特訓とドッキュン(前編)
昨日、俺たちのチーム内序列が決定した。序列というのは、チーム内で誰がリーダーかを示すもので、一位以外は正直どうでもいい。ちなみに、序列判断者は双森。昨日の授業中に全員の素質をチェックし終わったらしい。さすが仕事が速いな・・・
第五班 序列 学年順位(全60)
一位 桐野愛 (1)
二位 如月眺 (15)
三位 鹿苑寺礼 (33)
チーム総合順位(全20) 1位
学年トップのチームだそうだ。愛に瞬殺された俺は、自分の予想以上の好成績にすこし驚く。
「た、たまたまだよ・・」愛
「俺たちのチーム結構イケてるな」俺
「・・・・・・」礼
チーム内に、結果に不満がある奴が約一名。
「ど・・・どういうことですの!!これは!!」
そいつは俺の隣で怒りをぶちまけている。
それは誰かって?・・・それはもちろん、
「おちつけよ、礼。33位だってなかなかの順位だぜ」
とりあえずなだめてみる。ちなみに、なぜ名前呼びなのかってのは、昨日の接触事故(礼が命名)にある。名前呼びになるちょっと前からの説明で勘弁な。
「ちょっと待てよ、鹿苑寺。昨日の事謝るから。ゴメン、この通り」
「・・・・ふんっ!」
朝から休み時間ごとに謝って、今は昼休み。どんだけ根が深いんだ・・・。許してくれる気配は全くない。こうなったら・・・最後の手段を使うか。
「礼!待ってくれ!!」
俺は大声で叫ぶ。周囲の視線が痛いが、ここは耐え抜いてみせる。
「れ、れれれ、礼ですって!?あなた、女性をいきなり下の名前で呼ぶのは失礼じゃな・・・」
最後まで聞かずに、俺はダッシュ。もちろん、ファストは使ってないが。そして、礼の肩に両手を乗せる。
「落ち着いてくれ、俺は本当に反省している。すまなかった」
突然の行動にあたふたする礼。しばらく黙り込んで、そしてか細い声で一言、
「せ、責任とってくださる・・・?」
俺は反射の速度で返答。
「ああ!もちろんだぜ!!」
よかった。これで収まるか。・・・ん?・・待てよ?セキニン?責任って何だ?
「そういうことなら、以後よろしくお願いしますわ、眺様。私にことは礼とお呼び下さい」
・・・あれ?なんかフラグ踏んだ?
「正式な婚約はもっとお互いのことを知ってからでよろしいですか?いきなり結婚というのはさすがに早すぎると思いますし・・・。いかがでしょう、眺様?」
あれれ?あれれれれ?・・・
「え、そういう意味じゃ・・・」
「今なんとおっしゃって?もう一度言ってくださいます?」
礼の表情が怖い・・くそ、何かひらめけ、マイブレイン!!
「礼、婚約ってのはな、そんな軽はずみにしていいものじゃない。俺は確かに責任を取るといったが、それだけで決めてしまっていいものだろうか?いやちがう。俺がお前にふさわしいとは限らないんだぜ。とりあえず、今回の事は水に流そう、それがいい、そうだろう?」
文語口調攻撃。これなら何とかなるか・・?
礼は俺の気迫に押させるようにして、
「そ、そうですわね、私とした事が・・・。いいですわ、今回の事保留という形にしておきましょう」
おお、なんかよくわからないが、丸く収まった。ん?何か殺気のようなものが・・・
振り向くと、愛が物を見るような目でこっちを見ている。そう、今は昼休み。学食に向かう途中。チームメンバーの愛も一緒にいたのだ。俺の、筋の通ってないごまかしへの非難か・・・
「そうだ、せっかくだし、メンバー同士は名前で呼び合うことにしましょう。いかがです?」
礼が謎の提案。これに乗っかるしか・・・
「ナイスアイディアだぜ、礼!いいよな、愛!」
突然ファーストネームで呼ばれた愛は驚く、そして、
「う、うん」
と空返事をした。・・・勝った!このまま突っ切るぜ。
「あ、もうこんな時間、急いで昼飯食いに行こうぜ」
こうして今に至る。なんか、回想してみると俺が鬼畜に見えるが・・・気のせいだな。本編続けるぜ。
俺の慰めの効果は薄く、どうにもならない感じだ。すると、
「あ、あの・・・じゃあ、特訓すればいいんじゃないかな?」
発言者は愛。特訓か・・・いい考えかも。
「今日は、もう下校だったな。じゃあ、居残り練、するか!」
こうして俺たちは居残り練習をすることにした。愛が先生で、俺たちが生徒ってところだな。
こうして、昼飯を早々食べて(メニューはから揚げ定食)、グラウンドへ出発。ここのグラウンドはとにかく馬鹿デカいから、生徒が自由に使えることになっている。
俺は、あの曲がるファイアとか教えてほしいな、と思いながら歩いていると、
「おや、君は・・・」
振り向くと、そこには生徒会長、園崎印がいた。
「自主練習かね?どれ、私もこれから帰るところだったし、指導してあげようか?」
なんと、生徒会長じきじきの指導だと!この学校の生徒会長は、全学年序列1位の生徒が任されることになっている。つまり・・・生徒最強ってことだ。
俺と先輩の関係を知らない愛と礼は、突然の事に当惑している。ここは俺が答えないとか。もちろん、答えは決まってる。
「先輩、お願いします!!」
こんばんは、高居望です。
今回はコメディー色の強い内容となってしまいましたが、いかがでいたか?
「特訓」までたどり着けなかったので、今回は前編と言う事にさせていただきました。礼との絡み、しつこかったですかね(笑)
あと、今までの4話を少しアレンジしました。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました^^
ps、題名が予告と変わっているのは、安易な思い付きからです。気づいてくださった方、いたでしょうか・・・




