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第百八十七話「ディートリッヒ、去る」

「のらぁぁぁ!?」


「かるびぃぁぁッ!!」


ガシャァァァッ!


謎の断末魔と共に空から窓ガラス割って何か降って来たッ!?

えっ・・てかこれってアレか・・堕舞黒じゃん!?

しかも隣で倒れこんでいるのは・・白衣の!?


「何がどうなってやがる・・」


「先輩、なにやら先ほどの白衣の男まで降って来てます!」


「・・なーんか嫌な予感がする」


奇跡的に気絶している二人を見てなんとなくこの光景がなんなのか分かってしまう。

俺はとにかく頭の中で嫌な連想が働いてしまうが。

冷や汗をかきつつも急いで割れた窓ガラスの階へ急ぐ。

比叡と海王咲は「この馬鹿共を保健棟に連れて行くから先行ってろ」と言われて。

少し申し訳ない気持ちになりつつも、後押しされいざ現場へと向かう。

階段を駆け上がり急ぎでその場に向かえば予想通りの光景が目の前に広がっていた。


割れた窓ガラス、荒れる校舎内の展示物。

そう、ここは渡り廊下・・そんな場所に何人者黒服が倒れこみ。

目の前に見えるのは人混みで見えにくいがそれは紛れもなく。


「・・ディートリッヒ先生!?」


国語の教師、ディートリッヒ先生だ。

何故、教師でもあろう彼があの場に立って返り血を浴びているのか。

その右手と左手拳には床に何度も滴るくらいべっとりとこべりつく血。

この状況で間違いなく察した。

これはディートリッヒ先生の怒りで荒れ狂った後だと・・。


「先生ッ!どうしてこんな事を!?」


思わず人混みを押しのけて先生の下へ駆け寄る。

それもそのはず、この三年間俺達に色んな事を教えてくれた先生が突然。

こんな真似をしたら誰だって疑いたくなるはずだ。

周りにいる人達だってそうだろう。


「・・柳原か、こいつについて言う事は一つ、俺は頭に血がのぼってついカーッとなってやりました」


「そんな軽率な理由で済まされると思っているんですか?!先生ッ!言い逃れは聞きたくありません!真面目に答えてくださいッ!」


「真面目に答えてこれだ、お前らが真面目に勉強受けていた相手は平気で生徒の目前で人をぶん殴る悪い先生だっただけ、ただそれだけだ」


「いい加減だ・・先生正直に言ってくださいよ!何か隠しているんですよね?!」


こんなあまりにも突然の出来事に納得できない自分がいる。

せっかく今日も平和だと思っていた日に突然起きた出来事に納得できない自分がいる。

この状況動見ても普通じゃないからだ。

この今の学園の状況から見ても絶対におかしいからだ。

だからこそ今この発言でも見ても納得なんかできるはずない。


「先生ッ!!」


「止めるんだ、柳原君」


「津久井先生ッ!?」


俺がその場の勢いでもっと訴えかけようとした時後ろから津久井先生の姿が見えた。

肩をがっと掴まれて俺の勢いはそこで止んでしまったのだ。


「津久井先生様・・先輩は今ディートリッヒ先生様の事を気にかけて・・」


「榛名君、柳原君共に二人の意見は分かる・・分かるが・・これは仕方がない事なんだ」


「えっ?」


俺も榛名もその津久井先生の言葉に思い止まる。

なにか今、おかしい発言が聞こえた気がした。


 「仕方がない事なんだ」


これがただの言葉とかそういうのではないという事が一発で分かった。

この発言の裏に確実に何かが隠れていた。

そしてそれは、津久井先生の後ろを通り抜ける理事長代理の姿で。

疑いから確信へ、確信から不安が滲み出たのだった。


黒服の奴らから流れ出た赤き血だまりを踏み歩き。

ぴちゃり・・ぴちゃりとまた一つ踏み歩き静かにその場に現れた理事長代理。

そうして理事長代理がディートリッヒ先生の目の前で止まり。

真剣な顔で睨み、いつもの変わらぬトーンでこの場にいる者達全員に告げる様に。

理事長代理の言葉は今響いたのだった。


「理事長代理の権限をもって今下す、本日をもってルイズ・ディートリッヒをこの学園から追放し、以下解雇とする、この学園から出て行ってもらおう」


「・・了解した、天照理事長」


何が起きているのかさっぱり分からなかった。

だけども、目の前で起きているそれは。

確実にただ、意味不明で理解不能で可笑しすぎる出来事だった。

突然の解雇?

突然のハプニング?

何がどうなって、どうしてこうなったんだ。

なんでみんな納得するしかなさそうな顔しているんだ。

ディートリッヒ先生・・どうしてアンタが・・ッ!


「ふざけんなよッ!なんなんだこの茶番はッ!?」


「先輩落ち着いてください!」


榛名に抑えられ怒りを抑えられようと必死に止められる。

あのただ無気力そうな顔になってしまったディートリッヒ先生に訴える様に。

俺はただその時は思った事を叫ぶしかなかった。


「本当の事を言ってくれよ!アンタはそんな人間じゃなかったはずだろッ!なあ!ディートリッヒ先生!ふざけんなよッ!ふざけんなよッ!!この、馬鹿教師ガァァァッ!」


その日、最悪の朝を迎えて。

その日、大切な教師を一人・・この学園から失った。


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