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異世界オーバーキル! 〜オーバー・ザ・オリジン〜  作者: フェフオウフコポォ


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5話 保安捜査局 初動聴取

「どうも中村さん……私は保安捜査局の捜査官、ネイドです。こちらは同僚のレーン捜査官。」


昨日の名前も名乗らなかった耳長やさぐれ男とは違うようだ。

耳長やさぐれ男は、なんかもうタバコのイメージしかないし、全体的に疲労感が漂ってる印象だったけれど、このネイドさんという耳長は、きっちりスーツを着ていて、地味な色の茶髪もばっちり整えている。


第一印象は、誰に聞いても『しっかりした社会人』ってなるんじゃないって感じだ。


「あ、これはどうもすみません。中村です。」


一度軽く頭を下げ、起こしながら紹介された女性の方にも目を向ける。


「どうもミリア・レーンです。」


第一印象で賢そうって思っちゃうような芯がありそうな女性。

髪はネイドさんよりも赤味が強い茶色で肩にかからないくらいのボブカット。


ぱっちり二重で目力めぢからを感じてしまう顔立ちだ。

俺の目を見て、軽く顎を引くような会釈を見せてくれたけど、頭を下げるとまではいってない。もしかすると『頭を下げる』って文化は、この国には無いのかもしれない。


二人とも共通して『しっかりした人』『公的機関の人間』って雰囲気があるように思える。

そう感じた途端に、自分の中の未だ冷めやらぬ培われし社会人が目を覚ます。


「どうも本日は私のことで、お手を煩わせてしまって大変申し訳ないです。」


イッツァジャパニーズ『初手謝罪の儀』なり

そう。なんか知らんけど社会人は謝ってしまうのだ。ほぼ癖で。


「あぁ、いえいえ、これも我々の仕事ですからお気になさらず。私とレーン捜査官で色々お伺いすることになると思いますが、よろしいですか?」


よし、会話のキャッチボールができる!


言葉の雰囲気的にも、そんなにへりくだらなくてもいいよ感が伺える気がするし、なにより初手で『無徴』呼びもしてこない。

耳長の悪い印象じゃなく、普通の人間として見られてるのがわかるから、ちゃんと話ができる感あるな。


ちょっと嬉しい。


「えぇ、もちろんです! 居眠りしてしまうくらいに時間はありますんで……とはいえ私自身が混乱している部分も大きいので、教えていただくことの方が多いかもしれませんが。」

「それも含めて、まずはお話をお伺いしますよ。」


「ネイド。会議室を使えるらしいから、詳しいことはそっちで聞きましょう。」

「それもそうだな。それじゃあナカムラさん警備の方が案内してくれるので先に向かってください。僕たちは飲み物を準備してから向かいますんで。」

「あ、わかりました。」


とりあえず雑種犬警備員さんの案内についていくのだった。



◇ ◇ ◇



自販機の前に捜査官が二人。

男の耳長。ネイド捜査官がコインを入れ、しっかりと大き目の固そうなボタンを押すとガチャコンと缶が落下した音が響く。


「それで? 私には一般人にしか見えないけど……それも気弱な、ね。ネイドの見立てはどうなの?」

「さぁね、僕は一言二言交わしただけで対象を理解できるほどの人間じゃないよ。」


「へぇ……でも報告を見ただけで、わざわざ私たちが出張ると判断したのはあなたでしょう?」

「そうだね、少し気になったからね。ただ外国人だろうなってのは分かったよ。」


同じ缶ジュースのボタンを押し込み、ガチャコンと缶が落下し、取り出されていない缶にぶつかった。

このまま、もう一つ缶ジュースを買うと詰まってしまいそうに見えたのか、ネイド捜査官が軽く息をつきながらかがんで缶ジュースを取り出し一つをレーン捜査官に渡す。


缶ジュースを受け取りながら彼女が少し呆れたような表情で口を開いた。


「書類を見た私でも分かることよ。なにしろ名前のつくりが変、聞いたことのない出身地。そしてなにより今のやり取りよ……最初から『自分はあなたたちより下です』って宣言する人間なんて見たことないわ私。」


「まぁ驚いたね。だけど普通に頭を下げてたから、そこに意図はないんじゃないかな? きっとそういう挨拶がある文化圏なんだろうね……まぁ、僕はそういう文化に心当たりはないんだけど。」

