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第百四十話「最初から強い人間はいない」

「はぁ・・はぁ・・もうダメ・・そんなところ・・こすっちゃ・・やぁ!」


「ダメだよラベンダーちゃん・・ここも汚れてるんだから・・あまり暴れると頭ぶつちゃうよ~?あ、愛川お姉ちゃんはそこお願いね」


「了解!しっかり洗ってあげるからね~!」


「い、いやぁ・・気持ちぃのぉ・・らめぇ・・」


ダメだー聞いているだけで死にそう。

愛川の分のタオル持って来たらこの様だよ。

いやもう、何も考えてたまるかさっさと出るぞ。

ここにいたら色々ヤバい、俺が俺ではなくなってしまう。


「・・想像と耳に入る言葉だけで悶えそうです」


「若い子は大変だね・・これからも今からも」


「あんまり嬉しくないです、男ってだけで危機感が半端ないのに・・それでいて好きな女の子はなんか別の形で全然気にしてないというか・・」


「良く分かるよ、その気持ち・・俺も昔はそういう女性の事が良く分からなかった」


「光太郎伯父さんが・・ああ、ヴィオラさんの事か」


「今ではこの白いガーベラを渡されてから少しは・・まあマシな人かなってより・・愛すべき妻だがね」


光太郎伯父さんがそう言って取り出す胸ポケットのガーベラの花。

アレは確か・・白いガーベラの贈り物だったけ?

伯父さんが誕生日の時に初めてもらい、勇気をもらった花。

その言葉の意味は【希望】の意味を込めての送りモノ。

大分前だけど、そんな話を聞かされた気がするよ。


「今でも・・持ってるんですね」


「ああ、これは肌身離さず持っていなくては・・これが無ければなんとなく落ち着かなくってな・・ヴィオラから唯一のまともなプレゼントとして」


「唯一?他はなんですか?」


「自分とかがプレゼントになって来た事もある」


「それは・・おう・・」


「まあ、そんな彼女だが・・私の愛すべき妻だ、妻はいつまでも大切に思うよ」


「良かったですよ、特に仲の関係も崩れてなくて・・いつまでもいい夫婦でいてください」


「ああ、そうさせてもらう」


いいな、こういう所が光太郎伯父さんのかっこイイ所だ。

こう言えるのが当然みたいな生き方をし、自分に純粋で。

喜作で、笑顔が優しくて、誰よりもカッコよくて。

正義の味方の様で・・こんな人に誰もが憧れるんだよな。

微笑んでにやけついてしまうくらい、微笑ましい家族関係だよ本当に。


「どうかしたかい?菊君」


「いや・・俺も将来・・そういう風に生きれたらと思いまして・・でも俺には無理だな・・」


「何故、そう思う」


「俺にはそういう風に生きるってのがまず難しいんですよ・・カッコよくて・・自分を貫いて・・当り前ができる・・これってすっごく難しいじゃないですか・・光太郎伯父さんはそういうとこ本当にできてて凄いって思うんですよ・・俺にはできないから」


「・・いや、そうとは限らないぞ菊君」


「えっ?」


俺が深刻な表情で考える中、光太郎伯父さんは笑って答える。

笑顔だった、紛れもない笑顔での答え。


「今はできなくても・・失敗を重ねて人は強くなる事ができる・・何千の敗北があろうと何億の失敗があろうと諦めない事で人は強くなれる・・俺だって最初は何も出来なかったさ、けど失敗をして立ち直ったからこそ・・今があるんだよ・・菊君」


「光太郎伯父さん・・」


やっぱり真っ直ぐな人だ・・どこまでも芯がある。

これが先を歩いた人達の真剣な顔であり、まっすぐな思い。

尊敬に値する。

俺がこんな人と会えた事も、こんな人がいた事も。

俺は全てを尊敬しよう。


「ありがとうございます!光太郎伯父さん!」


「いや、構わない・・・ん?」


この静寂の間に一体誰からだろうか?

光太郎伯父さんの携帯から着信が届く。


「もしも・・俺だが」


『柳原光太郎、貴様の娘・・預からせてもらった』


「何ッ!?それは本当かッ!?」


「伯父さん?」


『安心しろ・・命までは取らない・・いいか?場所を指定するから一人で来い・・もし誰かにこの事を教えたり・・したら貴様の娘の命は無い・・分かったなッ!』


「・・・分かった」


深刻な顔になる光太郎伯父さんッ!?

一体何が起きたってんだッ!?


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