第十六話 「波乱の下校」
保健棟の明日香先生には『胃薬とその他万能薬を渡しておくから後は安静に』と言われた。
本当に一流の医学の専門家なのか怪しくなってきた。
今度からやぶ医者と呼ぼう。
それにしても今日は賑やかな一日だった。
愛川が朝からコミュ障を炸裂させたり。
愛川が藤宮を泣かせたり。
愛川が藤宮の頭を鷲掴みにしたり。
愛川がまたしてもカップリングを記録したり。
愛川尽くしの一日であり、藤宮もきっと疲れきっているだろう。
今日はもう気づけば夕日が出ている。
もう帰ろう、帰って冷蔵庫にあるチョコレートを食べよう。
税込みで98円なんだからとても安いし美味い。
「でもできればもうちょっと贅沢したいけど・・そういうわけにもいかないよなー」
するにしたってもうちょいバイトを増やして稼ぎを安定させないとな。
親のたまに来る支援だけでは流石に無理がある。
そう、何を隠そう家自体には二人の家族以外は住んでいない。
1人は俺、もう一人は中学生の妹がいる。
父親は海外へ赴任している。
母親も同様である。
兄と姉もいたのだが、自立願望が高く二人とも家を出て行った。
残されはしたももの、自立の成果もあってか支援はしてくれる。
親も別に俺達を放置しているわけじゃない。
ちゃんと生活費を銀行に入れてもらい。
学費もしっかり払ってもらえる。
こんなにも心配してもらい、遠くからも支援が届いているんだ。
その分しっかり頑張らなくてはいけないだろう。
今年でついに三年目、しっかり卒業に向けて目標を立てて行かなければ。
「って・・俺は何突然恋愛ゲームの主人公みたいに改まっているんだよ」
「嫌ァァァッ!!」
「悲鳴?」
ブツブツと独り言の様に色々考えこんでいると遠くから誰かの悲鳴が聞こえて来る。
誰の悲鳴だろうか、なにやらとても聞き覚えがあるのだが・・。
悲鳴の方角はちょうど近くの校門まえあたりだよな。
近いし行って確かめよう。
俺の嫌な予感が的中しなきゃいいんだが。
こういうのは決まって的中すんだよ・・。
「ち、近寄らないで!こっちに来ないでくださいましです!無礼!無礼ですわ!」
「んだと!?てめぇが先に喧嘩ふっかけて来たんじゃねぇかクルァ!!」
「ナメた口してんと痛い目会うぞクルァ!」
「誰か助けてくださいまし~!!」
うわ、やっぱりだ。
もう絵に描いたような集団イジメの発生だ。
しかも案の定藤宮ァッ!
またお前かよ!
またお前かいな、良くあるんだよ・・こういう事が。
この前は確か花壇にゴミを捨てた他校の不良生徒との争い。
その前は身だしなみ注意について指摘をしたら色々言い過ぎて争い。
そして今回はなんだ。
「うわぁぁぁん!何がいけないと言うの!私はただ貴方達がこの学校に対する侮辱的発言に対して反論しただけじゃありませんかぁ!!」
「うるせぇッ!さっきから頭が悪いだの醜いだの低脳ポンコツのカニミソ以下とか言いやがって!!」
「そのうえ俺達を究極的いらない存在のモブとか言いやがって!」
「どう落とし前付ける気だぁ!」
「あんくるぁ!」
「ていうかカニミソってなんだクルァ!!」
5人相手に良く言ったモノだ。
本来ならここで助けに入るのが良い男の理論なんだろうが。
藤宮には親父の力でどうにでもできるだろうし。
何度もひどい目にあって厄介ごとにつっこむお前が悪い。
今回ばかりは反省も兼ねて見て見ぬふりをしよう。
「貴方達!」
「んあ?!なんだてめぇいは!」
この声、藤宮の声より何度も聞いた事のある声だ。
この聞き覚えのありすぎる怒鳴り声、ま、まさか・・。
「寄ってたかって一人の女の子をイジメるのはあまりにも卑怯で卑劣!それどころか年相応の男子にしてはお趣味が悪いと思いますよッ!」
「(あ、愛川ッ!)」
やっぱりあの聞き覚えのある声は愛川だ。
あの愛川が藤宮の事をかばっているだというのか?!
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