「私も無いわよ。」


同じ缶ジュースのボタンを押して、取り出したネイド。


「さてさて、監視カメラに一切映ることなく、この入場の厳しい国際空港に突然出現した外国人。しかも未知の文化の持ち主。どんな所から来た人なのか……楽しみだね。」

「ちょっとネイド? あなた、また宇宙人みたいなことを妄想してるんでしょう? ……勘弁してよね。」


「ははっ、無いことを証明できてないだろう?」

「逆よ。有ることの証明ができてないわよ。」


二人は歩き出すのだった。



◇ ◇ ◇



「それでは、まず、中村さん。あなたが空港に来る前。

『最後に覚えている場所』を教えてください。」


会議室の机を挟んだ正面に腰かけたネイド捜査官の言葉に少し目を閉じて思い悩む。

ぶっちゃけ、飛ばされる前に居たのはダンジョンの中だ。そしてダンジョンのエネルギーの塊みたいな水晶に触れたら、ここに来ていたという風に、具体的に答えられるんだが『ダンジョン』がこの世界にあるか分からない今、答えていいか少し分からない。


とはいえ、あまり時間をかけすぎても良くない気もする。


「……確か、光っている水晶。眩しいくらいに光っている水晶に触ったら……わけが分からない変な世界に……気が付いたら、あそこに居た。そんな感じです。」


「どうやって来たかは認識できていますか?」

「いえ、本当に気が付いたら、居たっていう認識です。」


俺を見ながら、何か書き記しているネイド捜査官。


「この国アストレアに、知り合いや家族、親戚はいますか?」

「……いないです。断言できるのは、国の名前にも心当たりがないからです。」


「身分証明書は無いようでしたが……所持品は、何かお持ちですか?」

「えぇ、財布すらなくなっていました。唯一持っていたのは、この手帳だけです。」


「ふむ……頭痛や眩暈めまいといった体調の不良を感じますか?」

「あ、いえ。不調は今のところ感じていないです。」


女性のレーン捜査官が口を開いた。


「あなたの名前の『ダイスケ』というのは、どこの地域の名前なんです?」

「あ~……中村が苗字で、名前は大輔なので地域性があるとしたら、中村の方ですが、私の出身地の日本では、どこにでも居る一般的な名前かなと思います。」


「『ニホン』は国名ですか? それとも聴取にあった『トウキョウ』が国名?」

「日本が国名です。東京は都市名ですね。」


あ、なんかまずい流れな気がする。

普通に、異世界っぽさが出てしまってるのでは?


…………


……


助けて手帳セリフィア


「あ~……ちょっと手帳を確認して良いですか? 何か思い出すきっかけが書いていないかと。」

「どうぞ。」


胸ポケットから手帳セリフィアを取り出し開く。


『マスター。焦る必要はありません。答えたことは答えたことで良いので、ここからは一旦『分からない』ことを強調していきましょう。

逆にネイド捜査官に質問をしてみてください。彼らはそこからも情報を得られるから話に乗ってくるはずです。』


「手帳に何か書いてありましたか?」


ネイド捜査官が興味深そうに手帳に目を向けている。


『自然に次のページを開いて話を合わせつつ、相手にページを見せてあげてください。』


手帳セリフィアをめくると、俺が書いたような書きなぐりの字で、彼女と一緒に食べたファミレスのメニューについて値段や感想、手書きの絵が記されていた。


「趣味が食べ歩き、ということくらいしか思い出せないですね。ここのスパゲッティ安い割に食べ応えがあって好きなんですよ。」

「……スパゲッティ?」


「あ~……小麦粉を練った麵料理ですね。乾燥させて日持ちするようにした棒状の保存食が一般的なんですが……聞いたことないですか? あれ? 小麦ってあります?」

「小麦はありますし、近い料理もありますが……スパゲッティは初めて耳にしましたね。」


「えっ? じゃあ……トマトってあります?」

「トマトはあります。ひき肉と炒めたミートソースは麺料理に合いますよね。」

「たぶんそれ私の言うスパゲッティと同じ物だと思います……あれ? 共通する言葉と共通しない言葉がある?

……コーヒーって通じます?」


「飲み物ですよね?」

「苦くて落ち着くんですが……なんというか眠気飛ばすために飲んでしまうようなヤツで合ってますか?」


ネイド捜査官が少し笑う。


「ははっ、私も彼女も愛飲してますよ。」


しばらく雑談に華が咲い――



「バルツ! 緊急事態だ頭を貸せ!」


乱暴にドアが開き、唐突に昨日の耳長やさぐれ男が乱入してきたのだった

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