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最後のオルゴール-02

ぜんかいのおはなし~!


舞衣姉さんが帰ってきた。コンというマスコットロボットを連れて。

おしまいっ!

それは9月に入ってすぐのことだった。

富野研での作業中、突然携帯のベルが鳴り響いた。

見ると、ナンバーは彩花のもの。こんな夜遅い時間帯に一体なんだろう?

「もしもし?」

「……」

「もしもし?」

「せ… 先輩、助けてください」

受話口からは切迫した彩花の声。次の瞬間には、電話を発信している地点を探るアプリを起動していた。

そこは、五色台の山の中を示していた。俺は司馬たちに聞こえるように、スピーカーモードに切り替えて話を続ける。

「どうした? 一体何があった?」

「あの… 怪しい人達に後を付けられてて…」

「場所は… 随分と離れているじゃないか? 一体どうしてそんなところに?」

「友達と星を見に来ていて、その… いま彼女は近くの施設まで助けを呼びに行ってまして…」

「で、キャンプ場なわけだな?」

「そう… そうです。今広場のコテージの影に隠れて…」

「警察には?」

「電話しました。でもなかなか来てもらえなくて…」

「…分かった、今行く」

「早く… 早く来てくださいね、先輩」

俺は振り返ると、研究室内にいる司馬たちに向かって言った。

「…聞いたとおりです。司馬さん、俺、行ってきます」

「一人で大丈夫かぁ~? そういう時こそ頼ってもいいんだぜ?」

軽い口調で、村上。

「じゃ、気兼ねなく!」

ニィ… と司馬の口角が上がった。

「おうさ、行くぞ野郎ども!」

「「異議な~し!」」

こうして俺のセローと一成の運転するバモスは富野研を出発したのだった。

「あの… 皆さん、気をつけて…。娘をお願いします…」

それにしても、自分の娘のことなのにあまり動じてない人だな、センセイは。


五色台。

K県の中央に位置する山塊の総称である。カンカン石とも呼ばれる、サヌカイトという珍しい非常に緻密な古銅輝石安山岩が採れることでも有名な場所だ。メサと呼ばれる独立峰であり、広い台地を形成している。また近所に民家が少ないことから星を見に来るカップルも多く、また、昔から伝えられる面妖な伝説も残っており一種の霊場としても知られている。

俺はバモスの助手席にいる司馬に携帯を渡し、彩花と連絡を取り次いでもらっていた。


時間は既に午後九時を回っていた。

戦闘を走るバモスからホワイトボードが示される。

『ヤバい、連絡が途切れた』

なんてこった! 俺はアクセルを思い切り回した。


◇     ◇     ◇     ◇


「わたし、坂本千奈といいます。彩花とは編入以来の友人で…」

警察が来ていた。その場にいた俺達も当然のように事情聴取を受けてる訳で… まぁ事情と着信・発信のログを見せたらあっさりと釈放されたのだが… 俺達も改めて友人さんに事情を聞いているところだった。


