あの日のままで-04
ぜんかいのおはなし~♪
季節外れの8月頭。平野助教授とその娘彩花がやってきた。
ハーレム率が増えたぞ!
おしまいっ!
◇ ◇ ◇ ◇
「ふ~…」
俺は大きく伸びをすると、一口、紅茶を口に含んだ。もう随分冷めてしまっている。
窓の外は既に暗く、少し頑張りすぎたようだ。俺は研究室を出ると、新しい缶紅茶を買いに外へ出た。夏とはいえ、この時間になると少しだけ涼しい風が吹く。俺はこの瞬間を愛でることに吝かではない。ちょっとしたこととはいえ、なんともいい気分転換になるもんだ。。
ザ… ザザ… !
地面を擦る音が聞こえる。こんな時間に何の音だ?
俺はその音の元へと向かった。
司馬が、上半身ハダカになって何かをやっている。
おいおい、真夜中の変態行為はヤバいって…
そう言って、止めようとした。
ザ… ザザ… !
司馬は左半身で体を右に捻りながら、体をゆっくりと沈めて…
一体何をやってるんだ?
俺は少し様子を見てみることにした。
ザザ… ザ…
司馬はその体を伸び上がりながら捻った身体をもとに戻し…
強く左足右足で飛び出しながら… 右足を前上方へ蹴りだした!
「!?」
なんだ、あれは?
すごい距離を飛んで… 移動していた。
再び司馬は手足を大きく捻り、構え、また同じポジションに入る。
ザ… ザザ… !!
そして、身体を大きくひねると…
ザッ!
瞬時に3~4mは移動している。
気付いた時、俺は司馬の方へと駆け出していた。
「おう、俊樹か。こんな遅くまでどうした?」
「いや、今の… 何なんですか?」
「ああ、見てたのか? これは『箭疾歩』と言ってだな。一気に間合いを詰める技よ」
「なんだか不思議な動きだった… 拳法か何か…?」
「そうだ、俺が学んでいる拳法の極意のひとつさ。…とまぁ、かっこいいこと言うけどな、実はその半分も動けてない」
「今ので半分も、ですか?」
「そうだな、達人ともなれば8mくらいは一瞬で移動する」
「マジ… かよ」
「ちょっとそこに立ってみな」
俺は言われるままに、指示された場所に立った。
「いいか… 見てろよ…」
ザッ… !!
「!?」
ちょ… ちょっと待った。今のは3mなんてレベルじゃ…
「どうだ?」
ニヤリ、と司馬は笑いながら続けた。
「こりゃ~、一種のテクだ。実質はお前がさっき見た程度しか移動できてねぇ。こういう目の錯覚も利用するのよ」
「…」
「種明かしはここまで、だ。…どうだ、いっちょ肩慣らしに付き合ってみるか? 一応、舞衣さんの訓練受けているんだろ?」
口角の広がりとは異なり、司馬の瞳は笑っていなかった。マジだ。
「…いいですよ、やりましょう」
「いい返事だ」
「ロッド、使いますよ」
「構わんよ」
「全力で行きます」
「ああ、来いや若造」
俺達は互いの間合いまで後付さった。さっきまでの涼しい風が全く感じられない。ただ体が熱くなっていることだけがわかった。
◇ ◇ ◇ ◇
「先輩達、遅いですね。まだお仕事終わらないんでしょうか?」
「彩花ちゃん、本当によく食べるのね」
あたしはおかわりをよそいながら、その食欲に呆れていた。
「だって、育ち盛りですから」
育ち盛りって言ってもね、そろそろ成長期は終わる頃よ? 一体どこを育てる気なんだか。
「まぁいいじゃありませんか、沙耶さん。幸いにも皆さんのお陰でご飯はいっぱいありますし、足りなくなったらまた一升炊けばいいんですから。ガス釜で炊いたご飯、本当に美味しいですよ」
メイちゃんがすかさずフォローを入れる。
「「異議な~し!」」
司馬先輩以外の三人が同調した。しかし、いくらなんでもこの娘の態度は問題ありじゃない?
「いぎな~し、です♪」
「「かわいい~!」」
男どもはもともと遠慮って言葉そのものを知らない生き物だからまだいいとして、このお嬢ちゃんは本当に遠慮ってものを知らないらしい。大体、なんでこの親子はガス釜持参で来るかなぁ。しかも一升炊きなんて、親子三人でも多いでしょうに!
「沙耶さん、申し訳ないねぇ、私までご相伴に預かってしまって…」
だから、どうして父親までがここにいるのよ!?
「あら、付け合せにチーズと燻りがっこを出すだなんて、よく分かっていますわね」
「「はい、全く」」
秋帆さん、あなた達ならもっといいものを食べられるでしょうに!
それにしても。ほんと、今夜は遅すぎるわね。ちょっぴり心配だ。
「あ、あの…」
あたしの声を、村山さんが指で制した。
「ああ、連中なら心配ないよ。今頃はかなり忙しいはずだからさ」
「え? それはどういうことですか?」
「だからさ、心配には及ばないって。あの人もついてるしね。そんなことより、おかわり、もらえるかな?」
なんだかはぐらかされてしまった。でも、心配ないと言うんならきっとそうなんでしょ?
「そう、だから平野先生も、ご心配にならないほうが良いかと思いますよ」
「そ、そうかな? でも富野さんからあの研究室をお預かりしているんだし…」
「今までだってそうやってきているんです。どうか信じてくださいね」
村上先輩、指をゆらゆらさせながら先生を説得してる。
あれ?先輩方の様子も変わった? どういうこと?
少し困惑しながら、平野先生。
「…わかりました。あなた方のほうがよく分かっていますからね、従いましょう。そう言えば、大家さんは?」
「今日は遅くなるって言ってましたよ?」
メイちゃんが答えた。
「「ごっちそうさま~!」」
元気のいい声が俊樹の部屋いっぱいに響き渡る。本当に成人済みなんですか、先輩。
「ああ、沙耶ちゃん、メイさん」
部屋を出て行く間際に、村川さんが耳打ちする
「今夜から暫くの間は俊樹、ボロボロのはずだから手当してやってよ」
「それってどういう…」
村上先輩が指であたしの言葉を遮った。
「それからメイちゃん、俊樹には消化の良いもんでも作ってやってくれると嬉しいな。OK?」
「わかりました」
「なっ♪」
村上先輩が軽くウインクすると、全員がそれぞれの家や部屋に戻っていったのだった。
…という訳で、司馬と俊樹が何やらやっているみたいですね。
村川クン、合図を送っていたって事は何かあるのでしょうか?
そういや大家さんもいませんでしたね?
さてさて。この先、気になります。
…てなところでお時間!
さよなら、さよなら、さよなら~♪




