最後のオルゴール-03
ぜんかいのおはなし~!
彩花ちゃんが誘拐されちゃいました!
おしまいっ!
◇ ◇ ◇ ◇
「さぁて、準備と配役は整ってきたな」
俺はEVE-00とログで連絡を取っていた。
「---しかし、よろしいのですか? 四菱が投入してきた01Jは私よりも強いかもしれません。ダウングレード版とはいえ、Kyakuraikaが搭載されていないバージョンです。その身が壊れるまで戦闘をやめようとはしないでしょう---」
「いいのだよ、そのための君だ。万が一には起動することを許す。そうでない限りは…」
「---あくまで静観せよと---」
「そうだ。ボクは三本の矢が構築したオリジナルの性能を見たいのだよ。MAI-5000の本気を、だ」
「---現状ではまだそこまでの性能を見せてはいません---」
「キーマンとなる人物の犠牲が必要だ。少なくともMEI-5000の戦闘プログラムが完全に起動するまで、待て」
「---了解しました、マスター---」
そう言えば、今度俺を追いかけてるのは杉山太一郎と言ったか? また厄介な男を回してきたものだ。押井譲門下生の中でも特に武闘派の男だ。下手に相手にしていては何をしでかすかわからない。
俺は淹れたてのコーヒーを一口含むと、大きなため息をついた。
◇ ◇ ◇ ◇
「さぁて、これが私の可愛いドローンたちですわ!」
4t規模の輸送車両に8体のアンドロイドが座っていた。いずれも以前ライオン通りで戦ったものよりもパワーアップしているという。
「そりゃね、あなた達素人相手に負けてるようじゃ、HIHとしても恥ずかしい限りですものね」
「…お嬢、やるねぇ…。戦力が増えるってェのはありがたい話なんだが、本当に大丈夫かい?」
と、司馬。どこか懐疑的だ。
「あら。でしたら一度お相手してみましょうか? おそらくですが、前回とは比べ物にならないはずですわよ?」
「分かった、信用する。とにかく、だ。坂本嬢の話から推測するに、敵さんの総数は少なくとも3人。それに対してこれだけの包囲網を築くんだ、結果は目に見えて明らかだろう」
司馬は全員を見渡すと、檄を飛ばした。
「ヤるぜ、野郎ども。彩花ちゃんを無事に奪還だ!」
「「異議なーし!」」
◇ ◇ ◇ ◇
「で、小原一馬の動向は掴めたのかね?」
押井譲は灰皿でタバコの火を消しながら、モニター越しにその男に問うた。
「いいえ、しかし、今回起こすアクションで尻尾を出すかもしれません」
「そう言えば、富野のところに来たあの… 平野文雄と言ったか? 素性は確かなのか?」
「はい。今のところ書類に不備はない模様です」
「…そうか。Kyakuraika-Programは富野が構築したものだ。この本性を垣間見ることができれば御の字だな」
「そうですね」
「小原一馬… 一体何を考えている…? DOGSを敵に回してまで何をしようというのだ? 何にせよ、いずれは網にかかるだろう。その時に彼奴の本心を聞いても遅くはないだろう」
押井は視線をモニターから外すと、新しいタバコに火をつけるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「では時間合わせだ。…じゅう …ご …よん …さん …ふた …ひと …いま!」
19時50分、俺達はK更生施設跡を取り囲むように各個ポジションに付いた。
「誰も一人で来いと入ってねぇもんなァ…」
司馬はニンマリと微笑んだ。
中心にはメイさんと俊樹。その影に隠れるようにHIHのアンドロイドが配置されている。現在のスペックならば、有事に際しても十分に間に合う間合いのはずだ。俺達はそれらアンドロイドを前面に出し、撃ち漏らした敵を叩く。これは司馬・野村・村川・左京・舞衣姉さん・それとHIH製アンドロイドを指揮する秋帆で当たる。
で他のメンバー…、三田さん・右京・一成が裏口から彩花ちゃんの救出に向かう手はずだ。
「ようし、準備万端だ。行け、俊樹!」
「了解!」
俺は打ち合わせ通りメイを連れて広場の中央に位置する。そして、宣言した。
「来たぜ、EVE-01J! 一体どこだ?」
しばらくすると、建物の闇の中から一人の男が登場した。
ガッチリとした体躯は、ひと目で只者ではないとわかる。その瞳は鋭く輝き、ニンマリと笑う口角は司馬の浮かべるソレとよく似ていた。
「まぁそんなに焦る必要もないじゃないか、古川俊樹君。私が小原一馬の後任、杉山太一郎だ。随分と大人数で来たみたいだが、果たして戦力的に釣り合うんだろうか?」
「それは、そっちが不利だって言いたいのか?」
「いいや、全く逆だね」
杉山は腕を振り上げた。建物の奥から3体のアンドロイドが姿を現す。しかし…
「へぇ… EVEナンバーになってると思ったら、随分なダウングレードなんだな」
球面が特徴でメタリックボディのEVE-00とは大きく異なり、軽量化のためか樹脂で作られたようなボディ。両耳に特徴のある鋭いデザイン。
「随分と悪役面のアンドロイドなんだ。本当に大丈夫か?」
「言うねぇ… ハハ、実に面白い! 物を知らないとは、実に怖いもの知らずだな!」
杉山の腕が振り下ろされた。
サク… サク…
3体のアンドロイドは足並みを揃えて、ゆっくりとこちらに向かってくる。
10m… 8m…
俺は目測で間合いを測る。
5m… 4m… 今!