彩花をさらっていったのは、女性の集団だったかも、とのこと。

[そう、あの時の人影はとても小さく、身長は150cm位。人数は分かる範囲で4~5人でした。最初変質者かもと思ったんですが、明らかに彩花を狙ってた感じがします」

「特にどこかへ連れて行くというようなことは、聞いてませんかね?」

司馬が慎重に言葉を選びつつ、坂本嬢に質問する。

「いいえ、何も聞いてません。…お役に立てなくて、ごめんなさい…」

坂本嬢の瞳から大粒の涙が溢れる。無理もない、誘ったのは彼女の方だったというのだから。

「待つしかない、か」

司馬がため息混じりにこぼした。


◇     ◇     ◇     ◇


「皆さん、お茶にしませんか? 考えに行き詰まった時には、少し休憩を入れるのが得策だと思いますよ」

富野研に帰った時には連絡を聞いたメイと沙耶が来ていた。

「でも、どうして彩花ちゃんが? 彼女を誘拐して、何らかのメリットでもあるのかしら?」

考え込んだ様子で沙耶。どうも納得いかないようだ。

「何より、センセイが平然としているのが納得いかない。仮にも自分の娘でしょうに!」

「いえいえ、動揺していますよ? コレでもあの娘の父親です。どうして心配していないなんて事がありましょう?」

平野センセイは新しくコーヒーを淹れると、それを一気に飲み干す。そしてまた新しい一杯を淹れに行くのだ。なるほど、一応動揺はしているらしい。


「で、警察はなんと?」

センセイは司馬に話を振った。

「相手からの連絡がないことにはなんとも… 一応検問はかけているようですがね」

「私は心配です。彩花さん、もしかすると私のために拐われたんじゃないかと思うと…」

「考えすぎだよ、…考えすぎだ。もしそうなら、もっと身近な俺や沙耶が被害に合うだろうし、それに…」

俺はメイに静かに、しかし明確に宣言した。

「それに?」

メイは俺の言葉を受けても尚、心配な様子を隠し得ない。

「おそらく、近いうちに連絡が入るだろう。秋帆にも手を貸して貰って、全員で救い出す…!」


「いい? メイちゃんだけは戦いに巻き込んじゃダメ。もしそれでメイちゃんが暴走したら、メイちゃんは下手すると死んでしまうわ」

舞衣姉さんの言葉が頭をよぎる。ここはメイを戦力から外すか?


「いいえ、マスター。私も連れて行ってください。必ず戦力になってお見せします。私、戦うメイドロイドなんですから」

雰囲気を察したのか、メイが名乗りを上げる。確かに、庵治での戦いぶりは見事としか言えなかった。

「よし、来るか?」

「了解です、マスター!」


その時だった。俺の携帯がけたたましく鳴り響く。画面表示は… 彩花。俺はすぐにスピーカーモードに切り替えて電話に出た。

「…もしもし?」

「…あなたは誰ですか?」

明らかな少女の声。これは一体…?

「それはこっちが聞きたい。彩花は大丈夫なのか?」

「彩花さんは今のところ無事ですよ。今のところは… ね」

「証拠を聞かせてもらおうか?」

「…わかりました。少しお待ちを…。」

抑揚のない声で、その電話の主は彩花と入れ替わった。

「先輩! 先輩! 先輩!」

「彩花か? 今どうしてる?」

「手足を拘束されています。一応、まだ元気です!」

「…もういいでしょう? 私たちはあなた方との取引を望んでいます」

「取引?」

「ええ、MAI-5000 Type-Xを連れてきなさい。このアンドロイドと彼女を交換… ということではいかがでしょう?」

「ふざけるな! …もしかしてお前、EVE-00か…?」

「いいえ。違います。EVE-01Jと申します。こう言えば私達の素性も目的もおわかりかと。…違いますか?」

「四菱… か?」

「はい。ですから警察には黙ってていただいています。なにせ、この国の防衛に関わることですから…」

「小原一馬の指示か?」

「いいえ、我々の独断です。我が主はDOGSの副長でもある杉山太一郎…。任務を放棄した小原一馬は見つけ次第処分となりましょう」

「処分? 放棄した?」

「はい、今も小原一馬はEVE-00と共に行方をくらませています。これは誠に由々しきことです」

「…わかった。で、場所と時間は?」

「五色台のK更生施設跡。明日20時に現地にてお待ちしています。くれぐれもMAI-5000をお忘れなきよう…」

プツン! と電話が途切れた。


「さァみんな、聞いてのとおりだ。警察が当てにならんと言うなら、俺達がやらにゃなんとする。彩花嬢の救出を図りたい。…どうだ?」

司馬が気勢を上げる。

「「異議なーし!」」

「し、しかし、それではあなた方が危険な目に合うかもしれません。富野教授から皆さんの身柄を預かっている以上、無茶なことは…」

「無茶? センセイ、無理無茶無謀は俺達の三大原則ですぜ。なぁに、ご心配なく。必ずお嬢さんを連れ帰ります」

村川がその場を収めた。

「腕がなるなァ… 前回のアンドロイド戦よか、ずっと役に立てそうだ!」

とは、フンフンと腹筋を鍛えていた野村。

「幾つかの武器の実証実験もできそうだね」

とは一成の言。

「俺だって、メイを… 俺を変えてくれた大事なこのアンドロイドも彩花も守ってみせる!」

俺は呟いた。

「舞衣姉さんにも連絡は付けておいたほうがいいよな?」

村川が司馬に確認を取る。

「勿論だ、戦力は多い方がいい。できれば秋帆お嬢さまにも連絡をとっておいてほしいね」

「了解!」

はい、なんだか急展開になってきましたね~?

拉致された彩花ちゃんの運命はどうなるんでしょう?

おっと、もうそろそろお時間です。

それでは皆様、さよなら、さよなら、さよなら~♪

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