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第二百十三話「喜怒哀楽に生きれる人」

驚愕の事実の前に放心してまう比叡。

周りは心配そうに見守る動物達、ただ比叡を見つめ観測するミルクレープ。

あの敵側である四虎琉ですら唖然。

ありのままの光景にどうすればいいのか分からない四虎琉に。

クローバーから一つのミッションが下される。


「さて・・茶番は終わった事だし・・そろそろ本格的に片付け始めようか・・四虎琉君、まだ隠し玉があるはずだよね?」


「えっ!?あいつらをここで投入すると申されるのですか?」


「試作品がここで成功すれば今堕舞黒の野郎が消費している人員をここで養える・・さあ!今こそ・・・君の科学力の結集による力を見せる時だよ?」


悪魔のささやきに汗がダラダラと流れだし流石に今の状況に気づく四虎琉。

この状況は一見有利に見えて、失敗すれば自分の命もない状況。

しかし、圧倒的絶望の最中に落とされている彼を潰すなら。

今しかない、そう確信した四虎琉は行動にでる。

悪魔にそそのかされて、意のままに。


「も、もう考えるのはメンドクサイ・・こうなったらヤケだッ!!」


カチリッ!


そう言って一つの赤いボタンを勢いよく押すと。


フォォォォン。


どこからともなく警報がビルから流れ始める。


バラララララ。


近未来の白い郵送ヘリが何台も飛んで来る。

ハッチが開くと、空から何体もの白い肌の人間が降り立つ。

無表情、白い髪の毛、手には謎の白い棒を持ち。

比叡に襲いかかろうと歩き出す。

彼らも同じマザー・システムで生まれた人工生命体。

ただ、一つ違うとすれば。

彼らにまともな知識はない。

ただ、何かを狩る為に生まれて来た殺人鬼。

誰かに愛されたわけでもなく、誰かに求められたわけでもない。

彼らは命を奪うべくして生まれて来た存在である。


「お、俺が・・機械の・・」


だが、比叡に今の状況が分かるはずもない。

ただ驚愕の事実に放心してしまい。

目の前の事がおろそかになっていた。

もはや、彼に今を察する事すら叶うはずもなかった。

これも全て計算のうちという事。

この程度の事で困惑してしまえば人として生き方をした彼なら。

精神面で追い込み後は周りがやってくれるのを待つのみ、

ただそれだけの事。

それだけで、彼の死は近づいてしまうのだった。


だが、この場合・・少しだけ状況が異なった。

クローバーの計算ならば、なんの邪魔もなく。

後は動物も消せればそれで終わりだ。

そう思っていた事だろう。


ガンッ!!


しかし、彼の味方は人知れず増えていた。

それは彼が無自覚で味方につけていた存在であり。

彼の事を良く知り、良く考えられる人物。

否。


「申し訳ございません・・このお方に近づないでください」


「ッ?!お前・・!!」


下をうつむいていた比叡がハッとなり顔を上げたら。

そこには、押し寄せていた謎の白い人々を振り払う姿。

ただの手刀だけでそこまでの威力を出せる者。


それは・・【ミルクレープ】の姿であった。


短い期間だけいたはずのミルクレープは。

体も脳も勝手に動いていた。

記録していた思考と考えていたプログラムが自動的にそうしたとか。

そういう具合でもない、これは彼女自身が考えていた事である。


「な、なな?!」


四虎琉にすら理解できない状況に慌てふためく。


「不良品・・どういうつもりだ」


これにはクローバーも今までしていなかった怒りがあらわになる。


その怒りの感情に対して。

ミルクレープはただ、こう真っ直ぐな答えを出した。


「彼は確かに貴方達から見れば欠陥品であり、私も不良品・・ですが、それは関係ないと見ました、何故なら彼は貴方と違い考える事をしていないからです」


「なんだと?」


「人は思考をそれぞれ持つとも言いますが、彼の場合は一長一短であり片道切符の人生という言葉が良く似合います、その理由も彼がただ真っ直ぐに阿呆だからという事、彼には人並としての生き方ができ、貴方の様に余計な事を考えて生きていない」


「わけのわからない事を・・つまりなにが言いたい!?」


あまりにも鬱陶しい理論に怒りを見せるクローバー。

それに対して、やはり何も曲げずに答えるミルクレープ。


「何が言いたいか・・私にはおそらく結果論としてこう語れます」


「それはなんだ?!」


「それは、彼には他の人にはない、溢れるほどの【阿呆としての優しさ】があるんだと思います、私にはまだ足りない喜怒哀楽を彼は体中から出して生きられます」


迷いは一切ない。


「これは私が観測していて一番に理解不可能でした・・何故全ての感情を意のままに出して生きるのか・・本当に理解できない、理解できないですが・・」


気持ちの揺らぎなどない。


「人とは常にくだらない事にムキになれて、そのくだらない事を大きな物語にできます、どんな小さな事もです、これは私が見たまま観測を繋いだ結果です」


「わけの分からない奴めッ!ポンコツは相変わらずか?!」


「単純な話、人は不要なんかではない、このお方の様にたとえ機械から生まれた人でも世界の人と人を繋げられる存在、そういう人もいるという事、そういう事です」


「だーかーらー・・どういう・・・思考してんだてめぇこのポンコツッ!!」


「さあ、残念ですが私自身これ以上の思考も考えも思いつきません・・気になるなら貴方自身がそう言った法則を考えればいい」


「この・・不良品・・いい度胸だ」


四虎琉もクローバーさえも怒りに震えあがるこの一瞬。

この状況に光が仕込んだかのように目に蘇りが見え気を取り戻す比叡。

まだ、何もかも終わったわけじゃない。

自分にだってまだ生きる意味がある。

そう確信した時だった。


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