街路樹は知っていた-17★
毎度お馴染み、ぜんかいのおはなし~!
復活のメイ!
しかし、俊樹たちを助けると、その身体は脆くも崩れ去るのでした。
おしまいっ!
◇ ◇ ◇ ◇
青く光り輝くメイの姿が霧散してから一時間が経った。誰もが無言のまま、重苦しい時間を過ごしていた。軽症をおった司馬と野村は手当てのために医務室へ。俺達はただ、メイによって破壊された大きな扉を前に、大きなため息ばかりをつく有様だった。端末のメイが眠っているカプセルが俺達のいる部屋に運ばれてくる。
「さて、事は重大ですね」
そこには平野准教授の姿があった。
「一応、富野教授からは指南を受けていたのですが… まさか、このような結果になろうとは」
「准教授、指南を受けていたって、メイのことについてですか?」
俺は藁にもすがる思いで、先生に声をかけた。
「はい…、万が一の時には『本体の方を開放せよ』とのお達しがあったのですが、その意味が全く不明でした。それがこういうことを意味するだなんて…」
「本体… ということは、端末の方は…」
「無事です。ただし、沈黙したままですが」
沈黙したまま? 無事…。
何かが引っかかった。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
何か大事なことを忘れているはずだ。
俺は今までに起こった出来事を思い返していた。
メイは事あるごとに、何らかのヒントを与え続けてくれていたはずだ。
考えろ。
もっと、もっと考えろ。
メイが目を覚ます、決定打があったはずだ。
「そう言えば…」
俺の口をついて言葉が出てきた。
「矢野さんは、どうやって今回の危機を知ったのですか? その経緯は?」
「だから、ある人物に行き当たったからだ。そう言っただろう」
「その人物に行き着いた経緯を、です」
「それは…」
矢野はなんだか口どもった様子だった。だが、案外あっさりと口を割った。
「風呂に入っていたときだがね、こう… 波を立てて遊んでいたときに気付いたんだが、それが何か?」
「波… ですか?」
そう言えば、メイはよく『共鳴』という言葉を使っていた。音叉が共鳴するように、感情や考えていることは伝わるものだと。
「では今回、一時的にもメイが目覚めたということに関してですが… 先日俺の血を輸血したことについて、何か関係するといったような事はないですか?」
「端末の方にではあるが… 血色は良くなっているし、人間でいうところの脳波も安定している。それまではかなり乱れていたからね」
俺は、メイの”端末”が横たわるカプセルの前に立った。カプセルの中からは、エンドレスでDAISY・BELLのメロディが流れている。デイジー・デイジー・ハイと言ってよ…か。そう言えば、この歌は映画でも使用されていたと沙耶が言っていたな。あれは確か… HALと呼ばれる暴走したコンピュータが、断末魔のように口ずさんだ歌だと聞いた。もしも、だ。もしもアンドロイドが寂しさを感じていたのだとしたら…?
…違う。そもそも根本から考え違いをしていた。
人間だからこそ、一人では寂しいのだ。同じ存在にそばに居てほしいのだ。
「舞衣姉さん。少し教えてほしいんですが…」
「なにかしら?」
「以前、司馬さんたちが井上先輩達を救助しに言ったときに、意味深な言葉を言ってたそうですね。その内容について、舞衣姉さんも知っているんじゃないですか?」
「ああ、器と水の例え話のことかな?」
「そうです。もう一度、俺達の前で話してはいただけませんか?」
「わかったわ、つまりね。私たちが作ったものは容器の中身であって、容器そのものじゃない。容器を失った中身の水は、ただ流れ落ちるだけ。そういう説明をしたんだと思うわ」
沙耶がメイから聞いていたという話を思い返す。
人間の記憶は2ペタバイトで補完できるが、魂そのものはゼータバイトを超える容量が必要…。
魂… 魂… 魂… そのもの… か。
ここのスパコン群がまさにそれに当たるじゃないか!
だとしたら。
「まだ、可能性は残っているかもしれない」
俺は周囲を見渡した。幸いにも沙耶の姿はない。
最期のピースを入れる時が、まさに今なのかもしれなかった。
俺は端末が横たわっているカプセルを開ける。そしてメイの耳元でそっと、囁いた。
それは、あの時に彼女が『名案だね』と言った言葉。
「メイ… いつまで眠っている。俺と”ケッコン”するんじゃなかったのか?
…そう、『死が二人を別つまで』」
カチリ、と音が室内に響き渡る…。
メイの瞳が見開かれた!その身体には力が入り、プルプルと震えている。そして、まるでロボットが起き上がるように …てか、アンドロイドなのだが… メイは直角に起き上がると、耳たぶまで真っ赤にしながら俺の方に向き直った。
「ままままますたぁ… いつから気付いて…」
「たった今だよ。こちらの身体を暴走させる訳にはいかなかった。だから、だと思う。もうひとつの、もしかすると未完成の身体の方を暴走させた… 違う?」
メイの表情は真っ赤にして硬いままだった。
「つまり、もうひとつあったんじゃないですか? メイの身体が。それも俺の血液と同じく、人間のものではないもうひとつのメイの身体が…」
「その根拠は?」
先生が聞いてきた。
「俺達の前で消えた、あのボディですよ。あれは明らかにアンドロイドのそれではなかった。それに…」
「それに?」
「矢野さん、言ってましたね。孵えるのが早すぎた、と」
「矢野さん、これはMAI-5000にハメられたと言うべきですかね?」
先生が笑いながら、矢野に意見を求めた。
「さぁて、どうでしょう。どちらにせよ愛衣の素体が崩壊してしまった今、もう一度研究をやり直す必要はあるでしょうね」
ハイ、これは意外でしたね~。
メイちゃん、一体いつごろから目覚めていたんでしょうか?
そこんとこ、研究者のコメントが必要になってきますでしょうね~。
いずれにせよ、良かった良かったwww
それではお時間となりました。
さよなら、さよなら、さよなら~♪




