街路樹は知っていた-07
ぜんかいのおはなし~!
彩花ちゃんが強化装甲服で活躍できることがわかりましたとさ。
おしまいっ!
さて、改めて各機のスペックを観ていこう。
俺達は学業そっちのけで、この強化装甲服のテストを繰り返している。AIが搭載されている現行モデルは丸みを帯びた四方型のヘルメット、西洋の甲冑を思わせるフォルムの胴体部と腕回り・足回りのユニット、そして全体的にゴツい印象を与えるローラーダッシュユニットの三種類のパーツで構成されている。肩のガードパットは丸く、また腰回りのスカートとサイガードパットで腰から下をガードしている。反面、背面や側面の防御は薄く、主に正面からの攻撃に対して『弾く』傾斜を形成している。手の甲にはギミックが施され、スパイクの付いたナックルガードがアームパンチを繰り出す際に自動で装着される仕様。キマった時には電磁パルスを流し込めるというスグレモノでもある。主に俺や一成、舞衣姉さんが着用しているのがこのモデルだ。他に標準装備として、M72A3を3発、左の腕に装着しており、加えて単発/連射切り替えの効くコイルガンを持っている。
一方、彩花(旧:司馬)専用モデルと野村・村川モデルは若干異なるフォルムをしている。もっとも異様な形状をしているのが村川のモデルで、背中に半球型のレドームが装備されているのと、大容量かつ脱着式のバッテリーパックが装着されている。また増加装備で超電磁投射砲を標準で持っており、トランスミッターを3回線切り替えて使うことができる。つまり、3発までなら連射が可能というわけだ。加えて通信機能が強化されており、全てのチャンネルで各機に指示を出せるようになっている。
一方の野村モデルは射程をほぼ無視した、装甲の厚いモデルとなっている。左腕には3つのM72A3、背中には襷掛けのように3発のLAMがセットされている。近接戦闘においてはその腕に鉄の爪が伸びており、アームパンチが繰り出せない代わりに引っ掛けて食い込ませ、敵を振り回したり電磁パルスを流すことも可能だ。
最後の彩花モデルは装甲が薄い反面で、軽くて可動範囲が大きい機体モデルとなっている。その両腕には唯一の防御盾とも言えるぶ厚い鉄板と射出式のパイルバンカーを武器としている。このモデルだけは両手にコイルガンを持つ以外に飛び道具はない。高度な操縦を要求される、使い手を選ぶモデルとなっている。
そして、繰り返しているこの強化装甲服のテストはその全てのデータが記録され、AIによって分析、強化装甲服の制御においてフィードバックされる仕様だ。故に、使えば使うほど乗りやすくなる。
肝心の司馬はどうしたかって?
打突部分を軽金属でカバーしたプロテクターとヘルメット、レシーバーを装着しての演習である。当然だが、防弾・防刃チョッキは着用だ。
「俺ぁ、飛び道具もあんまり得意じゃないんでね」
そう言って、コイルガンも持っていない。唯一の武器が電磁ロッドだ。
本当にどこまでチートな人なのだろう。
で、だ。
流石に対人用として実弾は厳しいので硬化ゴム弾を使用しているのだが、対アンドロイド線においてはアクリル弾の使用も厭わない方針である。
こうして36時間が経った頃だった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふう…ん、本当に体裁が整ってきたじゃないか」
俺はEVE-00から送られてくるログを読みながら呟いた。
『---ハイ、マスター。彼らの成長ぶりには目を瞠るものがあります---』
「本当だね。ボクも本当にビックリだよ。これならDOGS相手に互角に近い戦いも可能だろう」
『---ハイ、私もそのように分析します。しかし、相手は手練揃いのDOGSです。果たして上手くいくでしょうか?---』
「それはなんとも言えないね。だからこその君だろう、よくよく見守ってあげたまえ」
『---了解しました、マスター---』
どうやら俺のメッセージは上手く受け取ってもらえたようだ。俺は熱いコーヒーを淹れると、一口、喉に流し込んだ。後は彼らの活躍次第。果たして表と出るか、裏と出るか…。
