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第二百十五話「被検体は人として生きられないのか?」

「ど、どういう事だよ・・い、今・・目の前にいた・・あ、アルファが」


それは瞬間的に起きた出来事。

脳裏には彼女と過ごして来た十年間の思い出が蘇る。

まだ若い3歳の頃から被検体として生きて来た彼女達にとって。

近くにいた彼女の存在はより大きいモノだった。

アルファとは本当に数年間ずっと一緒に苦楽を共にし。

上司に殴られる辛さ、失敗の恐怖、空腹で死にかけたあの頃。

拷問練習と言うの名のただの性的暴行と暴力の容赦ない行為。

全て彼女と人生を共にして来たのにも関わらず。

その全てを、今・・この瞬間消し飛ばされたのだった。

たった数秒で死に、お別れの言葉さえも言えず。

ただ、その皮肉も嫌味も言えていた唯一無二の親友を殺されたのだ。


ただ苦しそうにもがくアルファは肉となり死に。

最後に助けさえも呼ぶ声聞かずして死ぬ。

これは、どんな事よりも辛かったはずだ。

誰にも助けられず、誰も助ける事ができず。

ただ、遊び道具にされるがまま殺されたのだ。


「あーあ・・貴重な十年間育てたサンプルが消えたか・・まあ、元々いらねぇしな」


人が死んだというのに血も涙もない一言を述べ。

余裕の表情をするゴッド。

これにはシグマは襟をつかみ怒りを露わにする。


「どういう事だよッ?!なんでアイツは死んだんだッ?!」


「なんでって・・そりゃあお前、てめぇら被検体が付けてるそれはな?てめぇらの肉体と同化してんのよコレが・・で、つまりどういう事か・・着けた時に微妙に痛みを感じる時あるだろ?あん時さ・・お前らの腕に無数の人工触手が腕に張り巡らすのよ・・様するに根っこの様なもんだな・・」


「ま・・まさか・・」


「つまり強引にひっぱたき取れば・・生きる機械は暴走する・・体内に触手を放置したままにすると無限のウイルスが入り込み・・この試験管に入っているウイルスも体内の中で触手と共に増加・・つまり、体はもうそれはそれは暴走・・たちまちこの肉塊になるってわけだ」


「ふざけんなッ?!じゃあ、つまりこれって悪魔の兵器って事じゃねぇかよッ?!んなもん取り付けんなのよ?!私達は人だぞ?!」


「機械で生まれて来ただけ感謝しろよな、お前らなんて所詮生きる奴隷であり、被検体だ・・てめぇらなんざ金に変わればもうどうなろうと知ったこっちやねぇんだよ、変わりはいくらでもいる、嫌なら逃げても構わないぜ?その後は面白おかしく殺してやるからよ?ハハハハッ!!」


これは非現実でも無ければ彼女達にとってアニメでもない。

まさにこの現状こそが全ての現実であり。

今起こっている事は紛れもない事実。

人が死に、自分達は悪魔に玩具にされている。

機械から生まされたこの体は、ずっとずっと。

この殺戮計画と金儲けのために生まれてきただけ。

実験の為に必要な体であり、人としての生き方すらさせてもらえない。

ただ、自由のない絶望の運命を歩かされていた者達だった。


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