第百二十一話「信二と金田」
「あれって・・信二君・・?」
俺の目の先の特別級棟玄関前にいるのは紛れもない。
アイツの姿だ、しかも一緒にいるのは盲目の金田ちゃん。
一体、何がどうしてあの二人がいるんだ?
「えっ・・誰ですか?」
「あ・・愛川は知らないのか・・アイツも一様二年生の生徒会メンバーなんだよ、立場はわりと上の方」
「へえ・・私全然知らなかったです・・あんな見るからに上からモノを言いそうな坊ちゃんタイプの人間・・なんですか・・真ん中分け目とかもうモロ特徴ついているじゃないですか」
「愛川、分かっててもそれは言っちゃダメだからな」
愛川の言う通り確かに上からモノを言うタイプの人間だ。
いや、どちらかというと分かった上で言っているから。
他のそういう人よりはまだマシな方ではあるんだけどさ。
というより今はそれよりも。
何故、信二君があの金田ちゃんと一緒にいるのかが気になる。
まさか、金田ちゃんにも何か言っているわけではあるまいな。
流石の奴でもそんな事はないだろうが。
「少しだけ不安だ・・ちょっと確認してみるか」
「柳原先輩・・」
「あ、悪い・・そうだよな・・隠れてこそこそしながら盗み聞きなんて・・」
「除くならあの壁がベストです!」
「あ、そこなのねッ!?」
「何か変な事言いましたか?」
「いや・・うん」
愛川にそろそろ常識と正しい方向性を求めるのは間違っているのだろうか。
それとも俺が単純に見方を間違えているだけなのだろうか。
果たして前者か後者か・・一体どちらなんだろうか。
とりあえず、愛川の言われるがまま。
玄関付近の壁に隠れて様子見するとしよう。
確かにこの位置ならアイツの視界には入らなそうだ。
今は金田ちゃんと喋っているというのもあるが。
まあ、そこは重要な部分ではないだろう。
さて、一体どんな会話をしているのだろうか。
「・・点字本はこれで全部か?」
「あ・・はい・・ありがとうございます・・」
「ケッ・・まったく・・危ない真似しやがって・・怪我でもしたらこっちの責任なんだからなッ!運ぶときぐらい普通に呼べって言ったろうがッ!」
「す、すみません・・その・・ご迷惑だと思って・・いつまでも・・頼りっぱなしは嫌だな~・・って」
「ああ?!俺が頼られるの嫌なわけないだろッ!この引っ込み思案ッ!ハンデ背負ってる事に対して一々無理して常人と合わせようとするから毎度毎度怪我するんだよッ!やるならせめて俺の近くでやってくれッ!」
「うう・・ごめんなさい・・・」
「全く・・ほら行くぞ、俺のそばから離れるなよ」
「・・はい・・ありがとう・・ッ」
なんだろう、なんとも言えないこの関係図。
信二はなんか怒ってはいるんだけど嫌々って感じゃなくて。
なんか、どっちかって言うと凄い心配してくれる感じがあるな。
怒っても内心思ってことが駄々洩れだし。
要するにツンデレって奴だよな。
金田ちゃんもかしこまっているけど。
特に泣いたりとかしてないし、逆に。
何故だか最後の方嬉しそうだったし。
頬染めてたし、なんだこれ。
なんだ・・この二人・・最高か?
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ちなみに信二は高校二年生
金田ちゃんは高校三年生です。