◇ ◇ ◇ ◇
「アップル・ベイカー・チャーリー共に配置についた。送れ」
ザ…と回線の切れる音が耳障りに聞こえる。
「こちらR、B/Y共に配置につきました。いつでも作戦に移れます。送れ」
「本部了解。本日0100に突入開始。時間合わせ、ご… よん… さん… ふた… ひと… 今…! 作戦開始! 送れ!」
「アップル了解、送れ」
「ベイカー了解、送れ」
「チャーリー了解、送れ」
「R/B/Y了解、以上!」
作戦は開始された。俺は指揮所で全体の流れを把握しようと情報の到着を待つ。
ここ、仏生山公園の外れでは、工事を装って人の出入りを制限していた。これにはDOGSの下部組織を使っている。ガードマン的なことしかできない連中だ、深読みできるような輩は一人としていない。それだけの頭のある人間なら、とうにそこにはいないはずだ。場合によっては不慮の事故に合うことも可能性としてあるのだから。
遠くからボム…という音が響き渡った。同時に地面が僅かに震える。
「ベイカーより本部、穴は穿たれた。繰り返す、穴は穿たれた、送れ」
「本部了解、引き続き連携して任務に当たられたし。送れ」
………
◇ ◇ ◇ ◇
「本当にどういうことですの?」
訓練から戻った俺達を出迎えたのは、たった今到着したという秋帆だった。当然だが、右京・左京も同席している。
「こんな作戦があるということ、ひとつも連絡をくださらないなんて、心外ですわ!」
「いや、お嬢… 今回は本当にヤバいんだって」
村川が秋帆をとりなそうと試みる。しかし、こうなったら人の声を聞くような秋帆ではない。
「危ないなら尚更力になりたいと思うのが心情でしょう。それとも私とHIHの技術力を侮ってでもいらっしゃるのかしら?」
「そんなこたぁねぇよ。本当に今回はヤバいんだ。DOGSが直接ここに向かっているらしい。アンタ達の気持ちは嬉しいが、これは相当に危険な現場になる。どうかここは引いてくれ」
司馬が静かに語りかける。流石に秋帆も声のトーンを落とさざるを得なかった。
「でも、それは私が直接開発したドローンを観てからのお楽しみですわよ」
「ドローン?」
誰もがその言葉を疑った。しかし、右京が皆の疑問を払拭する一言を発した。
「そう、ドローンだ。人型ではないにせよ、これ以上ないほどの攻撃力をもった、防御に特化したものと思ってくれていい」
「防御に特化した… なのか?」
「ええ、どうせあなた達のことです。頭から突っ込むことしか考えていなかったでしょう。ですから、ここを守る最後の砦として開発を進めましたの」
「お嬢さんよ。もう一度確認するが、アンタは前線には出ないんだな?」
「ええ、あくまでこのドローンを操縦する立場として、ここで観ていますわ。くれぐれも見苦しい戦いをしないよう、お気をつけ遊ばせ」
司馬が最後の確認をすると、左京に向けて言葉を放った。
「…いいだろう。どうせ攻めてくるなら、表よりも地下の可能性が高い。ココの側にでも配置しておいてくれ」
「了解しました」
「頼りにしてるぜ」
突然、サイレンが鳴った。
「侵入者だ。爆発物を使用したと思われる振動も感知した。やはり、地下だったな」
矢野が震度計を観ながら報告を入れてきた。
「バッテリーの予備は?」
村川が一成に問いかけた。
「全員分、ちゃんと満タンにしてある! バッテリーパックの交換の途中だけど、あと2分で完了させるよ!」
「俺も手伝います!」
「俊樹クン、助かる」
「取り替えたバッテリーはちゃんと充電しておくようにな」
「ハイよ、司馬さん!」
「んじゃ、バッテリーパックを換装次第に出撃する。アウェーな場所をあえて選んできている連中だ、くれぐれも気を抜くな!」
「異議なーし!」
◇ ◇ ◇ ◇
ハイ、なんだか再びキナ臭くなってまいりましたね~。
しかも、今回は本物のPrivate Military Company、DOGSが相手です。
怖いですね~。恐ろしいですね~。
そろそろお時間となりました。
それでは皆さん、次回の講釈で。
さよなら、さよなら、さよなら~♪




