最後のオルゴール-06
ぜんかいのおはなし~!
メイが、その活動を停止してしまいました!
おしまいっ!
え…? 今なんて…?
俺は舞衣姉さんの言葉を疑った。けれど。
「メイちゃんの活動が停止してしまったのよ。俊樹クンが倒れた後、同時にアタシたちは再起動してきたあの二体に翻弄されててね、とてもキミとメイちゃんを守ることができなかった。申し開きもないわ。ごめんなさい」
俺は舞衣姉さんの言葉をひとつひとつ噛み砕きながら、理解に勤めた。
「で、彩花がここにいるということは、メイは連れて行かれたんですか? それとも暴走…?」
「…残念ながら後者なんだ。俺達も暴走したメイさんに救われたようなものでね、全く面目ない」
司馬が真面目な声で詫びを入れる。俺はもう一度、皆に問うた。
「…事の顛末を教えてもらえますか?」
◇ ◇ ◇ ◇
俺の声でレッドとイエローが再起動したことに気付いた司馬や舞衣姉さんたちは、防戦一方となってしまった。そして、俺にとどめを刺そうとしたブルーを吹き飛ばしたのが、青い光をまとったメイだったという…。
「鬼神… としか言いようがなかった。もともとメイドロイドとして作られたはずのメイさんに武器はないと思っていた。しかし、持っていたんだよ。凶悪なほどのレーザーブレードを…」
司馬は言う。
「位置的にあれ程離れていたお前のもとまで一瞬、ほんの一瞬だ。気付いたらブルーのやつはバラバラにされてた。そして俺達の方にも言葉の通り飛んできて、…本当に信じられなかったよ。相手にスキひとつも与えずに、一瞬でヤっちまった。杉山のヤツもそのあまりの強さにビビって、彩花ちゃんたちをおいてあっという間に逃げちまった。青い閃光… まさにそれだった」
「人間相手にも、メイは攻撃を仕掛けたんですか?」
「…ああ。小原ほどではないが、杉山もかなりの使い手だった。にも関わらず、まるで子供をあやしているかのように、何度も倒して遊んでいた。嫐って笑っていたんだ…」
「嫐って喜んでいた…?」
杉山が逃げ出した後、俺達に振り向いた時にニヤリと笑い…、メイはまるでスイッチが落ちるように、崩れるように倒れてしまったと言う。
「本当の話… なんでしょうね。それは事実なんだ」
俺の言葉を受けたのは、彩花だった。
「ハイ、先輩。私は見たんです。一成先輩たちに助け出された後、青く輝きながら、次々とアンドロイドを倒していくメイ先輩を。そして、あの男を簡単には倒さずに、まるでいじめているかのように何度も、何度も、起き上がらせては倒し起き上がらせては倒し… 。あれが同じメイ先輩とは思えないほど怖かった…」
「そうか。で、俺はどれくらいの間寝ていたんですか?」
「3日… 3日寝ていたのよ、俊樹…。本当に、本当に意識が戻ってよかった!!」
沙耶が抱きついてくる。おい、痛ぇってば。…でも心配かけたな、すまない…。俺は沙耶の頭を撫でながら、井上先輩に聞いてみた。
「で、俺の身体は現状どうなっているんですか?」
「まだ表皮だけ塞がっていないけど、深刻な部分の傷… 腹膜の方は完全に塞がってるわ。本当に信じられない回復の速さよ? あなた、本当に人間なの?」
「冗談でもそれはないでしょう、井上先輩。で、俺はいつ頃退院できるんですか?」
「多分、明後日には病院を出られそうよ。多少の傷みは残るでしょうけどね」
「それはもっと早く出られない?」
「いいえ。本来ならば、外傷性ショック死しててもおかしくない状態だったのよ。大腸にも大きな出血を起こしてたし、それだけでも死亡確定だったわ。もう少し検査入院しててほしいぐらいよ」
「そんなにひどかったんですか?」
「ええ。完全に動脈にまで傷が入ってた。典型的な死亡コースね」
「それは、俺が運が良かった…?」
「いいえ、運がいいだけではここまでの回復は見られない。現場での圧迫止血が行われていたとはいえ、腹部ドレン施術も必要ないだなんて、そんな症例は初めてだわ…」
「まぁ何にせよ、お前は助かったんだ。今度こそ命は大事にせんとなぁ」
「司馬さん、アンタが言っても説得力ないですよ」
「どっかのドロボーさんみたいに、3日で大口径の銃創を全快させるような奴にゃ言われたかぁないね」
◇ ◇ ◇ ◇
「で、肝心のメイはどうなったんですか?」
俺は視線を舞衣姉さんに移した。
「今、フロンティアの技術者にも手伝ってもらってるわ。でも、未だに沈黙の状態よ」
「そう… ですか。俺、会うことはできますかね?」
「今会っても辛いだけだわ。きっとね」
「大丈夫です。覚悟はできてます」
「…了解、いいわよ。でもどうか、今の彼女を否定しないであげてね」
どういう意味だろう?
それほどまでにひどい状態なのか?
まぁあるがままを受け入れるしかない。
俺はそう自分に言い聞かせて、再び眠りにつくのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ほほう、俊樹クンが目を覚ましたと?」
『---はい、マスター。ほぼ完全に回復しています---』
「それにしても、キミからの報告では完全に死亡していてもおかしくない程の重症だったはず。どういうことかな?」
『---はい、その点については井上教授も首を傾げていました。単なる偶然や運のよさでは片付けられないと---』
俺はEVE-00からのログを読みながら、古川俊樹という青年の存在について思いを巡らせていた。そう言えば、何故MAI-5000とのペアリングが彼でないといけなかったのか。俺は淹れたてのコーヒーを飲み干すと、窓から一望できるT市を眺めてみた。
『---マスター、私への指示を---』
メッセージ・ログの到着を告げる信号音が鳴った。
「…では、告げる。EVE-00、お前は…」
◇ ◇ ◇ ◇
おや?
俊樹クン、なんだか彼にも秘密が隠されているようですね?
即死レベルの怪我が、短期間で治癒してしまう… そんなことがあり得るんでしょうか?
怖いですね~? ちゃんとSFしてますね~? (ホントか?)
そろそろお時間となりました。
ではでは皆さん、さよなら、さよなら、さよなら~♪




