第百二十二話「気になる二人」
「全く・・アンタはいつになったら自分の上限が理解できるんですかね・・」
「ごめんね、どうしても・・目が見えなくても・・こう・・特別扱いされたくないって思っちゃうんだ・・自分でもできる事はある・・たとえ・・みんなみたいに色彩の描かれた世界を見る事は無理でも・・触れて・・色を感じる事はできるって・・君の暖かな・・色とか」
「・・変んな事言うと・・荷物ここに降ろしていきますよ」
「ご、ごめん!嫌だよね・・」
「いえ、続けてください」
「ふえ?」
「・・いいから、続けて大丈夫ですよ・・まったく」
「・・優しいんだね、やっぱり一緒にいると落ち着くなぁ」
「(こっちは落ち着かないんですけどねッ!!)」
見ているだけで愛くるしいし部屋が熱い。
さっきからむずがゆそうに照れくさくしている信二と。
まんざらでもないというより好き好んで心から感謝の言葉を述べながら歩く金田ちゃん。
2人とも仲が良い・・を通り越して末永くお幸せに。
そんなレベルで陰ながら応援したくなる。
これは影からこそこそ見るのがやめられませんわ。
改めて自分の性格の悪さがうかがえる。
「・・何してんだ」
「あ、霧島君」
「いや、霧島君じゃなくて・・なにしてんだ」
「霧島先輩、見れば分かりますよ、信二先輩と金田先輩の愛の応援です」
「(直球!?)」
「・・・?」
「愛の・・蒼炎?」
霧島がさりげなく隣で連れている椎名ちゃんにはこの際触れないでおいて。
問題はもう一つ、愛川・・直球すぎるだろ。
そりゃあ霧島君も首をかしげるに決まっているよ。
疑問しかねぇよそりゃ。
「・・ああ、そういう」
「えっ?何がどうなの?」
「大丈夫だ、お前の理解できない大人の話」
「ははーん・・お子様な私には理解できない奴だな・・よろしい、会話不参加!」
身の程をわきまえているあたり流石は代表格。
しかし霧島もチラッと見ただけで察せるあたり相当分かりやすいカップルだよな。
いや、まだカップルじゃないけど・・もうなんかそうしたい。
「にしても・・世の中にあんな典型的な奴がいるんだな・・もう完全にお手本じゃねーか」
「お手本もお手本・・ツンデレと生意気皮肉・・憎めない奴ってね」
「なんだかそういう人っぽいですよね!」
「ぽいぽーい!」
「お前らはさっきから僕の事を話題に出して遊ぶなッ!?」
『聞いてたの!?』
「そんだけ視線が集まれば耳ぐらい澄ましているッ!!」
僕ら四人で密かに会話をしていたと思っていたら。
信二がこっちに気づいた様でわざわざ教室へと上がる階段降りて。
わざわざそれだけを言う為だけにツッコみに来てくれた。
なんと・・何処までも謎なまでに真面目な奴め。
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