第百二十八話「人の恋路は」
「叶わない・・ってそういう」
「そうだ、どんなに頑張っても真に愛を誓った者同士を断ち切る事は出来はしない」
「うん、知ってる人はなおさらね」
「・・それじゃあ・・先輩は・・あんなにも・・好きだって・・心から叫んでいる早乙女先輩は・・報われないんじゃないですか?」
「そうだろうな・・報われねぇよ、アイツの性格上またへこむか挫折するかどっちか」
「自暴自棄になるのが良いとこ・・だろうね」
「そんな!二人とも・・なんでそんなに邪険に扱うんですか?!お二人は・・必死に・・何も知らない無垢な早乙女先輩を・・最後の最後まで上げておいて・・落とすんですか?!どんなに頑張っても・・どんなに早乙女先輩が頑張っても・・実のならない恋に走らされるのが正しい道なんですか?!」
「愛川、その道がアイツにとって最悪の結末だったとしても人はそれを乗り越えて真の恋に行きつくんだ」
「ッ!?」
愛川が目を見開いて驚くのも無理はない。
正直俺だってこんな答えであってほしくないが。
そうあるしか運命は定まらない。
もう決まった運命に対して俺達がどうこうできる話じゃない。
なら、どうする事が正解なのか。
正解ってか、どうする事も正解ってわけじゃない。
重要なのはその先の結末から己の新しい道を歩く事だ。
一つの物語が完結しちまったならまた歩く事だ。
その命、その魂、その恋に対して揺るがない想いがあったのなら。
また歩いて行ける。
最初が悲しいわけじゃない。
恋はいつだって悲しい時は来る。
それが、どういう形で自分の人生を繋ぐか。
失恋は自分の未来を途切れさすだけにあるモノじゃない。
時にはその失敗を治して次の恋へと繋げる。
だからこそ、武蔵もまた失恋の経験をしようが。
それが人生なら自ら知ってもらうだけの事。
言わないんじゃない、言えないんだ。
そこまで必死になる奴に誰が止める事はそれこそ野暮な真似だ。
「・・失恋ってのは辛いよ、誰だってしたくねぇよ・・けどそういう事も含め【恋愛】って奴なんだ、誰かが最初に釘をさす事によって止まるのは恋愛じゃねぇ【ごっこ遊び】だ」
「・・武蔵先輩のは・・ごっこ遊びじゃないからこそ・・」
「止めないし止められないの、最初から結果が見えているから」
「他人からすれば最低だろうよ、さっさと教えれば言う前に傷つかずに済むんだからな、けどそうしない理由があるからだ」
「理由?」
「そのうち分かる、武蔵なら・・それなりの答えを導きだしてくれるはずさ」
「・・そ、そうなんですかね・・」
「そうだとも、それよりも・・今は他にやるべきこと・・ある」
「あ・・!!そういえば武蔵先輩が・・」
そう、肝心の武蔵は拉致られた先生連れ戻しに行ったし。
その拉致られたことも問題だ。
二重に重なる問題・・やっかいだ。
「・・あまり迷惑をかけたくなかったが」
「何か手があるんですか?」
「うん、相手はそれなりに物騒な連中だろうし・・先生が来てどうこうできるレベルじゃなかった時の為の・・最終手段」
「・・・最終・・手段ですか?」
事件の根源も大体誰か分かった。
残りはそれを片付けるだけ。
さあ、始めようか・・人の恋路を邪魔する野暮にトドメをさしてやろう。
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