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第57話 女剣客、合成魔獣を薙ぎ払う

「……アイリス、敵の特徴わかる?」

 『えっと、ライオンの頭は鋭い牙があって、横のドラゴンは火を吐き出して、胴体はヤギだから動きが早い!』


 畳み掛けるように言われたので、理解するまで時間がかかってしまう。


 「シャインウォール!」


 刀を引き抜こうとしていると、後ろからエンジュさんの声が聞こえてきた。

 振り返ると、エンジュさんとシオンを囲う白い幕が張られている。


 「こちらは気にしなくていいから、思う存分やっても大丈夫よ!」


 エンジュさんはこちらに向けて親指を立てていた。

 最近はシオンを守りながらだったけど……彼女を守ってくれる人がいるなら。

 心の中で感謝の言葉を言いながら敵まで近づいていく。


 ライオンの頭の横にあるドラゴンがこちらに気づき、口から火の玉を吐き出す。

 切り払おうと月華を抜こうとするが……。


 「ウインドカッター!」


 それよりも早くシオンのウインドカッターが私の横を過ぎ去っていき、火の玉を両断していった。


 「オルハさんは火の玉なんか気にせずモンスター本体を斬ることに集中しちゃってください!」


 後ろからシオンの声が聞こえてきた。

 さっきまで歩き疲れて倒れそうな声がしてたのにと、思わずにやけてしまいそうになる。

 

 「……アイリス、このモンスターの弱点は!?」

 『ライオンの頭が脳があるからそこを叩くのが一番なんだけど……』


 ライオンの頭は私を見ると大きな口を開け、鋭い歯を見せつけているようだった。 

 もしかしたら一種の威嚇なのかもしれない。

 

 『あの牙は固いものでも簡単に噛み砕くから気をつけないと、下手したらその刀も噛み砕かれるかもしれないよ』

 「……たしか剣身はミスリルで鍛えられてるからそう簡単には砕かれるようなことはないって話してたけど」

 『ミスリルも鉱石の一つだからね、絶対に折れないってわけじゃないからね』


 どうやって攻めるかを考えつつ、モンスターとの距離を詰めているとガリっと後ろ足を蹴り上げ、こちらへと突進してきた。

 思っていた以上に動きが早く、一気に距離を詰められてしまう。


 「グオオオオオオオッ!」


 ライオンの頭が雄叫びを上げながら大きな口を開けて鋭い牙でこちらを噛み砕こうとしていた。


 「くっ!?」


 月華の刀身で噛み砕こうとする牙を押さえつける。

 モンスターもこちらを噛み砕こうと力を強めてくるが、刀身がミシミシ言うことはなかった。

 気を抜いたら、あの牙の餌食になるので油断はできないが。


 普通のモンスターならこれでどうにかなるが……

 このモンスターはライオン以外にも別の顔がある。


 もう1つの顔であるドラゴンの顔が私の方を向いて大きく息を吸い込んでいた。

 

 「オルハさん!!!」


 その様子を見ていたシオンが叫んでいた。

 すぐに床に突きつけるような音が聞こえてきた。

 

 「すぐウインドカッターで……!」

 「待ちなさい、そんなことしたらオルハさんに当たったらどうするのよ!」


 その直後でエンジュさんの声も聞こえてきた。

 そちらを向くことができないので、状況を把握することはできないけど。


 「みんな、いますぐ目を瞑って! アイリスちゃんも念の為!」


 エンジュさんが大声を上げた直後にすぐに目を瞑ると、刀を抑えつける力が弱まっていった。

 何が起きたのだろうか……?

 

 『オルハちゃん大丈夫?!』

 「……大丈夫だけど、何が起きたの?」

 『どうやらエンジュさん、強い光を出して、モンスターの目をくらませたみたい』

 「……なるほど」


 強い光を見事に受けたせいで怯んでしまい、噛みつく力が弱まったと。


 「……アイリス、まだモンスターは怯んでる?」

 『こちらから見る限り、左右に揺れている感じだから、苦しんでるのかも?』

 「……わかった」


 それを聞くとすぐに大きく深呼吸をしたあと、ゆっくりと目を瞑る。

 

 ——心眼。

 外からの情報を遮断して、聴覚を最大限に集中していく。

 目を開けることができないのであれば、この方法で敵を捉えていく。


 そして、私のすぐそばにドクンドクンと大きな鼓動が聞こえる。

 後ろからは2つの鼓動。

 こっちはシオンとエンジュさんのものだろう。

 そしたらあとは……モンスターの鼓動だ。


 「……いかせてもらうッ!」


 私は月華の塚を掴み、力の限りを使って勢いよく武器を抜いていく。 


 「グォオオオオオオオ!?」


 その直後、空間が揺れ出したような感覚を覚える。

 先ほど聞こえていた大きな鼓動が小さくいるため、仕留めることができたのだろう。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 『みんな、目を開けても平気だよ!』


 暫くしてアイリスの声がすると同時にゆっくりと目をあけていく。

 先ほどまであったモンスターの姿はいたのが嘘かとおもうぐらい消え去っていた。


 『エンジュさん、魔導書のプロテクトも解除できたから、今度こそ開けるはず』

 「ホント、人騒がせな魔導書ね、エルフって暇人しかいないのかしら?」


 文句を言いながらも魔導書を手にするエンジュさん。


 「相変わらず、頭が痛くなりそうな文字ばかりね……」


 エンジュさんの傍に行くと、魔導書をこちらにみせてきた。


 「……ホントだ」


 ちゃんとした文字なのは理解しているが、どうにも子供の落書きのように見えてしまっていた。

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