最後のオルゴール-05
ぜんかいのおはなし~!
俊樹クンが、負傷しました…おしまい。
「…マスター! …マスター!」
遠くでメイの声が聞こえてくる。
パン・パン・パン!
パイルバンカー射出を思わせる音も、薬莢と共に焦げた炸薬の匂いも。
皆が戦っている。かなり苦戦しているようだ。
マズい、俺も早く戦線に復帰しなきゃ…
俺は両腕に力を込めて、立ち上がろうと試みた。
「マスター、駄目…!!」
腸がズル… と身体からはみ出ている。これは流石にマズいよな…。
しかしッ!
俺は力が入らない足をバタつかせながら地べたを這いずる。
痛ェ… てか、痺れるよ。痛いの通り越したら、脳内麻酔が出てくるっての、本当の話なんだな。
「…許さない。私のマスターを、許さない…!」
熱気?
ここまで熱気が伝わってくる。
熱ぃ… 熱ぃ風がここまで流れてきてるぞ。秋帆、左京! メイを止めろ…。
「よくもマスターを… ワ タ シ ノ マ ス タ ー ヲ …!?」
「止めろォォォォ!!」
「メイちゃん、駄目…!!」
カチン…
静寂の中で、何かのスイッチが入る音が聞こえた。
「…起動… 起動を確認 …強制解除コード確認 …モード『却来華』発動… わ たし は …」
俺は薄れ行く意識の中で、青く輝くメイの姿を見た。
「わたし… わ ZE-AAMY… 回路切断…デストロイモードに… 移行… し ま す…」
そして、俺の意識は途絶えた。
◇ ◇ ◇ ◇
見知らぬ天井がそこにあった。
ここは? 一体どこだ? シーリングファンがクルクルと回る。
俺の腕には管が繋がれ、身体のあちこちには様々なセンサーが装着されている。
俺は首を横に向けた。ベッドの脇には沙耶が、真っ赤に泣き腫らした眼をして眠っていた。
点滴がポツリ、ポツリと落ちていく。
俺は可能な限り首を回して状況の把握に努めた。
ここは… 病院か? それにしても、あまり大きな病院ではないらしい。急拵えと言った感じの個室だ。
そう言えば、メイは?
メイの姿が見えない。アイツは一体どこへ行った?
痛ッ! 俺は下腹部に針で刺したような、それでいて鈍く強い痛みを覚えた。
思い切り首を起こして、痛みの方向に目をやる。
大げさなほどの、包帯と血の跡。
おいおい、マジかよ…。
あれは夢じゃなかったんだな。
俺は、殺されかかったんだな。
全く …戦力にならなかったんだな…。
涙が、溢れた。ただただ悔しかった。
それにしても、他の連中はどうなった?
ここにいないメイは?
俺は毛布で涙を拭うと、自分の身体を揺すってみた。
「…俊樹…?」
「起きたか、沙耶」
「俊樹、俊樹! よか…っ …ああ、ちょっと待ってて! 先生を呼んでくる」
沙耶は慌てたように部屋を飛び出していった。その間に、今までに起きたであろうことを整理しようと試みた。
しかし、あまりにも情報が少なすぎる。
メイに起きた現象… ありゃ一体何だ?
メイの身体が青く輝いていた。
あれはどう見ても、完全に意識を消失した状態だった。
却来華? それはどういう意味だ?
ZE-AAMY… そうか、アレは世阿弥と呼ぶのか?
そう言えば、能楽の何か… なのか?
そこにヒントがあるのか?
◇ ◇ ◇ ◇
井上さんが来ていた。
そこには包帯を身体のアチコチに巻きつけた司馬や、村上や、野村・一成・舞衣姉さん・…今回の作戦に参加した面々が揃っていた。そして彩花も、心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。そうか、一応、救出作戦は成功したんだな。
ただし、たった一人… メイを除いては。
「顛末を聞かせてもらっていいですか?」
「思った以上に冷静なんだ、俊樹クン」
舞衣姉さんが冷静を装いながら一言。
「一応、アタシから報告させてもらうわね。落ち着いて聞きなさい」
舞衣姉さんは、大きく一呼吸おいて、続けた。
「メイちゃんが、活動を停止したわ…」
ハイ、メイちゃんが活動を停止した?
一体どういうことでしょうね?
詳細はまだはっきりとはわかりませんが、気になりますね~。
ホント、どうなっちゃうんでしょうね~?
それではお時間となりました。
また次回でお愛しましょうね、さよなら、さよなら、さよなら~♪




