あの日のままで-08★
ぜんかいのおはなし~!
時はお盆、その帰り際にEVE-00に襲われる俊樹クンたちでした。
撃退はしたけれど…
では、続きをお楽しみくださいねっ!
◇ ◇ ◇ ◇
‥デイジー デイジー ハイと言ってよ
あなたへの想いに おかしくなりそう
洒落たお式は 無理かもしれない
でもその時 あなたはきっと素敵だよ‥
遠い記憶、俺の夢の中で何回も再生される光景。
白いワンピース、長い黒髪の女性。
「責任取ってね」
「!?」
一体何のことだ? 俺は何か責任取らなきゃいけない何かをしてしまってたのか?
ニッコリとほほえむ女性。逆光で見えなかったその顔が、見える‥
「‥メイ?」
「違うわ。けれど、あなたにとって、とても大切な娘よ‥」
鈴を鳴らしたかのような心地いい声。その女性は再び遠くを見つめて、続けた。
「どうか、大切にしてあげてね‥ お願いよ‥」
そして、目が覚めた。
◇ ◇ ◇ ◇
目覚ましの音とともに、站椿訓練を終える。
顔を洗って、歯を磨いて、簡単に髪を梳く。
‥そろそろかな?
「俊樹、起きてる‥かな? 朝ご飯作りに来たわよ! 速やかに開けなさい。さもないと実力行使に出るんだから!」
「先輩! おはようございます。今朝もご相伴に預かりますね♪」
「本当に申し訳ないね。私が不甲斐ないばっかりに‥」
「と~し~き~く~ん! お~は~よ~! 今日も朝飯食いにきたぜ!」
「いやぁ、実に騒がしくって起きてしまいましたわ。責任、取ってくださりますわよね?」
「「おはようございます」」
「いやぁ、本当に賑やかなのはいいねぇ! 今日もごちそうになりにきたよ!!」
そして、皆が名の登場を待つのだ。やがて良い香りが部屋いっぱいに充満してきた頃…
「皆さん、お待たせしました! 今日はほうれん草と白魚のおひたし・メインディッシュには鮭の切り身を焼いてみました。付け合せには広島菜・お味噌汁の具はおネギと油揚げです! さぁ召し上がれ!」
「「異議な~し!!!」」
こうして客観的に見ると、まんざら悪くもない。最近になってそう思えてきた。
おそらく、俺が変化したのだろう。今までならば考えられなかったことだ。
それから、司馬と舞衣姉さんとを相手にした毎朝毎夜のトレーニングも悪くない。
ああ、そうそう。
仕事は相変わらず先輩様々の助力を得て、なんとかやっている。
◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇ、俊樹ったら何ぼ~っとしてろの? 一体どうかしたのカナ?」
微笑みながら沙耶が顔を覗き込んでくる。そう言えば、パソコンを打ち込む手が止まっていたな。
俺は自室で受注作業をしていたところだった。そういやここのところ多忙で、あまり寝てなかったっけか。疲れ、溜まってるのかな? まぁ少し休憩するのもいいだろう。俺は作業の手を止めて、沙耶の問いに答えてみた。
「ああ、ちょっと、ね。最近良く昔のことを思い出しそうな… そんな夢を見るんだ」
「夢… ですか?」
メイも会話に混ざってきた。
「そうだよ、メイ。夢だ。そう言えば、アンドロイドは夢を見るのかい?」
「勿論、見ますよ。なにせ、私は特別なアンドロイドですから」
「そうなんだ。例えばどんな夢を見てるの?」
「電気羊とか?」
俺のジョークは、メイにはウケたようだった。
「じゃ、俊樹は?」
沙耶の問いに、俺は思い返すように答えた。
「そうだな… とてもきれいな女性が、その… デイジー・ベルを歌っているんだ。白いワンピース姿で、大きな帽子をかぶっていて、黒くて長い髪が印象的な女性の夢。そう言えば、メイに似ているな… こう言うと沙耶に怒られそうだけど」
「ふふ… 怒りはしないわよ。あたしとの思い出じゃないってところだけ気になるけれど」
「それはですね」
メイが口を開いた。
「私がピピピっと念を送っているからですよ、きっと。昔のこと、思い出していただきたいですもの」
「ピピピって、超能力みたいね」
沙耶は笑った。
「想いは音叉のように同調するんです。私が強く想うたびに、マスターも反応しているんですよ、きっと」
「…そういや、以前にもそんな話をしていたわね? あれはどういうこと?」
沙耶とメイ、そういう話をしてたんだ。そういやこの二人、よく一緒に行動してたっけか。
「私はあの日のこと、よく覚えています。私が入院していた時に、よく遊びに来てくれていたときのことも」
「「入院?」」
「あ、口が滑っちゃいました。忘れてください。でも、これくらいはいいかな?」
「入院って… メイはアンドロイドなんだろ? どうして…?」
「禁則事項です♪」
コンコン!