俺はメイに覆い被さるように身を潜めた。この次の瞬間にはHIH製のアンドロイドが俺の頭上を飛び越えて敵に襲いかかる手はずになっている。
が…。
ガン! …ガツン! …ガガン!
頭の上で、次々と金属が打ち砕かれる音がする。そして、ポトリ、ポトリとスローモーションのように大口径の薬莢が排出されていた。
「!?」
俺は視線を上げた。そこにいたのは、ドローン・アンドロイドの第一波を退けた三体のEVE-01J…。
一体は赤いストライプを施された、三体の中ではもっともヒトに近いフォルムをしていた。しかしその眼前には、炸薬で強化され打ち出されたその腕でコアを撃ち潰されたドローン・アンドロイドが、虚しく立ち尽くしている。まるで『アームパンチ』の一撃を食らったかのようだ。
一体は黄色いストライプを施された、肘関節のないタイプのように見受けられた。背中には径50mmはあるだろうか、何本かのニードルが装着されている。その手のひらとおぼしき箇所には穴が穿たれ、もくもくと煙を上げている。その腕の延長線上には、先のニードルが突き刺さったままのドローン・アンドロイドが虚しく沈黙していた。
一体は青いストライプが施され、その腕が鋭く尖っていた。それはまるで炸薬で稼働する油圧ブレイカーとも言うべきもの… 俗に言う『パイルバンカー』そのものであった。その腕にはコアを貫かれたままのドローン・アンドロイドがブラブラとぶら下がっている。
「なんだよ、コレ!? パワーアップしたって言ってたんじゃないのか?」
「私だって想定外ですわ! ここまで戦闘に特化したアンドロイドなんて、アンドロイドなんて…」
「第二波だ!」
司馬が叫んだ。
秋帆は手元のタブレットから幾つかのプランを選択し、残り五体のドローン・アンドロイドに送信する。五体のドローン・アンドロイドはそれぞれ三体のEVE-01Jを取り囲むように配置した。そのスキに、俺とメイは戦線を一旦離脱する。
「…こんどこそ仕留めてみせますわ。…Go!」
四方八方から三体のEVE-01Jに襲いかかる。
まず動いたのは黄色いストライプのEVE-01Jだった。
腕を真横に上げ背中に装着されたニードルを自動で装填する。そしてその腕をドローン・アンドロイドに指向すると、火花とともにニードルを射出した。そのニードルは戦闘を走るドローン・アンドロイドを捉えると、そのままコアを貫き、後ろの大木に突き刺さる。
黄色、次弾装填。
その間に動いたのは、青いEVE-01Jだった。
その腕にぶら下がっていたドローン・アンドロイドをブン… と投げつけると、それを避けてもっとも大きく体を崩した一体に襲いかかる。
パァン…! という音と同時に炸薬の臭いが辺りに漂い、ガス…ッ というコアを貫く音が響いた。そのままもう一体へと襲いかかると、左腕からのマズルフラッシュの輝きが見える。この青い奴は、一瞬にして二体のドローン・アンドロイドを沈黙させた。
赤のEVE-01Jが動いた。それは言葉の通り飛びかかると、腕の横からマズルフラッシュを連発させた。ガガン… ガン…! その音が鳴る度にドローン・アンドロイドの胸が撃ち叩かれて潰れていく。ポトリ・ポトリ… と薬莢が排出され、そしてコアを潰された一体は沈黙。
最後の一体を沈黙させたのは黄色のEVE-01Jから放たれた一発だった。
「それにしたって、一瞬だなんてよォ…。ちょっと予想の斜め上だったぜ」
司馬がその場に出てきた。
「ホントね。アタシも正直ビックリだわ」
舞衣姉さんも隠れていた木陰から登場する。
「全くだな…」
「呆れた強さだぜ」
「やれやれですわ」
野村・村川・左京もその姿を表した。
「俊樹クン、わかってるわね? メイちゃんを戦わせちゃダメよ」
「わかってますって!」
俺は手元に忍ばせておいた電磁ロッドに手を伸ばし、最大出力にして振り抜いた。ロッドは一気に伸び、50cm程の長さになる。他の連中もそれぞれ手持ちの武器を持ち、構えた。
◇ ◇ ◇ ◇
「さぁて、EVE-00(おまえ)の目を通して、01JとMAI-5000の性能を見ることができるかな?」
「---さぁ、現状では何ともいえません。まずはココから出ないことには…---」
ハイ、EVE-01Jと杉山太一郎が登場しましたね。
登場人物がどんどんと増えていますが、大丈夫? ついてきてますか?
お話の進行上、どうしても必要になりますので、登場させざるを得ませんでした。申し訳ない。
そんな訳で、そろそろお時間ですね。
さよなら、さよなら、さよなら~!




