表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神話使いの住む世界  作者: 高居望
第1章
3/9

神話とチーム  7/23改

 よし、今日は時間通りに起きれたな。

 昨日遅刻した俺は、二日連続で愚行を犯すのを防ぐために6時起床。

 家を出るのは7時30分だからまだだいぶ時間がある。

「家にいてもまた寝そうだし、ちょっと周りを散歩してそのまま学校行くか」

 そう一人ごちて俺は出かける。もちろん荷物も忘れずに。


 散歩先に選んだのは、家とと学校のちょうど中間に位置する自然公園。

 朝は散歩が習慣のやつが多いのか、生徒の数も少なくない。

 その中に、俺は見知った顔を見つける。まぁ、見知った顔なんて俺にはまだ二人しかいないけど。

「おっす」

 挨拶。朝の礼儀だな。

「あ・・・おはよう、如月君」

 相手はそう、愛だ。愛も連れがいるわけではなさそうだから、ちょっと話してみるか。

「いつもこんなに早起きなのか?」

「うん・・・夜は早く寝るから。それより、昨日はどうしたの?生徒会長さんが、如月君は事情があって今日はクラスにこれないって言いに来て・・・」 

 先輩・・・なぜそんな謎をはらんだ感じの説明を・・・

「・・・ちょっと交通事故にあってな」

「えぇっ!!だ、大丈夫だったの?」

「ああ、交通事故といっても歩行者同士だったし」

「・・・?そうなんだ」

 少し疑問に思ってるようだがスルーしてくれた。

「あ、怪我とかしなかった?」

「あぁ、少ししたらしいけど、先輩が治してくれた」

「・・・そう」

 あれ、なんかちょっと不機嫌になった?思い当たる節がないけど。

 顔がさっきより気持ち膨らんでいる様に見える彼女は、それ以上この話に触れてこなかった。

「そ、そろそろ学校行くか!」俺は話題を変える。

 周りも見ると散歩趣味の連中もぼちぼち学校へ向かっているようだ。不自然な切り替えじゃないだろう。

「う、うん」

 冷静になって、ついさっきの変貌(?)を恥ずかしく思っているのか、声が少し上ずっている。

 そして俺たちも学校を目的地に定めて出発した。


 学校に到着。ちょっと早い登校。

 クラスもそれほど埋まってない状態だった。2~3割ってところか。

 いつまでも二人でいるのも変な感じだったから、クラスについてからはそれぞれの席へ座った。

 そのまま俺は読書にいそしむ。愛をチラッと見ると彼女も読書中のようだった。今度何のほうを読んでいるのか聞いてみるか。

 そうしているうちにクラスも続々と埋まり始め、8時30分、一時間目始まりのチャイムが鳴る。この学校では特別なことがない限り朝のホームルームは行われないらしい。わざわざ今日日程を先生が口頭で説明する必要もないしな。

 ちなみに今日から一日授業が始まる。今日の面白そうな授業は・・・「神話1」ってところか。それ以外は・・・まぁ、一般教養ふつうのじゅぎょうか。1年生のうちは一般教養がメインだしな。

 一般教養おまけで単位が取れずに進学できないってのもつまらないし、俺はそこそこまじめに授業を受ける。あぁ、ちょっと眠くなってきたな・・・。


 そして、待ちに待った神話1。授業前に配られた書類に目を通す。授業についてか。書かれている内容を頭の中に整理する。

 1年次でのこの学校の神話に関する授業は、主に3つ。

「神話1」いわゆる座学だな。「実践1」実際に神話を使っての授業。体育みたいなものか。そしてもう一つ、これが多くの生徒とってこの学校に入った一番の理由だと思うが、「大戦」だ。これは文字通り戦闘訓練だ。「実践1」よりも実践向きだな。だが、この授業に一年生が出られるのは基本的に2学期から。これについてはまた今度詳しく説明か。