玄関のドアをノックする音が聞こえてくる。
「先輩、いらっしゃいますか?」
「ああ、彩花ちゃんか。いいよ、入って」
「では遠慮なく。失礼しま~す!」
相も変わらず元気な声。本当にいい子だな。
「先輩、質問! 最近朝も早いし夜も遅いし、一体何やってるんですか?」
実にストレートに聞いてくる。俺は少し考えて、こう答えた。
「最近お腹が出てきててね、ダイエットの運動をしているんだ」
「えええええ? 全然そんなことありませんよぉ。ウチのお父さんに比べたら、ずっとスリムですってば!」
彩花は言葉の通り遠慮なく、俺の腹を触ってきた。
「ほら、筋肉!」
「な、何やってんのよ? いきなり俊樹のお腹に触るなんて!」
「ん? 沙耶も触るか? 特訓の成果もあって、ちょっぴり筋肉ついてきたぞ」
「そういう問題じゃありません!」
なんだか怒られてしまった。
「マスターは今、大事な時なんですよ。がんばりやさんなんです。 ね、沙耶さん」
「そそそ、そうなのよ。頑張ってるのよ」
「じゃ、先輩、わたしもそのダイエット、付き合ってもいいですか? 最近二の腕のポニョポニョが気になってて…」
「ダメ! 俊樹には俊樹のペースがあるんだから。それよりあなたは食べる量を減らすことのほうが先決よっ!」
沙耶がピシャリ! と言ってのけた。
「…そうだな、ちょっと女の子にはハードだから、まずは無理のない程度に食事制限から始めるのがいいかもな。でも、食事を抜くってことはしちゃダメだぞ。ちゃんと食事を取って、少し運動してくらいが丁度いいんじゃないかな?」
「先輩…」
彩花の瞳がウルウルしている。なにか悪いこと言ったか、俺?
「嬉しいです! そんなにわたしのこと、心配してくださるなんて! だから大好きです!」
「!」
「!?」
彩花は人目もはばからず、大胆にも抱きついてきた。
「ななななななななななな!?」
沙耶、呂律が回ってないぞ」
「マスター… 分かっていますよね?」
ちょっと、メイ。お前そんな表情で俺を見るな! これは不可抗力だ!!
「で、今日は研究室へは出られるんですか?」
「ああ、もう少し片付いたら出るつもりだ」
「ご一緒してもいいですよね? さっきまで先輩を探して研究室にもいってたんですけど」
え~と、彩花さん、腕を組むのはいいけれど、先程から女性陣が怖いんですけれど?
「あ、ああ。いいよ」
「とぉぉ~しぃぃ~きぃぃ~!」
なんだか背中から、凶悪なオーラを感じているのは気のせいではないだろう。
「勿論、沙耶たちも一緒だ。どうせなら多いほうがいいからな」
「異議な~し、です♪」
「ふん!」
「マスターの朴念仁!」
どうしてそこまで言われなければならない?
俺は疑問を抱えつつ、仕事に取り掛かるのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
一… 二… 三… ざっと見ただけで三人か。ちょっと厳しいかな?
アタシは裕二の運転する車のなかから、ざっと数えてみる。
「舞衣ちゃん、本当に相手にしてみるつもりかい?」
「今すぐは無理よ。だって相手は少なくともSクラスのエージェントだもの」
アタシは司馬くんからの情報を思い返していた。
「いいですか、舞衣先輩。小原一馬は少なくとも特戦群にいた可能性があります。それも習志野ではなく西普連で。四菱の押井譲とはそこで接点があると思われる。当然DOGSのエージェントも動いているでしょう。くれぐれも気をつけてください」
アタシが善通寺以後の一馬の動向を知ったのは、主にこの後輩くんたちからの情報だった。大体MITにいたことだって知らなかったのだ。早くから情報を真っ先に教えてくれた彼らには、感謝しかない。それにしたって何故アタシたちから離反した?それすら全く想像できない。アタシたちはひとつの計画に沿って動いていたはずだった。いったい、何故?
あの日の頃が懐かしい。もう二度と帰っては来ないのだろうか?
今も後輩くんたちはDOGSの監視下に置かれている。下手に動けば刃傷沙汰だ。それだけは避けなければならない。もっとも、ここは法治国家日本だ。最悪の指示が出ない限りは向こうだって下手は打てまい。問題は…
今DOGSを動かしているのは誰か、ということだ。
アタシは目で合図をすると、裕二の運転するVW-T1はゆっくりと動きだした。
ハイ、なんだか俊樹クンたちの周囲がわかって来た模様ですね?
司馬くん達、監視されてたんですね。
怖い怖い、本当に怖いですね~
これから一体どうなっていくんでしょうかね~
では今日もお時間となりました。
さよなら、さよなら、さよなら~♪




