第50話 流星光底メンバー 3人でダンジョン探索へ
——わこつー
——一番乗りかと思ったのにチクショウ!
——わこつー、って配信待機画面なんてあったっけ?
——今日からみたいだな、シオちゃんがツブヤキったーで話してたで。
——説明乙、ってか待機画面のキャラかわいいな誰が描いたんだ?
——どこぞの絵師か? そういや前に夏の祭典参加の絵師がいたような気が
——そういや最近、仕事で配信見れなかったんだがオルシオの2人はどこまで行けたんだ?
——それワイも気になってた、前見た時はトロルに苦戦してたような……
——そういや、シオちゃんがツブヤキったーで言ってたけど新メンバーが入ったみたいだな
——ふぁ!? それは初耳だぞ! まさかとは思うけど男じゃないよな!
——んなわけないだろ、オルシオの2人に挟まれてみたいけどな
——おまえはこの瞬間、ここにいる全員を敵にまわしたぞ?
——お、配信始まりそうだぞ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし、無事に配信開始できた!」
下北沢ダンジョンの入り口にあるポータルの前でスマホ画面と配信用ドローンを交互に見ながらシオンは声を上げる。
「みなさん、お疲れ様です!」
——うおおおおお、シオちゃああああん!
——きゃー!女剣客さーん!
——シオちゃん風邪引いたみたいだけど大丈夫ー!
「大丈夫ですよー! 心配してくれてありがとー!」
笑顔でドローンに向けて手を振っていくシオン。
——回復祝いにお小遣い送ったる![/5000]
——馬鹿野郎!シオちゃんのお小遣いはこれぐらいがあたりめーなんだよ![/10000]
「ちょ、ちょっとまって! 無理しなくていいから!!」
先ほどまで笑顔だったシオンの表情は慌てふためいていた。
スマホの画面を見ると、お札の画像が画面中に飛び交っている……ように見えるけど何が起きたのだろうか?
「若いっていいわね……」
私の隣でエンジュさんがため息混じりに呟いていた。
「……エンジュさんも若いと思うけど」
「気を使ってくれてるのはありがたいけど、その優しさは時に人を傷つけるのよ」
そう苦笑いで答えるエンジュさんだった。
「あ、そうだ! せっかくなので新メンバーを紹介しますね!」
そう告げたシオンはこちらを見て、エンジュさんに向けて手招きをしていた。
それに気づいたエンジュさんは面倒だと言わんばかりの顔でシオンの元へと歩いていった。
「新メンバーのエンジュさんです!」
エンジュさんが配信用ドローンの前に立ったのを確認すると紹介をしていく。
「……初めまして、槐堂 円珠よ」
——おおっ! 綺麗な人だ!
——ふ、ふつくしい!
——見ただけで動悸が激しくなったんだけどこれって恋?
——単なる年だろ、動悸と息切れに効く薬飲んでこい
スマホの画面を見ると、エンジュさんを歓迎するコメントが流れていた。
だが……
——あれ、この女、あのゾンビ使いじゃね?
ふと流れてきた言葉に流れていたコメントが止まってしまう。
気づく人がいなければいいなとは思っていたのだが……
——ゾンビ使いって、あの冒険者の死骸をこねくりまわしてた気持ち悪い女?
——あぁ、一時期そんなコアすぎる動画があったな
——そういやあったな、でも最近みかけないぞ
——ってことはようつべくんに怒られて消されたんじゃね?
——そういや前にその動画見たが、この女性とは全然違ったぞ、あっちは全身真っ黒で薄気味悪い感じだったな
ふと、エンジュさんを見ると、全てを諦めたような表情を浮かべていた。
「え、えっと……」
シオンは場の雰囲気を変えようとするが、先ほどよりも慌ててしまっている。
——いやいやよーく見てみろお前ら!どうみてもゾンビ使いと同じ顔だって!
——おまえの目は節穴か? それとも女を相手にしたことのない童○野郎か?
——そうだ!そうだ! 綺麗な女とブサイクな女の区別もつかねーのかよ!
再びスマホの画面に大量のコメントが流れていった。
——仮に新しい人がそのゾンビ使いだったとしたら、我らの女剣客さんが黙ってねーだろ!
——その通りだ! 悪い奴がいたら女剣客さんがぶったぎってらあ!
その後もコメントで口論が行われていたが、次第に沈静化していった。
どうやら、ゾンビ使いだと言い張ったユーザーがいなくなったようだ。
——やっといなくなったか、アンチがこんなところにくるんじゃねーよ!
——ホントだよな! 新人さんもあんなの気にしちゃいけないぜ!
画面にはエンジュさんを応援するコメントが流れ始めていった。
「……ありがとう」
画面を見ていたエンジュさんは恥ずかしそうに下を向きながら小声でお礼を言っていた。
「紹介も済んだことですし、探索に行きましょう! 今日は15階からです!」
シオンは元気な声を出しながら、軽快にポータルを操作していった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「14階があれだったので、15階が天国に見えてくる不思議〜」
いつもはダンジョンに入ると、険しい顔をしているシオンだが、今日に限っては遠足にでも来たような満面な笑顔だった。
たしかにあの匂いがないだけで、いつもとは違う気持ちにはなるが……
『3人とも前からモンスターがいるよ!』
穏やかな気持ちを吹き飛ばすかのような大声が耳に突き刺さる。
私やシオンは何度も味わっているので、驚くことはなかったが……
「……エンジュさん、平気?」
初めてのことで驚きと耳にダメージがあったのか、エンジュさんは右耳を押さえながらしゃがみ込んでいた。
「耳がキーンってしてるわ……2人は平気なの?」
「……もう慣れた」
「もう慣れました」
私とシオンの言葉にエンジュさんは大きくため息をつくと、ゆっくりと立ち上がり、モンスターがいると思われるダンジョンの先を見ていた。
「まあいいわ……それよりもモンスターが来るみたいだから、構えないと」
エンジュさんの言葉に私はいつでも刀を抜けるように柄に手を添え、シオンは後ろに下がり、杖を床につけて術式を展開する準備をしていた。
『……来るよ!』
アイリスの声に合わせるように私たちは正面を見る。
そこへ現れたのは……
両手に大きな鎌を持ったカマキリ型のモンスターだった。




