは思えないな・・」
それはこのビルの廃棄の話。
ただ廃棄するだけではなく、彼らの言う被検体全てと。
部下を巻き添えにした非人道的行為を行う作戦の指示。
これをどう遂行するか、今この男が考えていた所である。
「・・めんどくせぇ・・いいよ、やるよ・・その代わり・・後でアレをたんまり送っててくれよ・・そうすりゃあ金も弾んでやるよ」
金と何かを引き換えに計画が始まる。
窓ガラスに背を向けて再び歩き出すゴッド。
その先にいる、イプシロンに向かい歩く。
「ひぃ・・ひぃぃ!!」
「や、止めろッ!イプシロンに・・手を出すな!」
「ケッ・・何もできねぇくせによ・・」
「んだと・・」
怯えるイプシロンは涙を流してただ物陰に隠れる。
それを上から見下す様に見るゴッドがこう言った。
蛇が睨み、毒を吐いたかの様に。
「おい・・イプシロン」
「は・・はい?!?!」
ゴッドが壁に手を当てて頭を掴む。
逃げられない様に完全に包囲したイプシロンに。
彼は洗脳するかのように言う。
「てめぇの【Dウイルス】を使え、制限時間は気にするな」
「わ・・私が?」
「待てよ?!」
「なんか文句あっか?」
ゴッドが脅す様に脅迫をしかける事に納得のいかないシグマ。
それもそのはず、そのウイルスを投入し時間無制限で使えば。
間違いなく【死ぬ】のだから。
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