逃亡者-01
はい、ぜんかいのあらすじ~!
平野先生が味方に加わった!
じゃじゃんじゃじゃんじゃじゃんじゃじゃん
じゃじゃんじゃじゃんじゃじゃんじゃじゃん
ちゃらららららららら~♪
おしまいっ♪
現在を遡ること2020年、東京オリンピックは行われなかった。
なぜなら、この年に帝都は世界でも初めてのタイプのテロに見舞われたためである。
首謀者は高畑勇、当時47歳。彼の主催する新興宗教”アーナンダ教団”の終末思想により、再び帝都はテロに屈したのだ。実質的な被害は未遂に終わった。しかし、未曾有のパニックに陥った帝都は急遽、オリンピックの中止を発表したのである。高畑勇を中心とした幹部メンバーはドサクサに紛れて海外へ逃亡、一部の幹部と実行メンバーのみが逮捕・勾留された。
だが、本当の恐怖はここからだった。彼らが行おうとしていたのは、俗に言うB兵器… 細菌によるバイオテロだったためである。テロ防止法によって摘発された証拠物品の中に、感染したマウスが発見されたのだ。それは人にも感染の可能性が非常に高い、連鎖球菌性の出血熱である。連鎖球菌そのものは決して珍しいものではない。だが、土壌を始めあちこちに存在し、抵抗力をなくした人物に感染、劇症出血熱を起こすことが知られている。今回はその人為的な改造種、それも感染力が強く劇症化しやすい性質を持っていた。未然に終わった世界初のバイオテロ攻撃は、風評被害も含め多大な被害と恐怖を人々に植え付けることに成功したのだ。その結果として、東京オリンピックは行われなかったのである。
それから数年が過ぎた。
「抗菌団? なんだそりゃ、新手の水虫薬か?」
俺は同僚の山崎和久におどけてみせた。
「ちゃうて、”北の黄巾団”ちゅうてな、ホレ、いつぞや帝都で大掛かりなバイオテロやらかした…」
「ああ、あの”アーナンダ教団”事件か? 今は解散したはずだろ。それがどうかしたか?」
「さっき、またやらかしよったってよ。今度は島の占拠や」
「それでか、今回の呼び出しは」
「押井はんも長浜一等陸佐には好かれとうさかいな、覚悟しときっちゅう話や」
司令室に向かう道すがら、俺達は何人かの顔見知りとすれ違った。いずれもが屈強な”特殊作戦群”に所属するとされているといわれる、いずれも強者揃いである。何故『されているといわれる』かって…? それもそうだろう、実際にその男が特戦群にいるのかどうかすら知らされていないのだから。故に、唯一その存在を知っているのが、この方言のキツい山崎という男だ。コイツとは何度か同じ作戦に参加し、偶然その身元を知った間柄である。当然のように仲良くなり、当然のように一緒に行動することが多くなった。それがいい事なのか悪い事なのかはわからない。だが、同じ境遇で話が合うという点において、共感し合えるという点において、これ以上最適な相手はいなかった。
それが、雁首揃えての出頭命令である。当然勘ぐりたくなるというものだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「押井譲二等陸尉、合わせて山崎和久二等陸尉。両名に偵察任務を下達する。まず、山崎和久2等陸尉にはA班として、押井譲2等陸尉にはB班として宮古島沖の、ある島を奪還してもらうことになる。何か質問は?」
「それは~、いわゆる各個人の責任における強行偵察を意味するものでありますか?」
山崎はいけしゃあしゃあと質問を述べた。コイツのこういう処はなかなかもって面白い。果たして、一等陸佐の回答は?