 そろそろ授業開始だな。一般教養ならともかく、この授業でうとうとするわけにはいかない。少し気を引き締めて先生が来るのを待つ。


「よし、全員いるわね。このクラスの神話1の担当は私、錫守まり。私はこのクラスの担任でもあるから自己紹介は省きましょう」

 クラスに到着早々、マリは授業を始める。

「今日の授業内容は、神話の分類について。あぁ、最後にまとめのプリントを配るから授業中は聞くことに集中して」

 ノートをとろうとしていた真面目な数人に向かってそう言う。

「まず、大まかな分類について。神話には共通神話、通称オールと、固有神話、セルフが存在する。一年次に学ぶことはほとんどセルフについてね。君たちの大多数はセルフと多少のオールを使える状態だと思うけど、一年次の目標は基礎的なオールについて学ぶことよ。確かにセルフの良し悪しがそのままその人の強さになることが多いけど、それもオールを習得してからのこと。まずはオールだということを頭に入れておいて」

 まりから流れてくる声に全生徒が集中している。

「少し話がそれてしまったわね。それではオールの分類について。オールには大きく分けて3つあるわ。物理系と自然系と精神系。この中で君たちが最初に学ぶのが物理系。物理現象に対する介入ね。生徒会長が入学式に使った神話もこれに分類されるわ。次に学ぶのが自然系。自然現象に介入する神話。具体的に言えば炎を使うとかね。そして最後に学ぶのが精神系。これは人の精神に介入する神話。一番扱いが難しいけど、汎用性も一番ね。これが得意な人はチームや大戦でも重宝されるわ。最後にタイプの神話にも言えることだけど、上級になるほどその効果は下位のそれを含んだものになる。上位神話を十くらい習得すれば、理論上はすべての神話をつかえるけど、そんな超人はまず存在しないわ。以上が神話の分類に関する説明ね。何か質問がある人は?」

 俺は次々に流れてくる情報を頭に詰め込むのでいっぱいで、とても質問の余裕なんかない。

 生徒の一人が手を上げる。全生徒の視線がそいつに向かう。身長165程度、髪は山吹色でロングカール。なんか金持ちのお嬢様って感じだな。クラスで明らかに一人だけ目立っている。

「はい、鹿苑寺ろくおんじさん」

「一つ質問があるのですがよろしいでしょうか。先生が最後におっしゃっていたチームについてです。それはいったい何なのですか?」

「チームというのは、クラス3人でつくられるグループのこと。構成員は基本的に男子1名女子2名ね。チームについては私があらかじめつくってきたので授業終了時に配布するわ。次回からの授業はチームメンバー同士で固まって受けてもらうことになるわ。成績評価もチームとして。まさに学園生活の共同体ね」

「なるほど。わかりましたわ、ありがとうございます」

「そろそろ授業も終わりね。では各自チームを確認しておくように。はい終了」

 チャイムとともにまりは教室から出て行く。同時に書類が各々の机に配布される。一昨日も見た光景なのでさすがに驚く奴はもういない。

 俺は自分の所属チームを見る。


 第5班 如月眺

     桐野愛

     鹿苑寺(れい)

 なんか・・・普通な奴が集まったな。まぁいいか、そのほうが疲れないし。

 その後はチームごとで集まって軽く自己紹介とのこと。

「俺は如月眺、よろしくな」

「桐野愛です。よろしくです・・・」

「鹿苑寺礼ですわ。どうぞよろしく」

 普通に自己紹介。今日の授業はこれで終わりだし一緒に帰るか。

「ちょっと、そこのあなた。ひとつ言っておきたいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?」

「・・ん、俺?」

「授業中にちらちら見てくるのはかまいませんが、私がいくら魅力的だからといって、私に見とれて授業に集中できないなんてことのないように。くれぐれも注意してくださいね。私あなたにそれほど興味を感じないので。それではごきげんよう」

 そう言って去っていく。もちろん言われたのは俺。

 チームの第一印象撤回。このチームには飛び切りの変人が混じっていた。

 俺と愛はしばらく無言で立ち尽くしていたが、いつまでもそうしているわけにはいかない。

「じゃあ・・帰るか」

「そ、そだね」

 俺たちは苦笑いを浮かべ、二人で帰って行く。




こんばんは。高居望です。

今回は少し長くなってしまいましたね。

さて、前回の予告どおり「神話とチーム」でした。

新しい仲間も登場させましたがいかがでしたか?

最後まで読んでくれた方々、ありがとうございました。

次回は「実践と天才」予定です。天才とは、はたして誰なのか・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