「そうだ。随分と耳が早いな、山崎二等陸尉。全くどこから仕入れてくるのだか…。一時間後に作戦を通達する。それまでに各自荷物をまとめ、出発の準備と心構えをしておくこと」
「それは随分と急ぎの下達ですね。何かよっぽどの事が起きているとか?」
「押井二等陸尉、詳細は作戦通達時に下達する。今はこれしか言えない。以上だ。すぐに準備に取り掛かりたまえ」
「はっ! 押井・山崎二等陸尉両名は只今より作戦準備に入ります」
敬礼。ふと隣を見ると、
「な、言ったやろ。まるでカンボジアPKOの再来や。ゾッとせん話やわ~」
と囁きかけるの山崎の顔があった。
果たして一時間後、俺達はブリーフィングルームでその時を待った。
カツカツと靴音が響く。そこに現れたのは、芦田一等陸尉と神田二等陸尉だった。いずれも特戦群では名の知れた逸物であり、ここ西普連にいる事自体が珍しかった。それもそうだろう、本来なら習志野で教鞭を取って然るべき人物なのだから。
「やはり、お前たちも呼ばれたのだな。元気にしていたか?」
「はい、自分達は相変わらずやっております。芦田一等陸尉にはご機嫌麗しく…」
「ハハハ… そんなに畏まらなくともいい。それとも余裕のあまり、俺をおちょくっているのか?」
「いいえ、そのような意図は全くありません」
「いつも通りでいいってよ、押井、山崎」
「…はぁ、ありがたや神田はん。こういう畏まってってのはアカンねん。苦手なんよなぁ」
山崎は終始この調子で、隊のムードメーカーになってくれている。少し硬くなっていた俺の表情も若干の緩みを見せた。
「で、今回の作戦について何か聞いてますか?」
「いや、まだだ。これから長浜一等陸佐からの下達があるはずだ。もう少し、待とうか」
「了解であります!」
またもや山崎はおどけて言った。
五分が経ち、定時となった。総勢15名の猛者たちがここに勢揃いしている。ピンと張り詰めた空気が周囲を支配していた。
「気をつけ!」
号令がかかる。作戦本部長の川尻三等陸佐が長浜一等陸佐を連れてやって来た。
「ただ今よりT島の奪還作戦についてのブリーフィングを行う」
◇ ◇ ◇ ◇
「つまり、高畑勇が帰ってきたと? しかし、それは公安の仕事じゃ…」
「いいや、先日のC国の大量海上抗議デモがあった時に、どうやら紛れ込んできたらしい。それも、私兵を揃えてきている。海保も今回の失態には頭を抱えているそうだ。組織的な作戦だというのが我々の見解だよ」
「私兵…?」
俺は眉をひそめながら問いかけた。
「でも連中にそれだけの仰々しいことは…」
「できたのだよ、彼の国は知らぬ存ぜぬで通しているがね」
「でも川尻三等陸佐、連中にそれだけの力があるとは到底…」
「相変わらず君はでもでも、だな。押井二等陸尉。もうちょっとアクティブに考えたまえ」
「で、現状はどうなってはるんでっか?」
「要救助者がいる。ここを拠点に了をしていた漁民7名だ。彼らを人質に、かの教団幹部数名の無条件開放を言ってきた。それが為されない場合…」
「別働隊でも?」
「そうだ。流石に察しがいいな。この帝都に再びバイオテロを起こすと表明している。それこそが公安の仕事だよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「観測衛星からの写真は以上の通りだ。この島の中央に位置する漁師小屋を中心に、ヴィーゼル級の特殊車両が4台とゴリアテらしき小型の車両が十台近く確認されている。空自からの連絡では、地対空ミサイルのようなもので501のRFが撃墜されたそうだ。幸い乗員に被害はなかったが、この時点で我々の出番となった。想定される敵の人数は確認できるだけでも14名。おそらく、その倍はいると思っていい。お前たち16名を持って、この島と要救助者の奪還を含む特殊偵察任務を命じる」
「命じる、はいいんですけどな。三等陸佐、空自も近づけんこんな辺鄙な島にどうやって上陸しますのん?」
「現在佐世保に停泊中の”うんりゅう”を使用する。既に”こんごう”、”あけぼの”、”ありあけ”、”あきづき”、が客寄せパンダとして既に出港した。制空権は空自に任せてある。海保や海自の艦船が見えたら人質の命はないとの通達もある。とにかく要救助者の確保ができないことには空自による平面制圧も難しい。そこで、”うんりゅう”を島にギリギリまで接近させ、魚雷発射管から特殊輸送ユニットを使い上陸する。どうだ? ちっとはやる気が出たか?」
「…問題なしや」
山崎は苦笑いしながら、下がった。
「次ですが…」
俺は気になっていたことを提言した。
「このゴリアテサイズの機材… これはどうお考えですか?」
「無人戦闘でも行おうというのだろう。先の事件でも知っての通り、訓練を受けているとはいえ素人の集団だ。戦力増強のつもりなのだろう。実際この島は高低差のおおきな条件下にある。装甲車にしても、そうそうその機動力を活かせるような事態にはならないというのが目下の分析だ」
「でも、もし彼の国が後ろ盾になっていた場合、噂になっているロボット兵器を使用してくる可能性も…」
「彼の国は、最先端のロボット兵器を一介のテロ組織に貸し出すような頭の弱いことはしないだろう。違うかね?」
「でも、…」
「君の”でも”は、聞き飽きたよ。とにかく現場判断で適正に処置したまえ。以上だ」
という訳で、押井譲の過去編が始まりました。
これから彼はどのような経験を経て、あーゆー考えに至ったんでしょうね?
それでは皆様、さよなら、さよなら、さよなら~♪




